大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・137『突撃!』

2020-03-15 14:44:04 | 小説

魔法少女マヂカ・137

『突撃!』語り手:マヂカ    

 

 

 

 十銭玉の威力は絶大だ!

 

 醜女たちは一円玉を頼りに、自分たちこそ『これ以上崩しようのないブス!』を自任していたが、戦後生まれの悲しさか、一円以下の貨幣価値など想像も出来ず、一円の1/10の威力に恐れをなした。正面から十銭玉の威力を目にした者は、瞬時に『醜』の字が霧消してしまい、普通のモブやNPCに還元されて昇天してしまう。

 昇天の間際にブスブスと煙を上げるのが、せめてもの醜女の意地であろうか。

 かろうじて直視することから免れた醜女たちは煙を引きながら地底深く千尋の底へ潜っていく。

「くたばれええええええどす! いてまえええええええどす! 黄泉の風穴は幾十、幾百に枝分かれ、枝に潜られる前に、いてまえどすうううううう! くたばれどすううううううう!」

 ジュババババババババババババババババババババ!

 ウズメは、四方八方へ首を回し、十銭玉光線を目につく限りの枝穴に照射する! 我々も見習って十銭玉光線をせわしなく照射するが、ウズメほど機敏になれず、一つ二つと見落としが出ているような気がする。

「ウズメ、もう少し速度を落とせない? 見落としがあ……」

「一気呵成に底を、あやつの奥つ城を目指さなあきまへん! 一刻も早よおに!」

 なにを、そこまで焦らなければならない?

「後ろから来る!」

 ブリンダが叫んだ! 首を巡らしてチラ見すると、見落とした風穴から醜女たちがわらわらと湧いて出て、背後を脅かしにかかる。

「喰らえ! 十銭玉こーーーーーせーーーーーーんんんんんんんんんんんんんん!!」

 ジュババババババババババババババババババババ!

 裂ぱくの十銭玉光線をお見舞いする!

 しかし、この新手の醜女どもは、たじろぐことなく眉間の一円玉をかざしながら突き進んでくるではないか!?

「ウズメ、十銭玉が効かないぞ!」

 ブリンダが、バリアを張りながら叫んだ。

「あれは……一銭玉どす! 十銭の1/10! 口惜しいけど、しばし撤退どす! バリアを最大にして回れ右いいいいいい!」

 三人、バリアを前方に集中し、音速で突き抜ける!

 させるものかああああああ させるものかああああああああ

 呪いを呟きながら、醜女たちは次々に襲い掛かってくる! バリアはバチバチと音を立てて弾いていくが、一銭醜女たちは、数を増すばかりで、まるで、イナゴの大群に盾一枚で立ち向かっているようなありさまだ。

「ク……方向を見失う」

「ま、前が見えない」

 ズコ ゴッ ゴツン ガツン ボコ ドゲシ ガシッ

 風穴の側壁にぶつかり、並んだブリンダともクラッシュして、このままでは自滅と思った瞬間……。

 

 ズボボボボボーーーーーン!!

 

 数多の一銭醜女たちをまとい付かせながら、風穴を飛び出た。

 なんということだ、風穴はあちこちに広がり、そこから、無数の一銭醜女どもが雲霞の如く湧き出してくる。掲げたバリアは、半分ほどに擦り減り、これ以上の進撃はおろか防御も困難に思われた。

 醜女どもは、ほとんど満天を覆うほどになり、醜女どもの瘴気で隣にいるブリンダの姿もかすみ始めている。

 もう撤退しかないと観念しかけた時、何かが…………弾けた!

 

 ズッゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 電柱ほどの太さの光の束が雷のように走り、光はプラズマを発して、半径二十メートルほどのトンネル状に醜女どもを蒸発させた。

 穿たれたトンネルの向こうに見えたものは…………北斗だ!

 嵐山のトンネルで瘴気に絡めとられて足止めされていた北斗が、ようやく追いついて、主砲である量子パルス砲を発射して、醜女の山に一穴を穿ってくれたのだ!

「撤退どすうううううう!!」

 光速でトンネルを抜けると、バシュっと音を立てて醜女のトンネルは閉じてしまった。

 

 

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オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・70「ネヴァダ幻想」

2020-03-15 06:47:39 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
70『ネヴァダ幻想』   





 ちょっと待って。

 感覚が追いついてこないのよ。


 一昨日まではサンフランシスコに居て、昨日はラスベガスだった。
 ラスベガスは、砂漠の中に忽然と現れた夢の国みたい。
 着いたのが夜だったこともあって、ほんとにファンタスティック。
 どこのナイター中継ってくらい街中が煌煌と輝いていて、その輝きの中にピラミッドやスフィンクスやエッフェル塔が建っていて「うわーー!」なんて感動してたら、いつの間にか周囲はホテルやカジノ。
 さすがはアメリカ、スケールが違う。

 その興奮のまま、いま目の前に広がってきた景色は反則だよ。

「これがアメリカよ」

 シンディーが見せたかったのは旅情あふれるサンフランシスコでもなく、ラスベガスのアミューズメントでもないことが分かった。

「ここって地球だわよね」

 須磨先輩のこわばりが介助してくれている車いすのフレームを伝わってくる。
 シンディーの手配でキャタピラ付の車いすになったんだけど、その意味が分かった。
 ここはキャタピラでなきゃ車いすは動けない。と言ってワイキキビーチの楽しさなんかかけらもない。
「どこでもドアとかで連れてこられたら火星かどこかの星かと思うで」
 啓介先輩がポツリ。
 映画だったら、ここでカメラは引きのアップになって、パノラマになった景色の上にタイトルが浮かんでくるだろう。
 
 デスプラネット……とかね。

「ここに勝てるとしたら、原爆投下直後のヒロシマかナガサキだけよね」
 
 そう、ここは世界で一番核兵器が炸裂したネヴァダ砂漠の核実験場痕なんだよ。
「1057回もやったのよ、ほんとクレージー」
「ほんなら、あのクレ-ターて、みんな核爆発のんか?」
「そうよ、こんな景色、月面か火星の地表でしかお目にかかれないでしょうね」
 しばらく歩くと赤茶けた金庫が半ば埋まっているのが見えた。
「岩かと思った」
「何回目かの実験に金庫の耐久性の実験に置いたのよ。金庫屋がスポンサーになったのかも」
「核実験にスポンサーが居たんですか?」
 真面目に聞くもんだから、シンディーはクスっと笑った。
「1057回もやったから、いろんなことを試したくなるんでしょ。最初はシェルターとか軍用車両とか各種の建築物とか防護服だったけど、アイスクリームは熱線に耐えられるとか……まさかね。でも金庫はほんとにCMに使ったのよ。さて、みんなスマホ出して、あっちの方にかざしてくれる」
 このネヴァダツアーに行くについて、みんなはアプリを入れている。
 要所要所でかざすと、その場所の情報が映るらしい。

 クチュン!

 太陽が眩しくて横を向いてクシャミした。
 その拍子にさっきの金庫が画面に入ったかと思うと、金庫のテレビCMが始まった。
 グラマーなオネエサンがにこやかに金庫を指し示し、明るい声でなんだか言ってる。英語は分からないけどCM。
「おっかしいなあ、見えるはずなんだけど……」
 顔を上げるとアプリの調子が悪いのか、シンディーが悪戦苦闘している。

「調子が悪いようだね」

 声に振り返ると、アメリカ人にしては小柄な男性が笑顔で立っている。

「あ、あ、伯父さん!」
 シンディーの顔がパッと明るくなった。
「あ、えと、わたしの伯父さん。どうして、もう何年も会ってないのに!?」
「忙しくてな、シンディーこそ、この子たちは友だちかい?」
「うん、日本の友だちで……」

 わたしたち四人を紹介してアプリの調子が悪いことを説明した。
 なんだか子供っぽく甘えた口調になっている。きっと大好きな伯父さんなんだろう。

「スマホ使わなくたって見えるよ」

 そう言って伯父さんは、ワイパーのように腕を振った。
 すると、一キロほど目の前に広くて大きな工場が見えた。
「あれは?」
「ロスアラモスの原爆工場だよ」

 ロスアラモスって……少し不思議だけど、目の前にあるんだからそうなんだろう。

「あそこで核兵器を作ったの?」
「そうだよ、こんな砂漠の真ん中にね……ここなら人の目にもつかないだろう、まだ人工衛星も無い時代だからね」
「えと、工場の上に家が建ってるみたいなんだけど」
「宿舎かなんかですか?」
「上から見たら分かるよ」

 オジサンがそう言うと、みんなの体がゆっくりと浮かび上がった。

 え、えーーーー!?

「大丈夫、怖かったら手を繋いでいるといい」
 須磨先輩ははわたしの体ごと車いすのフレームを押えてくれる。

「これは……!?」
「なんてこと!?」
「目の錯覚?」
「こんなこと……」

 そのあとは言葉も出ない。
 なんと、工場の上には街が出来ている。
「飛行機が上を通っても街があるとしか見えない、敵からも味方からも知られない完璧なカモフラージュだよ。作ったのはディズニーのスタッフたちだ。うまくやるもんだろ」

 わたしたちは空に浮かんだまま工場とカモフラージュの街を見た。数分か十数分か、そうやって。ゆっくりと地上に戻った。

「あれ……伯父さんは?」

 地上に着くと伯父さんの姿は無かった。

「ちょっと待って、あんな伯父さん、覚えがない……」
 シンディー自身が一番ショックだったようで、スマホを取り出して電話を掛けている。
「もしもし、あ、お祖母ちゃん?」

 お祖母ちゃんに電話で確かめたところ、シンディーが生まれるずっと前に亡くなった伯父さんがいたそうだ。
 軍隊で核兵器の開発と管理の仕事をしていて、何度も核実験に立ち会って若くして亡くなった人らしい。
 ディズニーとかのアニメが大好きで、オタク風に言うとアメコミファンだったらしい。
 うまくやるもんだろうと言っていた。

 面白がっているようにも非難しているようにも感じられる。

 ずっと考えているには暑すぎるネヴァダ砂漠だった。
 

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坂の上のアリスー20ー『……この道でいいのか?』

2020-03-15 06:34:37 | 不思議の国のアリス

坂の上のー20ー
『……この道でいいのか?』   



 

 二年前の夏、俺たち三人は前野原高校の一年生だった。

 ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ…………

「なにが悲しくって……ハッ、ハッ、ハッ、北海道まで来て走らなきゃならないんだ……」
「文句言うな……ハッ、ハッ、ハッ、ハ、早いとこ完走しちまおうぜ……」

 夏の宿泊学習に、俺たち一年生は北海道まできて持久走をやらされていた。

 ホテルの前には、所々の林を抱えて原野が広がっている。
 その林を一里塚にして、全行程十二キロキロのコースだ。
 六キロの中継点を越すと、一番大きくて深い林の中に突入する。

 林というのは国土地理院の分類上の呼称で、都会住まいの俺たちからすれば立派な森だ。
 二三分も走ると薄暗く、コースの案内板も注意していなければ見落としてしまう。また、林の中には別のハイキングコースや、ツ-リングのコースなどもあったりして、うっかりすると間違えて迷い込んでしまう。
 いちおう中間地点と出口に先生が待機しているが、林の中全体に目が行き届いているわけではない。

「……この道でいいのか?」

 真治の速度が落ちた。

「地図は、こっちだけどな……」
 俺も速度が落ちて、窪地に下る手前で、二人そろって停まってしまった。持久走なもんでスマホは持たせてもらえず、学校がくれたコースの地図一枚が頼りだ。
「後から走ってくるのが一人も居ないぞ……」
 俺たちは耳をそばだたせた、
さっきまで聞こえていた足音や愚痴やらが聞こえてこない。

 その時、下の窪地の方で気配がした。特に音がしたというわけではないのだけど、なにか……激しい息遣いを感じさせるような気配が。

「……く、熊か!?」
「熊の心配は無いって、先生言ってたよな?」
 神経を集中させると、どうやら人の息遣いだということが分かって来た。

 ウン、ウン、ウン、ウン、ウン……(;゚Д゚)。

「お……一子じゃないか!?」
 窪地まで下りてみると、木漏れ日に照らされ「北村」とゼッケンを付けた一子が、同じジャージを着た女生徒に人工呼吸をしているのが目に入った。

「りょ、亮ちゃーーーん!! 根岸さんが、根岸さんの呼吸が戻ってこないよ!」

 静香が人工呼吸をしていたのは、同じクラスの根岸利美さんだ。目はうっすらと開いてはいるが、唇に色が無く、心肺停止であることが見て取れた。

「か、代われ、俺がやってみる!」

 ひと月ほど前に、消防署から人が来て部活関係で心肺蘇生法を習ったばかりだ。まさか、たった一か月で実践することになるとは思わなかった。それも同級生の女の子に。
 でも、その意識は後から思ったことで、その時は、なんとかしなきゃの一心だった。
「気道を確保できていない、鼻もつまんでないじゃないか!」
 人工呼吸の要諦は、気道確保と確実な酸素吸入だ。俺は一からやり直した。

 今から思えば、一人が先生を呼びにいくべきだった。

「いいか、人工呼吸をやったのは最初から俺だった。一子と真治は先生を呼びに行ったが間に合わなかった」
「亮ちゃん……」
「亮介……」

 ……根岸さんの呼吸は戻ってこなかった。

 俺一人が責任を取ればよかったんだけど、一子は正直に話してしまい、結果的には真治共々三人学校を辞めることになってしまった。
 根岸さんのご両親の怒りはすさまじく、俺一人が辞めたぐらいでは収まりがつかなかったので、学校も俺たちを擁護することも無く、スルーしてしまった。

 去年の夏に根岸さんの墓参りに行った。そこで、タイミング悪くご両親と鉢合わせしてしまい……双方とても不愉快な思いをした。

 だから、一子の提案には腰が引けてしまったんだ。

 俺たちの、一年ぶり二度目の墓参りが始まることになった……。


 

 ♡主な登場人物♡

 新垣綾香      坂の上高校一年生 この春から兄の亮介と二人暮らし

 新垣亮介      坂の上高校二年生 この春から妹の綾香と二人暮らし

 夢里すぴか     坂の上高校一年生 綾香の友だち トマトジュースまみれで呼吸停止

 桜井 薫      坂の上高校の生活指導部長 ムクツケキおっさん

 唐沢悦子      エッチャン先生 亮介の担任 なにかと的外れで口やかましいセンセ 

 高階真治      亮介の親友

 北村一子      亮介の幼なじみ 

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ここは世田谷豪徳寺・41《現実版 はがない・2》

2020-03-15 06:17:26 | 小説3

ここは世田谷豪徳寺・41(さくら編)
現実版 はがない・2》   



 

 はがないとは『僕は友達が少ない』の平仮名を拾ったもの。

 人気ラノベで、今月の初めから実写版がロードショーにかかっている。
 で、この芸能界で、はがないことを気にしている坂東はるかさんと、あんまし気にしていない佐倉さくらこと、このあたしが乃木坂近くのKETAYONAって店で二人女子会をやっている。

「あたしは子どもの頃から『はがない』でしたから、あんまし気になりません」
「そっか、そのへんの違いかな。あたしはデビュー前から、友達は多くってね、そのへんで寂しいと思ったことは無い人なの」
「それは、ラッキーっていうか、あたしは真似できませんね。はがない慣れしてるもんで、かえって気を遣いますね」
「でも、少しは居るんでしょ?」
「もちろん、ゼロじゃ、寂しすぎますから」
「あたしは、ほとんどゼロに近い『はがない』だな」
「たくさん居たお友達は?」
「みんな別の世界に行っちゃった。かく言うわたしも人から見たらそうなんだろうけどね。芸能界って特殊でしょ。みんな表面はヨロシクやってそうにしてなきゃいけないし、微妙に先輩後輩の区別、売れなくなると、親友みたいに仲良かったのも離れていっちゃうし。さくらちゃんは、この世界、まだ片足だけだから、頼りにしてます」

 はるかさんが頭を下げた。大急ぎで、あたしも頭を下げる。

「こちらこそ」
「ほらほら、そういうのが、この世界の因習なの。さくらちゃんより千日ばかり年上なだけなんだから、もっとフランクに」

 そのとき、ドアがノックされた。

「ごめん、雪でなかなか着かなくって……」
「よかった、来てくれないんじゃないかと思った!」
「はるかちゃんに呼ばれて来ないわけないでしょ、ほんの顔出しだけだけど」

 あたしは、ビックリした。若手で売り出し中の仲まどかさん本人だ。

「あ、あたし、ご一緒させていただいてる、佐倉さくらです」
「ああ、渋谷のスマホゲンカで有名な!?」
「あ、ご存じだったんですか(;^_^A」
「『限界のゼロ』も観たわよ。あなたの驚きの表情って、とてもいいわね」
「『春を鷲掴み』でいっしょになったの。で、あたしのはがない晩ご飯に付き合ってもらってるわけ」
「いえ、あたしこそ、ご馳走になって。まどかさんて、はるかさんと幼なじみなんですよね」
「うん、若干のブランクはあったけど、あたしは四つから。はるかちゃんは五つからのお付き合い。このごろ、南千住には行ってないって?」
「うん、やっぱ遠慮しちゃう。お父さんも秀美さんも忙しいし……赤ちゃんもいるしね」
「ああ、元気のモトキ。弟なのにね」
「半分だけね……」
「複雑なんだね。じゃ、うちおいでよ。大歓迎するわよ」
「気持ちは嬉しいけど、まどかんち行って、お父さんとこ顔出さないわけにいかないじゃない」
「そっか……」
「まどかさん、今度アメリカに勉強に行くって、週刊誌に出てましたけど」
「え……ま、まあね」
「やっぱ行くんだ」

 はるかさんが、寂しそうにため息をついた。

「ほんの半年。あたし、はるかちゃんみたく天分の才ってのが無いから、ちょっと勉強しないと長続きしないから。ね、さくらちゃんみたく魅力のある子は続々出てくるしさ」
「あ、すみません」
「あ、そういうつもりじゃないのよ。この世界はそれで持ってるんだから」
「まどか、あんたアルコールはいけるんでしょ。わたしたちに遠慮しないでやってちょうだいね」
「お気持ちは嬉しいんだけど、これからマリ先生とこ」
「そうなんだ……わたしたちも一緒じゃダメ?」
「あ、ダメダメ。週刊誌が先生の歳バラしちゃったじゃん。あれのヤケクソ会だから、事情知ってるものだけだから。はるかちゃんは知らないことになってんの、あ、ヤバイ、時間だ。じゃ、また時間合ったら遊んでね。さくらちゃんも。じゃ」

「失礼し……」

 挨拶を半分も聞かないで、脱いだばかりのブルゾンを引っかけてまどかさんは行ってしまった。

「時間が合ったらか……アメリカいっちゃうのにね」
「マリ先生って、上野百合さんですか、女子高生からオバアサンまでこなす名優?」
「そっか、さくらちゃんは、二冊とも本読んでるんだ」
「マリ先生はサバ読んでるんですよね、確か十歳ほど」
「あ、ナイショだからね」
「はいはい」
「ちょっとは、この世界の片鱗が分かったかな?」
「はい、勉強になりました……こんなこと言って僭越なんですけど。よかったら、あたしんちに来られません? 狭い家だけど間数はありますから。近所に元華族の四ノ宮さんてブットンだ人も居て、まあ、退屈はしませんから」
「ほんと? 行っちゃうよ、坂東はるかは!」
「どーぞどーぞ。家族は……見てのお楽しみってことで」
「おもしろいの、さくらちゃんのご家族って?」
「ええ、なんちゅうか、家族それぞれで小説が一本書けそうなくらいの人たちです」
「行く行く、絶対行く!」

 かくして、月とすっぽんほどに違いはあるけど、芸能界のお友達が我が家に来ることになった。

 ますます、バリエーションが増えそうな兆し!

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