大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・139『反撃』

2020-03-22 17:17:04 | 小説

ライトノベル 魔法少女マヂカ・139

『反撃』語り手:マヂカ    

 

 

 抽出した鐚銭は単に古い銭というだけではなかった。

 

 欠けていたり曲がっていたり、擦り減り過ぎて何の銭か分からなくなっているものまであった。

 そうなのだ、鐚銭というのは、古いと言うだけではなく傷んでしまって使い物のならないという意味もあるんだ。

「まあ、使えるものは1/3と言ったところか……」

 ブリンダは寛永通宝。十三枚あるので、いざとなったら銭形平次のように飛び道具として使う。

 わたしは、ちょうど六枚残っていた永楽通宝。明の永楽帝の時代に作られた渡来貨幣で、戦国時代に湧き起った貨幣経済を支えた通貨で、信長が旗印にもなっている。

「真田幸村みたい!」

 ゲームの『無双 真田丸』で親しんだノンコが喜んでくれた。じっさい三個二段にして額に頂いてみると、雪村の兜の前立のようだ。

 残りの二枚は和同開珎と富本銭だ。

「それは、うちにおくれやす!」

 サムと交代で戻ってきたウズメが装着した。

「富本銭は厭勝銭(ようしょうせん:まじない用に使われる銭)どす! 絶大な威力どすえ!」

 ウズメは目にもとまらぬ早業で装着した。

「え、どこに付けたの?」

「内緒どす!」

 どすの利いた声で答えると、真っ先に飛び立っていく。

「じゃ、あとは頼んだよ!」

 北斗のみんなに守備を頼んで、ブリンダと二人、北斗のプラットホームを蹴った!

 

「これでも喰らええええええええ! どす!」

 

 醜女どもの眼前に躍り出たウズメはガンダムを思わせるファイティングポーズをとるや、せっかく休憩中にまとった巫女服の前をはだけた!

 ズボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボボォーーーーーン!!!

 ウズメは、オッパイの先に鐚銭を仕込んでいたのだ。それも鐚銭中の鐚銭! キングオブ鐚銭と言っていい和同開珎と富本銭だ!

 一撃で、醜女軍団の九割がたを撃砕してしまったΣ(゚Д゚)!

「オレ達の獲物が無くなる!」

 ブリンダとともに風穴に逃げ込もうとする残敵を追撃する。

 二人の鐚銭もなかなかの威力で、たちまち残敵の半分以上を粉砕した。

「中に、まだ少し残ってる!」

 額の前で両手をXに組んで鐚銭ビームを発して、閉じかけている風穴に飛び込む。

 

 バチコーーーーン!

 

 閉じかけた風穴の蓋がはじけ飛び、その破片が飛散するのも待たずに三人一丸となって飛び込む。

 バチ バチバチ バチ

 破片が露出した肌にポップコーンのように爆ぜる。

 眼前に迫る破片は鐚ビームが瞬時に蒸発させるので、なにも気にせずに突進できる。逃げ込んだ醜女どもは、手向かう気力も失せて、あちこち逃げ回っては岩にぶつかったり、互いに衝突したり、暴走した一円ビームに自らを焼いたりしてパニック状態だ。

 シュビィーーーーーーーーン

 ガラスを掻きむしるような音がしたかと思うと、我々は黄泉の奥つ城にたどり着いた。

 

―― おのれ、ここまで、わが安息の黄泉の国を汚しおって……許さぬぞおおお! ――

 

 それは、襤褸(らんる)の衣をまとった腐乱死体……辛うじて窺える襤褸の色と柄、髪がほとんど抜けてしまった髑髏の額の飾りから高貴な者であると知れる。

「やはり、貴女様……」

 ウズメが悲痛な声で、襤褸の名を呼ぼうとするが、あまりの痛ましさに声も出ない様子だ。

「我が背イザナギとともに、草々の神と、この大八島の国々を産んだイザナミであるぞ。数多の結界と醜女どもを破り、この奥つ城まで踏み込んだる罪、許し難し! 滅びよ!」

 ザワ

 空気がざわめいたかと思うと、髑髏に残ったわずかな髪が尾を引いたまま鬼醜女となって襲い掛かってきた。

「させるかあ!!」

 ブリンダと二人鐚銭ビームを出力いっぱいに照射する。

 バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ バチ 

 先ほどまでの醜女と違って一撃で倒すことは出来ないが、それでも鐚銭の威力は大きく、二撃、三撃するうちには、ことごとく弾き飛ばすことができた。

「おのれえ、おのれえ、もう我が身には眷属の一人も居らぬのかあ……」

 イザナミは、自分の髪を醜女に変えて我々を襲わせてきたんだ。黄泉の魔がつ神になり果ててはいるが、髪は女の命、その悄然とした姿は同性として見るに堪えないものがある。

「イザナミノミコトさま……せめてもの引導は、このウズメがおわたししますえ……お喰らいやすううう!」

 再びウズメは衣の前をはだけて、同性の我々でも目を見張るようなオッパイを突き出した。

 

 シュボン

 

「あ、あれ?」

「ウズメさん、使いすぎたのよ!」

 鐚銭は紙のような薄さになり、吐息に飛ばされた花びらのようにウズメの眼前を漂うばかりだ。

「わが身と共に滅びよおおおおおお!」

 イザナミは襤褸の裾を掴んで蝙蝠の羽根のように広げた。

「変態がコートをまくったみたいだなあ」

「二人とも、身を庇いなはれえ!」

 叫んだかと思うと、ウズメは胸乳を顕わにしたままイザナミに吶喊を試みる!

 ウズメが抱き付くのと、襤褸が飛び散るのが同時であった。

 

 ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ

 

 襤褸の砕けが突風のように吹きつけて、思わず両手をかざして耐える!

 目を開けると……イザナミはウズメが居たところは青白い残り火となって、その周囲は同心円状に襤褸や二柱の神であったものが取り巻いているだけだ。鉋くずのようになった富本銭の欠片がヒラヒラと目の前を横切って行った。

 ウズメは、最後の最後、イザナミに抱き付いて、共に散っていったんだ。

 わたしとブリンダを守った……あるいは、襤褸の魔がつ神のまま散っていくイザナミを哀れに思ってか……魔法少女には及びもつかない何ものかに準じたか。

「………、………!」

 ブリンダが、何か叫んでいるがミュートにしたような口パク……いや、耳をやられたか!?

 まだ、なかば意識が飛んでいる……あ、ブリンダのコスがズタボロだ。

 と……ということは?

 わたしも、ズタボロの裸同然だった!

 

 二人の悲鳴が黄泉の奥つ城に木霊した……というのはサルベージされた後、北斗のクルーの弁である。

 

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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・77「演劇部には同情されたくない!」

2020-03-22 06:46:46 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)77

『演劇部には同情されたくない!』   



 

 久々にタコ部屋の部室に集まった。

 ここのところの涼しさで、タコ部屋でもええやろという判断。
 図書室の部活ではエロゲがでけへん。
 須磨先輩も椅子を並べた簡易ベッドで昼寝もでけへん。
 千歳は自慢のお茶を淹れることがでけへん。
 ミリーは、部室棟の解体修理が中断してるんで、どこで部活やってもいっしょ。そやけど、放課後、部員四人でマッタリする習慣が付いてるもんで、やっぱりタコ部屋がええらしい。他の部員がマッタリしてないとミリーもマッタリでけへんみたいや。

「ミッキーの相手は疲れるわあ」

 だらしなく椅子に座ってミリーは天井を仰いだ。
「ミッキーは美晴先輩が好きなんじゃないんですか?」
 チャイナタウンの中華レストランで一緒になった時の様子で、ミッキーが美晴先輩に気があるのは分かってる。
「あいつ、自分からはアプローチしないのよ。せっかく交換留学でうちに来たのにさ」
「シスコで、なんかあったんじゃない?」
「学年違うから、なかなか自分から出向いてなんてことできないのかもね。ミッキーはアメリカ人にしてはシャイなんじゃないかなあ」
「その分、あれこれ興味持っちゃって、質問攻めでまいっちゃうわ。さっきなんて、階段の段数が十三だって発見して大騒ぎ」
「え、学校って13階段だったの?」
「先輩、六年も在籍してて気づかないんですか?」
「うん、知らなかった」
「で、なんでなんですか13階段?」
「デフォルトだと思う。13が忌み数字だなんて、ちょっと前の日本じゃ知られてないわけでしょ、日本人の体格とかで建てたら、たまたま13になったんだと思うわよ」
「ちょっと試してくる」
「先輩……どこ行くんだろ?」
 
 しばらくすると――ちょっと来てみそ――と声が聞こえた。

「やっぱデフォルトだね、これ以上高くても低くても上り辛いよ。当然下りづらいし」
「クレバーですよ須磨先輩!」
 ミリーは三回ほど階段を上り下りしてチョ-納得した感じ。
「いやあ、なんかあるんだろうって事務所まで行って確認したんだけどね、事務長さんが古い図面まで出してくれたんだけど分からなくって、学校中の階段数えるハメになったのよ。よし、これであいつも納得でしょ」
 すると、ミリーのスマホが鳴りだした。
「ゲ、ミッキーだ……イエス、ミリー、スピーキング……」
 ミリーはスマホを耳にあて、声とは裏腹なウンザリ顔で電話に出た。

「え、あ、うん……じゃね。幸運を祈ってる」

「なんちゅうてきよったんや?」
「阪急京都線に13……あ、漢字表記だから十三てところがあるから調べるんだって。あいつ付き添って欲しそうだったから『そういうことは生徒会の美晴先輩の方が詳しいから』て振ってやったの。ナイスアイデアって喜んでた」
 すると階段の上の方からセカセカといら立った足音が下りてきた。部室から顔だけ出すと目が合った。
「あ、副会長」
 俺は、今までのいきさつで副会長という呼び方しかしない。
「ひょっとして、ミッキーですか?」
「うん、たった今電話してきてね、十三(じゅうそう)で迷子になったから助けに来て欲しいって」
「それで、今から?」
「うん、こんなことまでミリーに頼めないしね、ちょっくら行ってくるわ」

 階段の残り二段を子どものようにピョンと飛び降りると下足室に向かって走っていった。
 なんだか、とてもトラブル慣れした身のこなしに案外の苦労人かなあと思う。

 演劇部には同情されたくない!

 そんな副会長の心の声が聞こえたような気がした。
 

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坂の上のアリスー27ー『お待たせしました』

2020-03-22 06:36:00 | 不思議の国のアリス

坂の上のアリスー27ー
『お待たせしました』   



 

 大阪最初の宿は大阪城を間近に見るホテルだ。

 最上階のラウンジからは大阪平野が一望にできる。

「なんちゅうか、狭いなあ」
「コンパクトじゃね」
「ふーーーーーん」
「かわいい……」
「食欲ない」

 窓際のテーブルで、五人それぞれの感想を呟いた。大阪の異文化のせいか、ちょっとくたびれかけている。
 新大阪では元気にうどん体験ができた俺たちだが、新大阪からの小一時間で満腹になったような倦怠感。

 大阪は関空を除けば日本で一番狭い。
 このホテルは二十何階かで、そんなに背が高いわけじゃない。それで大阪の四方の端っこが分かるんだから狭い。
 でも、狭いからと言ってバカにするほどアホじゃない。
「東京が広すぎるんだよね……」
 これは一子だ。
「これなら地震とかになっても家まで歩いて帰れるよな」
「あそこUSJじゃね?」
 西の海と陸との境目にUSJ、ボールを投げたら届きそうだ。

「お待たせしました」

 てっきり晩飯が並ぶのかと思ったら放出(はなてん)さんだ。食事なら、もうちょっと後にしてと言うところだ。

「明日から、あちこち周ってもらいます。特にコースは決まっていません、このリストの中から二か所選んでください。もちろん一か所をじっくりでもかまいません」
「あのう、写真と名前だけで中身が分からないんですけど」
 そう、放出さんのリストには説明と言うものがなくって、まるでレストランのメニューのようだ。
「聞いていただければご説明いたします。まずは、みなさんのご興味です」
 放出さんはにこやかに俺たちを見渡す。にこやかなんだけど、なんだか試されているような気になる。質問がなかったり、スカタンを聞いたら密かにバカにされそう……てか、このへんに日当5000円アゴアシ付きの秘密があるような気がする……て、気の回し過ぎだろうか?
「この狭いところに面積当たりじゃ東京より多い飲食店があるんだよな……」
 真治が寿司屋の息子らしく呟く。
「そういう食べ物に特化したコースも考えられますよ」
「聖天使ガブリエルとしては、我が霊力を高めるためにスピリチャルスポットを周ってみたい!」
 ようやくエンジンがかかってきたすぴかがぶっ飛んだことを言う。
「聖天使様のスキルアップには絶好のコースを用意しております」
 杭全さんは、事もなげに受け止めてくれる。

 俺たちは一時間以上も、あーだこーだと唾を飛ばしながらアイデアを練った。

 で、いろいろ言いあっているうちに、気が付くと結構な空腹になっていた。

 

 

 ♡主な登場人物♡

 

 新垣綾香      坂の上高校一年生 この春から兄の亮介と二人暮らし

 新垣亮介      坂の上高校二年生 この春から妹の綾香と二人暮らし

 夢里すぴか     坂の上高校一年生 綾香の友だち トマトジュースまみれで呼吸停止

 桜井 薫      坂の上高校の生活指導部長 ムクツケキおっさん

 唐沢悦子      エッチャン先生 亮介の担任 なにかと的外れで口やかましいセンセ 

 高階真治      亮介の親友

 北村一子      亮介の幼なじみ 

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ここは世田谷豪徳寺・48《ドゴール空港》

2020-03-22 06:15:58 | 小説3

ここは世田谷豪徳寺・45(さつき編)
《ドゴール空港》   



 

 

 最初の原因は機長のようだ。

「機長に、突発的な脳障害がおって暴れだし、それを制止しようとした副機長が突き飛ばされて頭をうち、脳内出血をおこし意識不明になったようだ。機長には麻酔を打っておいたから、暴れ出すことはないが、二人とも命の危険がある」
 乗客の中に居合わせた医者が、機長と副機長の面倒をみている。他に、ナースやCAなどで777のコクピットはいっぱいだった。
「この二人は動かせんよ。命にかかわる」
「しかたない。一佐は副操縦士席に、さつきさんは……」
「あなたの後ろにいます」
「じゃ、そこのエキストラシートに。あとの人たちは出てください。ドクター、多少揺れるかもしれませんので、気を付けてください」

 レオタード君は、ヘッドセットを付けると、ドゴール空港のスタッフと連絡をとった。

「わたしは、タクミ・レオタール。日本の自衛隊員です。777はシミレーションでの飛行経験が200時間ほどあります。実機は初めてですが、なんとかやります」
『君の腕を信じよう。滑走路は君たち専用に空けてある。好きなように着陸したまえ。万全の準備を整えて待っている』
「ありがとうございます。こちらも万全を期します」
『きみの英語にはフランス語なまりがあるね。苗字もフランス人みたいだが?』
「父がフランス人で、空軍のパイロットでした」
『ほう、じゃ、君もパイロットなのかい?』
「残念ながら、陸上自衛隊です。施設科……工兵ですが、兵科の中では何でも屋です。なんとかしますよ。ちなみに、横には連隊長の小林大佐が、後ろにはガールフレンドがいます。いいところを見せないわけにはいきません。では、ただ今より手動に切り替えます。乗客のみなさん。これから操縦は日本の自衛隊のパイロット、タクミ・レオタールが行います。軍人の操縦なので、多少荒っぽいかもしれません。シートベルトをお忘れ無く」

 レオタール君は三カ国語で機内放送をしたあと、手動操縦に切り替えた。

 多少……ではなく揺れた。

「操縦桿の具合をみるために少し揺れましたが、単なるテストです。ご心配なさいませんように」
「これが成功しても、空自に鞍替えなんかせんだろうな?」
「はい、でも、フランス空軍からオファーが来たらどうしましょう?」
「今や、レオタールは、自衛隊の防衛機密だ。職権で、わたしが断る」
「わたしの交友機密であることもお忘れ無く。それもファーストシートだから」
「ハハ、エコノミーに落とされないようにがんばるよ。じゃ、着陸態勢に入ります。一佐、よかったら命令してくれませんか。その方が気合いが入ります」
「よし、レオタール。着陸仕方ヨーーイ……かかれ!」
「了解! 機速150ノットへ、ギア降ろし方用意……フラップ全開」

 速度の落とし方が、やや早かったので、一瞬エレベーターが降下したような浮遊感があったけど、フラップが効いて姿勢が安定した。
「着陸姿勢、右に三度修正……」

 わずか三度の修正でも、大きな機体は反応が大きい。左側にGを感じた。

「ようし……軸線に乗った。機首上げ三度……高度100……80……50……30……10……ランディング。エンジン逆噴射!」

 思ったよりも、ずっとスム-ズに着陸できた。客席から拍手と歓声があがる。

「やったね、レオタード!」

 あたしは、思わずシートベルトを外して、シートごとレオタード君にしがみついた。レオタード君が汗ビチャなのに気づいた。
「レオタール、ブレーキをかけたほうがいいんじゃないか?」
「あ、忘れてた!」

 777は二百メートルオーバーランして止まった。

 あたしの交友機密のファーストクラスにレオタード君は、消えないインクで記載された……。

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