大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 17『野にあるごとく・3』

2021-07-14 14:18:11 | ノベル2

ら 信長転生記

17『野にあるごとく・3』   

 

 

 学校は高台の上にあるので、どこの門から出ても街を見下ろすことになる。

 

 西門から出ると、学校外周の林と街並みが重なって、その重なりの向こうに街のシンボルである御山が見える。

 御山は、学校のある高台よりも背が高いが、威圧感は無い。

 南の方角に城山があるのだが、林に遮られて窺うことができない。

 五十メートルほども行くと尽きかけた林が額縁のようになって風景を荘厳しはじめる。

 城山も姿を現わし、御山と相まって、景色を引き締めている。

 

 あ、これだ!

 

 スマホを構えて、このパノラマを写し取る。

 野にあるごとくどころではなく、まさに野の景色、野のパノラマだ。

 この御山を真ん中に据えた大きな風景は西門から出なければ見えない景色だ。

 他の三門から出た者に、この景色は見えていない。

 俺は運がいい。いや、運の良さも力のうちか。桶狭間で義元の本陣を見つけた幸運に通じるものがあるぞ。

 カシャ カシャ カシャ

 目の高さを変えて何枚も撮ってみる。

 空を大きくとると城山が見えなくなる。

 城山と御山を十分にアングルに収めると空が小さくなって景色が重くなる。

 景色のつり合いとバランスの兼ね合い。

 難しい、が、面白い。

 カシャ カシャ カシャ

 さらにシャッターを切る。

 カシャ

 ん……俺のではないシャッター音?

 気づくと、電柱一本分離れたところで姿勢を低くしてスマホを構えるオッサン。

 構えたスマホの下に見える口が卑し気に笑っている。

 こ、こいつ(;'∀')!?

 撮影に熱中するあまり、俺は不用心に脚を開いてしまっていた! ついこの間までは男だったので、こういう時に注意がおろそかになるのだ(#-_-#)。

「下郎め! スカートの中を撮ったなあ!!」

「ヒ!」

「捨ておかんぞ!」

 ドゲシ! バキ! グシャ!

 一撃でぶちのめすと、スマホをへし折って、踏み潰してやる。

「お、おたすけえええええ( ノД`#)」

  オッサンは、スマホを拾おうともせずに火のついた狸のように逃げて行った。

「フン、命があるだけ助かったと思え!」

 俺は、優柔不断と破廉恥なやつには容赦がない。

 安土城が建築中の時にヴァリニャーニを案内してやった時、警備にあたっていた足軽が通りがかった若い女をからかっているのを見つけた事がある。

 一丁ほど離れた資材置き場の向こうであったが、俺はすっ飛んで行って足軽のそっ首を刎ねてやった。

 ブァリニャーニは恐れながらも俺の俊敏さと公正さを讃えておった。

「なんと高潔、なんと公正なおふるまいでありましょう! エウロパの王侯でも、かくまで適切な処断ができるものはおりませぬ!」

「であるか」とだけ返事をしておいたが、あれは不完全であった。

 足軽は、下卑てにやついた顔のまま首になって転がった。

 あやつは、自分がなぜ、突然に死んだか理解もせずに死んだのだ。

 あれは、あ奴の非を責め、恐れさせた上で首を刎ねなければならなかった。

 今回は、十分に恐怖せしめた上でシバキ倒した上に、スマホも破壊してやったぞ。

 転生した分、いささか、いや、さらなる成長を遂げたか。

 

 ……ハ!? そうであったか!!

 

 そこで気が付いた! 

 回れ右をすると、俺はまっしぐらに学校に駆け戻ったぞ。

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で打ち取られて転生してきた
  •  熱田敦子(熱田大神)  信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田(こだ)      茶華道部の眼鏡っこ
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やくもあやかし物語・88『ざいはらぎょうへい』

2021-07-14 09:20:23 | ライトノベルセレクト

やく物語・88

『ざいはらぎょうへい』    

 

 

 東海と書いたら、頭に来るのはJR。お尻に来たら大学。

 東風と書いたら、匂いおこせよ梅の花と続く。

 晩ご飯の時に、お爺ちゃんに聞いた答え。

 

 じゃ『東窓』は?

 

 聞いてみたかったけど、グッと堪える。

 高安で『東窓』って書かれた紙を貼り付けたら、沙也加って引きこもりの女の子が子ネコのように家を飛び出した。

 つまり、何年も続いた引きこもりをいっぺんに治してしまった。

 

 あれってなんだったんだろうね……

 

 ひとりごとを言うと、ポケットからチカコが顔を出す。

「いろいろ聞いてみるといいわよ」

「チカコは知ってるの?」

 チカコは、高安ではポケットに入ったままで顔も出さなかった。

 まあ、気まぐれな子だと(あやかしって、たいがい気まぐれなんだけどね)思っていたから追及はしない。

 

 ネットで検索する。

 

 東窓……東に窓を付けると、日の出と同時にお日様が差し込んで、健康で自然な目覚めになるので、建売住宅などは、最初から東に窓を付けている者が多い。

 東の窓は、運気上昇の基本……とか。

 東の窓には深いグリーンのカーテンが最適……だとか。

 

 東窓と引きこもりの因果関係を書いているのは見当たらない。

 

『見よ東海の空明けて~旭日高く輝けば~(^^♪』

 黒電話から歌が聞こえてくる。

 交換手さんが歌っている。

「なに、その歌?」

『あ、東海とか東風とか言ってたから、つい口ずさんでしまった(^_^;)』

「なんの歌?」

『あ、愛国行進曲。あ、つい、歌っちゃっただけだから、忘れて、忘れて!』

 声だけでも分かるくらい照れて切れてしまった。

 

 お風呂から上がると、お爺ちゃんとお婆ちゃん、それにいま帰ってきたばかりのお母さんも混じってテレビの野球中継を観ている。

「大谷翔平?」

 ぼんやり聞いてみると、三人揃って首を横に振る。

 画面に気を取られてるから、無意識というかおざなりなんだけど、それでも反応してくれるのは嬉しい。

 こういうのを、大げさに言うと『家族の呼吸』なんだろうね。

「巨人阪神戦よ(;^_^A」

 お婆ちゃんが、チラリとわたしを見て言ってくれる。

「え、日本?」

 観客がいっぱい入って歓声を上げてるもんだから、てっきりアメリカだと思っていた。

「観客入ってるんだ……」

「そりゃ、巨人阪神戦だもの」

 お婆ちゃんは少女のようだ。

 ウワアアアアア!

 巨人に得点が入って、親子三人が歓声をあげる。

 

 コロナの真っ最中に観客入れてる!?

 

 いまは、なんでも自粛の世の中だから、野球場に観客が入っているなんて思わなかった。

 コロナで観客を入れるなんて、イギリスとかアメリカがやることだと思ってた。

 巨人阪神戦に観客入れるんだったら……なんで、オリンピックは無観客なんだよ?

 素朴な疑問が湧いてきたけど、これは聞かない方がいいと思って部屋に帰る。

 

 机の上ではチカコがリラックスして紅茶を飲んでいる。

 

「これ、ヒントよ」

 

 そう言って、メモ帳を指さす。

「え?」

 メモ帳には、四文字熟語が書いてある。

 

 在原業平

 

 ざい……ざいはら……ぎょうへい?

 

 なんだこりゃ?

 

 不思議に思っていると、チカコはプイっと膨れて消えてしまった(;'∀')。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸

 

 

 

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ライトノベルベスト・『かわいいペンダント』

2021-07-14 06:49:05 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『かわいいペンダント』 




「かわいいペンダントしてるな」

 そんなオタメゴカシを言って、お父さんはいつものように沖縄に行った。

 

 お父さんは、沖縄に土地を持っている。150ほどと、人に聞かれたら言っておく。

「へえ、大したもんだ!」

 と、たいていの人はびっくりしてくれる。

 エメラルドグリーンの海を臨む高台に150坪もの別荘を持っている。そんなふうに人は誤解してくれる。

 正しくは150平方mm、ほとんどハガキの大きさの土地……。

 お父さんは、アメリカが憎くて仕方がない。だからアメリカが沖縄に基地を持っていることが許せない。同じ感性の某政党をいまだに支持している天然記念物。

 5月15日、6月23日、8月15日は、お父さんが大張り切りする日。

 他に年に何度も沖縄に行って自称「がんばっている男」。

 沖縄本島に二つしかない新聞社の人たちとも仲良しのようで、基地反対のデモや集会では沖縄市民の一人としてよく写っている。あんまりよく写っているので、某週刊誌の記者が質問した。

「あなた市民活動家の○○さんですね?」

「う……そ、そうだ。ぼくは本土の一市民として反米闘争、反基地闘争に共闘しているんだ!」

 N放送やA新聞などは、ほんの百人ほどの反対集会を何倍にも水増しして報道している。たまに何千人と集まることもあるけど、かなりお父さんみたいな人が集まってる。基地で働いてる人や、基地賛成の人もいるけど、この人らの声がマスコミにのることはない。

 嘉手納基地の近くの小学校の移転計画が本気で出たことがある。信じられないけど、よってたかって、この移転計画は握りつぶされた。その移転反対運動の中心にお父さんもいた。

「移転すべきは米軍基地で、小学校ではない!」

 まあ、そんなことはどうでもいい。お父さんの趣味だと割り切っている。念のため、あたしは毎年台風に悩まされている以上に沖縄の現状には心を痛めています。だけど、ボンクラな女子高生の頭では、台風がどうしようもないように、答えが出てきません。

 しかし、娘としては、家の近所の問題や、家のことに気を使って欲しい。

 近所で野良猫が増えて困ってる。お父さんは知りません。

 街で、若い女性の拉致事件が3件も起きました。

 あたしも女子高生なんだけど、お父さんは「お前に限ってそれはない」と笑っておしまい。わたしは去年の学祭でも準ミスに選ばれているんだけどね、一応。

 筋向いの家が火を出して半焼。信じられないけど、お父さんは、この事実さえ知りません。

 関心がないんです。

 一回だけ、お父さんをおちょくりました。

「お父さん、近所の某空港で、オスプレイの離発着訓練やるのよ」

 お父さんの顔色が変わりました。

 さっそく仲間に電話して訓練日には、数十人で反対運動に行きました。

 意気揚々と帰ってきたお父さんに、プリントアウトした資料を渡しました。

 オスプレイの、ここ十年ほどの事故記録です。警察が使っているヘリコプターよりも低い事故数です。

「……なんだ、アメリカの資料じゃないか、あてになるか」
「その下の中国語のは、人民解放軍の資料。同じ数字が出てるよ」
「……」
「そのまた下はね、○○島の住民の人たちのオスプレイ配備嘆願書。島で急病人が出るとオスプレイだと、ヘリの半分の時間で運べるんだって」

 無言のお父さんをしり目に、あたしは、その日の反対闘争のことを写真と資料付でブログに載せました。アクセスは200ほど、日本人は、元々無関心だということが、よく分かりました。

 弟が、ずっと不登校だけど、なにも言いません。

 家のことは、お母さんと、あたしに丸投げです。家庭内安保のただ乗りです。

 先日は、弟をなんとかしてやろうと思って、家の外に引きずり出して大げんか……正確に言うと、引きこもりで体力がない弟を、見かけの割に力も根性もあるあたしがボコボコにしてやりました。

 そして学校の先生と児童相談所の人にも直ぐに来てもらって、膝詰で話をしました。グズグズしながらも弟は「近所の野良猫が怖い」と言いました。ここんとこアメリカ大統領の報道官並に言葉を選んで語っています。そこんとこよろしく。

 どうも弟は野良猫の雌ボスが怖いらしく、人間のくせに猫のパシリまでやらせられていたようです。

 あたしは、仲間といっしょに雌猫のボスを捕まえて、「保健所」ではなく、近くの山の中に連れて行って殺処分しました。

 動物愛護のうるさい人も居てるんで、その場で焼きました。生き物と言うのは90%近く水分で出来てるんで、なかなか焼けません。薪を集めては何回も焼きました。最後は真っ黒に焼けたのをバラバラにして別々に焼きました。丸半日かかりました。

 喉の骨がきれいに見えたんで、水で洗ってペンダントにしました。

「かわいいペンダントしてるな!」

 最初のお父さんの言葉につながります。

 つぎは、なんのペンダントにしようかな。

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ホリーウォー・4[スグルのメモリーを集める・2]

2021-07-14 06:31:10 | カントリーロード
リーォー・4
[スグルのメモリーを集める・2]  


 
 
「あれは、極東戦争が、あっという間に終わった直後だった……」

 サブの話は極東戦争にまで、さかのぼった。
 
 半島は、カタチの上では、南が北を併合するという予想通りの解決をみたが、新統一政権の中には、かなり枢要なところに北の人間が入り込んで国の実権を握っていた。
 このどっちつかずの政権をアメリカも中国も静観していた。大きな動乱にならず半島が統一され、さほどの難民も出さず、戦いも起こさなかったからである。

 新政権は伝統的な事大主義はとらず、アメリカと中国を両天秤にかけることでたくましく新国家を創りつつあった。
 中国は、成長が限界に達し、貧富の差や民族問題の噴出にあえいでいた。
 党が軍と折り合いがついていたころはまだよかったが、党の枢要な者たちが海外に逃亡し始め、業を煮やした軍は矛先を日本に向けた。
 
 南西諸島に送り込んでいたスリーパーたちに蜂起させ、南西諸島の一部の独立運動に発展させた。
 
 二つの島が日本からの独立を宣言した。むろんスリーパーを中心とする傀儡であるが、ここにきて日本は、やっと目覚めた。
 自衛隊が一世紀以上前から変わらない自衛隊法の枠ギリギリのところで、間接侵略として対応、一週間あまりで島をとりかえした。

 やがて中国は、新半島国家も抱き込み、共同戦線を張って、なんと核ミサイルを撃ち込むという暴挙に出た。

 20発の多弾頭ミサイルが撃ち込まれ、日本はその19発までを、多弾頭に分裂する前に叩き墜とし、10発に分裂した子爆弾も8発を大気圏外で撃破、1発を一万メートルの上空で空自の戦闘機が破壊。
 
 残りの一発が大阪湾の湾岸近く500メートルの上空でさく裂。
 
 阪神地方を中心に10万人近い犠牲者を出した。史上三度目の核兵器の惨禍にみまわれ、目覚めた日本人は豹変した。
 
 核兵器をソフト化し、世界一と言われたアンドロイド技術と融合させた。あらかじめ核爆弾を内蔵したアンドロイドを作り、プログラムをインストールすることによって起爆するように、たった二か月でプロトタイプを造るところまでいった。
 
 この時代アンドロイドは、内殻以外は生体組織でできており、容易に人間との区別がつかない。その最終進化形がヒナタである。

 日本は、ヒナタのスペックを八割までセキュリティーを緩くすることで事実上公開していた。ハッキングの進んだ中国は九割まで情報をつかみ、密かにヒナタの破壊工作に出た。
 
 もっとも、そのころには中国は五つに分裂し、分裂したそれぞれが、戦争責任のなすりつけをやっていた。10万人の犠牲を出しながら、その責任はひどく曖昧なままになっている。世界が、それ以上の混乱ととばっちりを嫌ったからである。極東戦争は曖昧なまま事実上の休戦状態になった。この間わずか三か月でしかない。

「我々も分裂した中国を甘く見ていた……」

 それは、ヒナタ一般公開の日に起こった。
 
 日本らしく、ヒナタタイプのアンドロイドと、実際のアイドルグループの合同ライブというカタチで行われた。100人を超える出演者の中に本物のヒナタが混じっているという設定で、3時間近くのライブの終わりに本物のヒナタを当てるという、総選挙的な方式が取られた。
 
 実際は、その中に本物のヒナタはおらず、マニアが作ったものから、技研のプロトタイプまでの雑多な集まりでしかなかったのだが。

 本物のヒナタは、休暇中のサブやスグルたちとハワイに居たのだ……。
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