大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・52『天孫降臨と二つの恋・3』

2021-07-30 09:06:58 | 評論

訳日本の神話・52
『天孫降臨と二つの恋・3』  

 

 

 記紀神話においては神さまは不老不死です。

 

 たとえ負けても、どこかに引き籠ったり(スサノオは高天原でボロ負けしたあとは地上で暮らしています)、分裂したり(イザナミを焼き殺した火の神はイザナギに切られますが、分裂して地上に散らばります。イザナミは焼き殺されますが、黄泉の国で永遠に生きています)して永遠の時間を生きます。

 アマテラスの息子たちも不老ですが、殺されると死にます(アメノワカヒコはオモヒカネが投げた矢が当たって死にました)。

 そして、アマテラスの子孫である歴代天皇は、みんな病気にかかったりして、普通に死んでいます。

 では、なぜ、神の子孫である天皇は、普通に死ぬようになったのでしょうか?

 

 神さまが人間のように死ぬようになったのは天孫降臨したニニギノミコトからなのですが、それには、天孫降臨にまつわる、もう一つの恋が関係しているのです。

 

 ニニギノミコトが笠沙の海岸(鹿児島県の薩摩半島の西)を歩いていると、メチャクチャ可愛い女の子に出会いました。

「きみの名前は(^_^;)?、ど、どこの娘さんかな(#'∀'#)?」

 一目ぼれしたニニギはさっそく名前を聞きます。

「え、えと、山の神オホヤマツミの娘でコノハナノサクヤヒメと申します(#'∀'#)」

 そう、彼女こそ木花開耶姫(コノハナノサクヤヒメ)なんですなあ(^▽^)!

 

 大阪市に此花区という区がありますが、元になったのは木花開耶姫が元だったんです。

 女の子の名前でもサクヤというのはクラスに一人はいるくらいにポピュラーな名前ですが、その元々も、このサクヤでしょう。

 花博の日本館を『咲くやこの花館』と言いましたが、もちろん、サクヤから採った名前であります。

 一目ぼれしたニニギは、スグにプロポーズしてサクヤを妻にします。

 そうすると山の神も心から喜んで、様々な嫁入り道具といっしょに、サクヤの姉の岩永姫(イワナガヒメ)も送ってきました。

「あ、おねえちゃん!?」

「エヘヘ、あたしもついてきちゃった~、ニニギくんもヨロ~(#´艸`#)」

 いま、妹をもらうと洩れなくお姉ちゃんも付いてきます!

 なんだか、テレビ通販のノリですなあ。

 テレビ通販に付いてくるオマケは、たいてい型落ちの在庫整理品だったりします。

「こ、これが、サクヤの姉ちゃんなのか(⊙△⊙)」

「うん、ま、よろしくね(^_^;)」

「ちょ……ちょっとなあ……」

 イワナガは、妹の十倍くらい大きくて厳ついオネエチャンであります。ルックスも名前の通り岩のようにゴツゴツしております。

 さすがのニニギも、ちょっとビビってしまい、テレビ通販にはクーリングオフがきくのを思い出して、イワナガを送り返してしまいます。

 後日、父の山の神から手紙が届きます。

――姉のイワナガを送ったのは、ニニギノミコトが巌のように丈夫に健やかに永遠の命を持たれることを願ったものです。イワナガを送り返されましたのでミコトの御寿命は、そう長くはないでありましょう――

 それ以来、歴代天皇は人と同じほどの寿命になりました。というオチになっています。

 黄泉比良坂の千曳の大岩を挟んで、イザナギとイザナミが言い争って、人は一日に500人ずつ増えることになったというエピソードと対になる話だと思います。

 イワナガヒメは、山の芯(コア)になる岩を現しているのだと思います。芯がしっかりしていないと、地震や大雨で、一見不動に見える山でも簡単に崩れることを古代の人々は知っていたんですねえ。

 コノハナノサクヤヒメは、その巌の上に根を張って可憐に咲く花や果実を現しているのでしょう。

 一見、山の神の意地悪に見えますが、事の本質を現したものだと思います。

 

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ライトノベルベスト〔詫びに来た8月〕

2021-07-30 06:56:42 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

〔詫びに来た8月〕  

 



 車を洗っていると、後ろで気配を感じた。

 振り向くと、カットソーの上にギンガムチェックのシャツ、足許はジーンズにスニーカーの女の子。その子がセミロングの髪を風になぶらせながら立っている。

 目が合うと何か言おうとするんだけど、すぐに言葉を飲み込んで伏目がちになる。

 三度目に、こちらから聞いた。

「なんか用?」

 仕事柄、明るい印象で言ってしまうので、安心したんだろうか、はにかみながら、その子が言った。

「すみません、わたし8月なんです。お詫びにきました」

 そこまで言うとペコリと頭を下げる。なんだかファストフードの店で、バイトの子が謝ってるような初々しさがあった。

 え……今なんつった?

「雨ばかりで、気温も上がらずに、ご迷惑ばかりおかけしました。今日で8月も終わりなんでお詫びに……」

 少しおかしい子か、それともドッキリ? どこかにカメラが?

「あ!」

 と思うと、道の真ん中に飛び出しトラックの前に飛び出し、トラックは何事も無かったように、彼女と交差して行ってしまった!

 とりあえず人間でないことが分かった。

「わたし、あなた担当の8月なんで、他の人には見えないんです」

「オレの担当!?」

「はい、牧原亮介さま」

 と言うわけで、少女姿の8月を助手席に乗せて車を走らせている。

「これで、キミの気がすむわけ」

「いいえ、亮介さんが、わたしのせいでこうむった不利益を取り戻しにいくんです」

 この台詞は、車に乗せる前と、海岸通りの道に入る前にも聞いた。

「不利益こうむった人なんて、他にもいっぱいいるだろ。水害で家族亡くしたり家流されたりって」

「そういうとこには、別の担当者が行っています。ほとんど、ただひたすらお詫びし、お慰めすることしかできないんですけど……」

「オレなら、別に不利益なんかなかったぜ。冷房代かかんなくて助かったぐらいだよ」

「そう言われると辛いです。亮介さんのは、まだ取り返しがつくかもしれません。信じてください」

「ん……でも、8月の割には、もう秋ってかっこうしてるね」

「成績が悪いんで9月も担当することになりましたんで、あ……あ、その道を左です」

 その道は旧道で、海沿いという以外取り柄のない道で、路面も悪く通る車はめったにいない。二キロほど行くと、パンクでもしたんだろうか、若い女性がサイクリング用自転車と格闘しているのが見えた。

「あ、夏美じゃないか!?」

「あ、亮介……どうして……?」

 気づくと、8月は車を降りて、少し離れたところから、オレたちを見ている。

 オレは、夏美と二回泳ぎにいく約束をしていた。二回とも台風と大雨で、文字通り流れてしまっていた。別の日に映画とか提案したけど却下だった。タイミングと要領が悪いんだと思っていた。

「こういう太陽の下で、泳いでみたかったんだ……その代わりに海沿いを走りまわっているわけ」

「こんなとこで、修理も大変だろ。自転車ごと乗せてやるぜ」

「ありがと。でもいいの。友達にメールしたら、ここまでサルベージに来てくれるから」

「え、ああ、そうか……」

 夏美は「友達」というところで目を伏せた。その声としぐさで「友達」が分かった。

 職場で夏美を密かに張り合っている秋元だ。

「そか……じゃ、オレ行くわ……」

「うん」

 そっけない返事に接ぎ穂も無くて、8月が待っている車に向かう。

「すみません。いいシチュエーション作ったつもりだったんですけど……」

 8月が助手席で俯いた。

「8月のせいじゃないよ。もう一歩踏み出してもよかった……ダメ押しで断られるのが怖かったからさ。そういう男なんだよオレは。どう、もう少しドライブ付き合ってくれる?」

「ごめんなさい、そろそろ9月の用意しなきゃならないから……」

 8月は名残惜しそうにオレのことを見ながら、ゆっくりと消えていった。

 もう一言いえば、別の答えが返ってきそうな予感はした。でも、なんにも言えないオレ。

 まあ、気長に……9月になったら、よろしく。

 アクセルを踏み込む。暴走……のつもりが小心者、10キロしかオーバーしていない。

 でも、どこにいたのかパトカーが追いかけて停車を命じている……。

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ホリーウォー・20[ヒナタとキミの潜入記・8]

2021-07-30 06:23:07 | カントリーロード
リーォー・20
[ヒナタとキミの潜入記・8] 


 
 
「シンラ大司教、国家反逆罪で逮捕する」

 そう言ったとたんに、シンラ大司教の執務室にはバリアーが張られた。
 
「バリアーなんか張ったら、武装した部下たちが突入してくるぞ!」
 
 習大佐は、反射的に叫んだ。
 驚いたわけではない、バリアーは予想の範囲内なので威嚇したに過ぎない。
 
「三十分は破れません。ダミーの情報が流れます。今度のわたしの大陸遊説の成果をもとに今後の計画を話し合うという情報です」
 
 シンラは、あくまでも落ち着き柔和な表情を崩さなかった。習大佐は、逮捕令状をたたんだ。たたむと緊急信号が発せられる仕掛けになっている。
 
「無駄ですよ、大佐の緊急信号は、この執務室からは出ることができない。明花くん開花くん、モニターを」
 
 ヒナタの明花は、モニターのリモコンを操作した。天壇の教会の内外で配置についている部下たちが映されるが、彼らの動きに変化はなかった。開花のモニターには穏やかに話し合うシンラと習大佐、そして秘書として控えている明花と開花が映っている。
 
「くそ、これは……」
 
「習大佐が、ここに来ることは織り込み済みです。そのセキュリティー付の逮捕令状は、とりあえずのもの。軍司令部に連行したあとは、わたしを破壊することになっていますね。あなたは、わたしのことをアンドロイドと勘違いされている。この国にはアンドロイドには人権はありませんからね」
「そうだ、どんなに優秀であろうと、この国はロボットによる支配は認められない」
「ロボットとは見くびられたものですね。一体なにを証拠に?」
「この一か月間のあんたのデータだ。人間の能力をはるかに超えている。そこの明花開花姉妹でも交代で休憩をとっている。あんただけが不眠不休。ロボットである証拠だ」
「仕方のない人だ。たったこれだけの資料でわたしをロボット……正確にはアンドロイドでしょうが。そう決めつけてしまわれる。わたしはサイボーグです。ここだけは人間です」
 
 ポンポン
 
 シンラは、自分の頭をたたいてみせた。
 
「嘘だ。身体はともかく、人間の脳が、あんな不眠不休の行動に耐えられるわけがない」
「わたしの脳はハイブリッドです。休息する間はCPで制御されている。必要なときはCP は強制的に、わたしの脳みそを叩き起こしますが。今がちょうど、その状態です。逮捕してお調べになれば分かるでしょうが、そんなことをすれば、この国の、いやこの大陸のシンラ教徒が黙ってはいない。あなたの部下にも信徒はいます。明花くん外部映像にフィルターを」
 
「はい」

 なんと、出動した部下たちの1/3がシンラの信徒であった。

「わたしは、なにもこの国を支配しようと思ってはいません。願いはただ一つ。中華国家の復活です。大佐、あなたの悲願でもあるはずだ。それより、習大佐が気を付けなければならないのは日本から送られてきた究極兵器だ」
「……ヒナタのことか。あれはガセだ。入国の噂はたったが、以後なんの情報も無い。小心者の日本がそこまで冒険すると思うのが心理戦にハマった証拠。日本人に地球を人質にしたような行動はとれない」
「日本を見くびってはいけない。なんといっても三発目の核攻撃を受けたんだ、しかも、その三発目は、この中華国家が撃った。五か国に分裂して、責任をあいまいにしているが、日本人は、そこまで寛容じゃない。そうだろ明花……いや、ヒナタくん」

 シンラの穏やかな目と、驚愕した習大佐の目が同時にヒナタに向けられた……。
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