大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・49『天孫降臨・2』

2021-07-13 08:58:41 | 評論

訳日本の神話・49
『天孫降臨・2』  

 

 

 アメノウズメやオモヒカネ達を従えたニニギノミコト(瓊瓊杵尊)は宮崎県の高千穂の峰に降り立ちます。

 

 高千穂の峰は宮崎県と鹿児島県の境にある標高1574メートルの火山です。1913年に噴火して以来静もっていますが、古い言葉で言う活火山なので、中腹以上は岩だらけのハゲッチョロゲで、大小の岩や石がゴロゴロしています。

 山頂付近に鳥居があって、天逆鉾(あまのさかほこ)が突き刺さっています。

 古来、天孫降臨の聖地の山として有名なのですが、戦後は学校で教えないこともあって、70歳以下の多くの人は「なにそれ?」なのではと思います。

 わたし自身、高千穂峰と天孫降臨の結びつきを知ったのはNHKの大河ドラマ『龍馬がゆく』だったと思います。

 いえ、はっきり場所とエピソードを知ったのは、その後、学生時代に司馬遼太郎の原作を読んだ時でしょう。

 

 龍馬は日本で初めて新婚旅行をやったことで有名ですね。

 

 伏見の寺田屋に投宿していた龍馬は、伏見奉行所の取り方に襲撃されますが、ちょうど入浴中の寺田屋の娘のお龍が気が付いて、素っ裸で竜馬に知らせました。

 この下りを、どう演出してテレビで見せるのか!?

 原作が知れ渡っていましたので、雑誌や新聞でも前評判が立ち、テレビの前で刮目していたものでありました(^_^;)

 お龍の役は浅丘ルリ子さんがやっておられましたね。

 浅丘ルリ子さんは、後の『花神』でもシーボルトの娘の『おいね』を演じておられ、寅さんのマドンナ『リリー』もお演りになって、わたしの贔屓の女優さんであります(^_^;)。

 龍馬の部屋に駆けこむシーンは憶えているのですが、その直前のシーンの記憶がありません。残念無念。

 龍馬とお龍は、その後結婚して、西郷隆盛らの助けもあって、九州に避難しますが、ただの避難ではなくて新婚旅行にしてしまったところが、龍馬という人物の明るさであり面白さであると思います。

 その時に、立ち寄ったのが高千穂の峰で、龍馬は、お龍に、楽しく神話の話をしています。

 

 幕末ついでに、高杉晋作について。

 

 高杉晋作は幕府に攘夷実行の命を出させ、長州藩をこぞって下関で海峡を通過する外国船を砲撃して、その報復を受けて負けてしまいます。

 晋作は、藩の代表として四か国連合軍と終戦交渉にあたりました。

 当然、四か国は膨大な賠償を求めてきますが、晋作は魔王のごとき形相で四か国代表と渡り合い、交渉に勝利します。

 連合軍側は彦島の租借を要求しますが。

 彦島は藩の持ち物ではなく神の持ち物であると主張して、延々、古事記の神代記を朗々と演説して煙に巻いてしまいます。

 この演説は台本なしのアドリブです。

 当時の武士は古事記の内容などは、ほとんど諳んじていたんですね。

 武士だけではなく、寺子屋でも教えていましたので、百姓町人の多くも知っていたでしょう。

 程度の差はありますが、日本人の七割以上は、わたしが書き散らす程度の神話の話は知っていたと思います。

 お龍が、龍馬から「ここがニニギノミコトが降臨されたところじゃ(^▽^)」と説明されると、こう応えたでしょう。

「ああ、これが、あの有名な!」

 わたしは、ジョンレノンが好きで、ジョンレノンが家族といっしょに軽井沢に逗留して、毎朝パンを買いに行ったお店を知っています(行ったことはありませんが(^_^;))。

 もし、軽井沢に行って、人から「ここが、ジョンレノンがパンを買いに来たお店です」と紹介されたら「ああ、ここが、あの有名な!」と感動するでしょう。

 同じことが、龍馬とお龍の間にあった……と言えば、想像がつくでしょうか。

 実際は、ニニギノミコトはジョンレノン以上に、日本人にはお馴染みであったと思います。

 

 天孫降臨にまつわるラブロマンスが二つあるのですが、それは次回にまわしたいと思います(^_^;)

 

 

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ライトノベルベスト・『チョイ借り・6』

2021-07-13 06:08:19 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『チョイ借り・6』  

 




 チイコの部隊は壊滅しかけていた。

 軍事用語で壊滅とは、部隊の実力の1/3以上の戦闘能力が喪失した状態を言う。有り体に言えば。中隊の100人近くが死傷したことになる。

 中隊長は、増援か撤退のどちらかにしてくれと石垣島の連隊司令部に暗号電をうっていたが、「待て」の返事が返ってくるだけであった。

 昨夜S島に某国の武装部隊一個中隊ほどが秘密裏に上陸した。

 内閣の国家安全保障会議は、とりあえず同規模の実力部隊を派遣して対処することにした。自衛隊出身の防衛大臣は、敵の三倍の一個大隊の派遣を主張したが、軍事には素人同然の公民党に遠慮した結論になり、敵と同規模の部隊派遣になったわけである。

 当然勝てるはずもない。

 島などの孤塁に立てこもった敵を殲滅するには三倍以上の兵力が必要なのが常識だ。戦闘は膠着状態から、次第に自衛隊の劣勢になってきた。石垣島の司令部はヤキモキしたが、シビリアンコントロールの悲しさ、独断で増援部隊は出せない。

 この戦闘は、マスコミや国民に知られないうちに片づけようという、政府の甘い見通しで始められ、その犠牲は、派遣された部隊がモロに被っていた。

 中隊長は肌で感じていた。

 敵にも軍事的な常識がない。全滅しても戦う腹である。おそらく潜水艦で小規模な部隊の増援を行い、こちらが全滅したときに一人でも残っていれば勝ちと踏んでいる。

「チイコ、お前を連れてくるんじゃなかったな。全滅する前にお前は降伏しろ」

「中隊長、あたしは中隊一番のレーザー誘導員です。だから……」

「そのレーザー誘導の弾が切れてしまった。チイコは普通の歩兵だ」

 その時、敵の弾が岩に当たり跳弾になって、チイコのテッパチをかすめた。

「暗視スコープだな」

「応射を!」

「敵は、こういう戦闘に慣れている。無駄弾を撃たせて、こちらを消耗させるつもりだ」

 90度方向に身を潜めていた数人が応射をして一人を倒したが、味方も一人が死亡、一人が負傷し、部分的戦力としては、さらに壊滅した。

「アパッチの一機でもあれば、数分で片づくんだがな……」

 カシャリと音がして、チイコたちは身を伏せた。

 ドドドドド ドドドドド

 音のしたあたりを敵が撃ってきた。音がしたところからは少し外れている。暗視スコープにも写らないということは、人間ではない。

「チイコ、わたし」

 チイコにははっきり聞こえた。女の子の声だ。初めて聞く声だけど懐かしかった。暗視スコープで見ると、ぼんやりと横倒しになった自転車のようなものが見える。

「え?」

 なんと、横倒しのまま自転車が寄ってきた。

「なんで自転車が……!?」

 中隊長も隊員達も驚いている。

「ナオキのオレンジだ!」

「知っている自転車か?」

「はい、でも……」

「チイコ、あるだけの手榴弾を持って、横になったまま、わたしに乗って!」

 不思議な感じがしたが、チイコはオレンジが言う通りにした。

「チイコ、何する気だ?」

「自分にも分かりませんが、上手くいくような気がします……」

 すると、オレンジはチイコを乗せたまま横滑りに空に上った。

「下に二個投げて」

 オレンジの言うとおり、二個投げると、岩場の二カ所で爆発し、数名の敵が吹き飛んだ。

 お返しがきた。地対空ミサイルが飛んできたが、チイコが発する熱では探知できず、あさっての方角に飛んで行った。

 銃弾が十数発飛んできてオレンジに二三発当たったが、オレンジは直ぐに、弾の届かない海上に出た。

「いいこと、すぐ目の前に潜水艦が現れる。ハッチが開いたら、手榴弾をまとめて投げ込んで」

 敵の増援部隊はビックリした。ハッチをあけたら、目の前に自転車に乗った小柄な敵がいたからだ。

 そして、ビックリしているうちに手榴弾の束が艦内に放り込まれた。

 ドゴーーーーーーーーーン!

 派手な音がしてハッチから火柱が上がった。

「これで、この潜水艦は身動きがとれないわ」

 その間に、島では中隊長以下必死の反撃に出て、40分ほどで敵を制圧した。

 オレンジが、傷だらけのセーラー服姿で戻ってきたのは、夜明け近くだった。

 

「どうしたんだ、オレンジ!?」

「ちょっと暴れ過ぎちゃって……」

「オレンジ、怪我してんじゃん!」

「大丈夫、これくらい……でも、もう、あまりこうしていられないわ。最後にナオキの顔が見たくって」

「オレンジ……」

「ほんのチョイ借りのつもりだったのにね……」

 そう言って、オレンジの姿は消えてしまった。

 その後、チイコは除隊して、ナオキのもとにもどってきたがS島のことは、いっさい言わなかった。

 あの作戦に従事したものには箝口令がしかれたのだ。

 やがて、マスコミから次第に情報が漏れてきて、ナオキのカミサンになったチイコのところにもやってきたが、オレンジのことだけは話さなかった。

 チョイ借り 完

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ホリーウォー・3[スグルのメモリーを集める・1]

2021-07-13 05:51:50 | カントリーロード
リーォー・3
[スグルのメモリーを集める・1]  


 
 
 東京ゲルを襲ったシンラは100人に満たなかった。

 一年をかけて一人、多くても三人でゲルに合法的に侵入、市民として浸透を重ね、完全にセキュリティーにかからないようにし、ゲルが防災訓練になる日を待ってセンターを襲った。
 
 防災訓練とは、シンラが強襲してきたときのための訓練であるが、一般市民に不安を感じさせないように防災訓練と称している。
 実態は、軍事的な防衛訓練で、指揮系統はゲルのCICと言っていい地下指揮所に集中する。ここには司令部要員が集められ、戦闘員たちはゲルの外周付近に集中している。
 外からの攻撃に晒されているという前提で実戦さながらに行われ、ゲルの市民たちはゲルに数か所あるシェルターに集められる。
 強制ではないために、シェルターでは訓練終了後にアトラクションや、イベントが行われるのが通例で、ヒナタのいる第一シェルターにはAKPのチームPのメンバーも訓練の招き猫兼イベント要員として集められていた。

 そして襲撃指揮官がなんとAKPメンバーのユーリであったのだ。

 武器は、イベントの道具に紛れたり、一般市民に化けた者が個別に避難用品に偽装して持ち込んでいた。
 シェルターにも防衛要員が配置はされているが、数も少なく、人にしろアンドロイドにしろ一線級の者はおらず、実質上無防備であったと言っていい。
 
 ヒナタは、シェルターの第五層の中にいたが、その存在は秘密になっていた……はずであった。

 ユーリを指揮官とする襲撃部隊は防災訓練の終了と共に動きだした。

 訓練終了の弛緩した空気と、イベント開始の最終準備に入ったところで始まった。誰も最初は襲撃だとは思わなかった。パルス弾が飛び交い倒れる者が出始めても、最初は演出の一環かと思われたくらいだ。
 
 ユーリたちは、一般市民を無差別に撃って混乱させたあと、アンドロイドの防衛要員から片付けた。シリアルをコピーするためである。最前線の兵士ではないので、シリアルをコピーされると容易には敵味方の区別がつかなく、たった10分でシェルターの防衛要員は壊滅した。

 ヒナタは、それ以上は思い出したくなかった。

 襲撃部隊は、その後駆けつけた一線級の兵士たちに大半は破壊されたが、ユーリを含む数体はゲルを抜け出し、日本そのものから脱出した模様である。
 
 被害は第一シェルターに集中していたので、東京ゲルそのものは、ほとんど無傷であった。

 ヒナタは幹部たちの反対を押し切って、次の週末には東京ゲルに戻って来た。
 
 
 スグルのメモリーを集めるためだ。
 
 
 ピンポーン♪

 結城三郎という表札のインタホンを押した。

『どなた様ですか?』
 
 かわいい女の子の声がした。
 
 サブはガラにもなく照れていた。
 
「まさか、ヒナタ本人が来るとは思ってもみなかったんでな。みっともないとこ見せてすまん」
 
 サブ(結城三郎)はごま塩の頭を掻いた。
 
「わたしのシリアルは、東北ゲルのCPに取り込ませてあります。分からなくても当然。気にしないでください」
 
「昔のオレなら、それぐらい見破れた。第一線を離れて十年、錆びついたもんだな。で、なんでオレみたいなロートルのところにやってきたんだ」
 
「スグルと究極受信をやりました」

「え、究極受信……それじゃ、スグルは……」
 
「はい、人格消滅しています。わたしもボディーを失ったんで、今のボディーは予備の新品です」
 
「第一シェルターにゲリラが混じってイザコザがあったってことしか報道されてないけど、そんなに深刻だったのか……胸を見せてくれないか」
 
 ヒナタは、カットソーをめくって胸を見せた。
 
「新品なんで、あの傷はありません……あの子はミナちゃんですね」
 
 お茶を運んできた女の子が部屋を出てから訊ねた。
 
「すまねえ。ヒナタが来るんだったら……」
 
「いいえ、いいんです。ミナちゃんはわたしの身代わりで死んだんですから、サブさんにはたった一人の娘さんだったのに」
 
「ハハ、それが、今は二人なんだ」
 
「え……?」
 
「おい、二人とも入ってこい」

 少し間をおいて、ヒナタと同年配の少女と、先ほどの女の子が入ってきた。

「……両方ミナちゃんですね。こちらがわたしの犠牲になったころの……そして、こちらが、そのまま歳を重ねたミナちゃん」
 
 二人のアンドロイドがニコリとして頭を下げた。
 
「いい歳をして、お人形遊びみたいで面目ねえ……」
 
 サブの目から涙が零れ落ち、それは自由の利かない膝の上でシミになっていった。
 
 サブを最初に訪ねてヒナタは正解だと思った。
 
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