鳴かぬなら 信長転生記
地を蹴って植え込みに飛び込んだ俺は、こんな顔(。・ˇдˇ・。)になり、相手は、こんな顔((# ゚Д゚))になったぞ!
俺のダッシュに驚いてひっくり返っていたのは妹の市で、その手には短筒が握られていたのだ!
「なんだ! この短筒は!?」
「ちょ、い、イタイし!」
俺は反射的に市の腕を捩じ上げていた。で、「すまん、痛かったか?」にはならない。
なんと言っても短筒だ、鉄砲の短い奴だ。こんなので撃たれたら、たとえ妹が撃った弾でも痛いぞ! いや、死ぬぞ!
「これは、短筒じゃなくてピストル。コルトガバメントで、じゃなくって、ガバメントのエアガンで、じゃなくて、あんたのとこまで届くなんて思ってなくてえ(#°ロ°#)!」
ムギュ
勢いで短筒、いや、エアガンを市の手からもぎ取る。
こういう行動には脳みそを使わない。場数を踏んだ戦国武士ならば脊髄反射で動くように出来ている。脊髄反射でやらなくては命が無いからな。
ウググ…………(#꒪ȏ꒪#)
相当痛かったはずだが、さすがは妹、気絶もしないで唸っている。
「なるほど、これはプラスチックでできている」
「だから、エアガンだって(-_-;)」
「で、なんで俺を狙った!?」
「と、届くと思ってなかったし、ほ、ほんと、ちょっと狙って撃った気になってみたかっただけだし……」
言われて、自分が立っていた場所を振り返ってみる。
目測でも、ゆうに五十メートルはある。
たしかに、オモチャなら、そこまで飛ぶかという距離だ。並の城なら堀の向こう側を狙って、まだ二十メートルは余裕だ。
「このエアガンで猫を狙ってるバカが居たから取り上げてやったんだ」
「そういうやつは、やがては人を撃つようになるな」
「ね、だから。で、公園まで来たら、人が来る気配がして……植え込みに隠れたらあんただったし」
「それで、俺を撃ってみようってか!?」
「だから、そんなに威力あるって思わないし」
「うむ……市、そこの空き缶を投げてみろ」
「これ?」
「ああ」
「いくよ……えい!」
ピシュン!ピシュン!
空き缶は空中で二度弾んで、落ちた時には二つの貫通孔が開いていた。
「すごい(꒪ཫ꒪; )」
当たらないと思っていたとはいえ、俺を狙ったことには問いただしたい事があるが、今は触れない。
「今日は、なぜジャングルジムの天辺に居ないのだ?」
「こないだ、ローアングルで写真撮ってたやついたし……捕まえそこなったけど」
「ああ、あれな」
「あれなって……あんた知ってんの!?」
「知らん」
「それに、そういう気分じゃないし」
盗み撮りを追及して来たらどうしようかと思ったが、市は、そこまでの元気もないようで俯いてしまう。
「悩んでるんだったら言え、ウジウジ俯いてるやつは嫌いだ」
「う、うん……」
前世でも、俺にははっきりしない妹だった、小豆袋の件でも分かる通り頭はいい奴だ。
いい奴だから、言わんでも分かってるだろうと決めていたところがある。
それが、いくら戦国時代だとはいえ、二度も落城と討ち死にを経験させてしまった。
転生しても男には生まれかわらずに女で通している。
よし、今日は、とことん聞いてやろう。
そう、決めて、俺は市の真横にドッカと腰を下ろした
☆ 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生
- 熱田敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生
- 古田(こだ) 茶華道部の眼鏡っこ