大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 21『狙撃・2』

2021-07-27 15:21:39 | ノベル2

ら 信長転生記

21『狙撃・2』   

 

 

 地を蹴って植え込みに飛び込んだ俺は、こんな顔(。・ˇдˇ・。)になり、相手は、こんな顔((# ゚Д゚))になったぞ!

 

 俺のダッシュに驚いてひっくり返っていたのは妹の市で、その手には短筒が握られていたのだ!

「なんだ! この短筒は!?」

「ちょ、い、イタイし!」

 俺は反射的に市の腕を捩じ上げていた。で、「すまん、痛かったか?」にはならない。

 なんと言っても短筒だ、鉄砲の短い奴だ。こんなので撃たれたら、たとえ妹が撃った弾でも痛いぞ! いや、死ぬぞ!

「これは、短筒じゃなくてピストル。コルトガバメントで、じゃなくって、ガバメントのエアガンで、じゃなくて、あんたのとこまで届くなんて思ってなくてえ(#°ロ°#)!」

 ムギュ

 勢いで短筒、いや、エアガンを市の手からもぎ取る。

 こういう行動には脳みそを使わない。場数を踏んだ戦国武士ならば脊髄反射で動くように出来ている。脊髄反射でやらなくては命が無いからな。

 ウググ…………(#꒪ȏ꒪#)

 相当痛かったはずだが、さすがは妹、気絶もしないで唸っている。

「なるほど、これはプラスチックでできている」

「だから、エアガンだって(-_-;)」

「で、なんで俺を狙った!?」

「と、届くと思ってなかったし、ほ、ほんと、ちょっと狙って撃った気になってみたかっただけだし……」

 言われて、自分が立っていた場所を振り返ってみる。

 目測でも、ゆうに五十メートルはある。

 たしかに、オモチャなら、そこまで飛ぶかという距離だ。並の城なら堀の向こう側を狙って、まだ二十メートルは余裕だ。

「このエアガンで猫を狙ってるバカが居たから取り上げてやったんだ」

「そういうやつは、やがては人を撃つようになるな」

「ね、だから。で、公園まで来たら、人が来る気配がして……植え込みに隠れたらあんただったし」

「それで、俺を撃ってみようってか!?」

「だから、そんなに威力あるって思わないし」

「うむ……市、そこの空き缶を投げてみろ」

「これ?」

「ああ」

「いくよ……えい!」

 ピシュン!ピシュン!

 空き缶は空中で二度弾んで、落ちた時には二つの貫通孔が開いていた。

「すごい(꒪ཫ꒪; )」

 当たらないと思っていたとはいえ、俺を狙ったことには問いただしたい事があるが、今は触れない。

「今日は、なぜジャングルジムの天辺に居ないのだ?」

「こないだ、ローアングルで写真撮ってたやついたし……捕まえそこなったけど」

「ああ、あれな」

「あれなって……あんた知ってんの!?」

「知らん」

「それに、そういう気分じゃないし」

 盗み撮りを追及して来たらどうしようかと思ったが、市は、そこまでの元気もないようで俯いてしまう。

「悩んでるんだったら言え、ウジウジ俯いてるやつは嫌いだ」

「う、うん……」

 前世でも、俺にははっきりしない妹だった、小豆袋の件でも分かる通り頭はいい奴だ。

 いい奴だから、言わんでも分かってるだろうと決めていたところがある。

 それが、いくら戦国時代だとはいえ、二度も落城と討ち死にを経験させてしまった。

 転生しても男には生まれかわらずに女で通している。

 よし、今日は、とことん聞いてやろう。

 そう、決めて、俺は市の真横にドッカと腰を下ろした

 

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田敦子(熱田大神)  信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹(兄を嫌っているので従姉妹の設定になる)
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田(こだ)      茶華道部の眼鏡っこ

 

 

 

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銀河太平記・057『演舞集団・北大街』

2021-07-27 09:41:33 | 小説4

・057

『演舞集団・北大街』 児玉元帥   

 

 

 先祖は神戸の華僑でしてな……

 

 孫大人は問わず語りをし始めた。

「従兄が残って貿易会社をやっておったのですが、息子を残して亡くなってしまったので、しばらく神戸に住んで面倒をみてやることになって、あなたたちと同様、地球に向かうところです」

「それは奇遇ですね(^口^)」

 調子を合わせておくが、見え透いた嘘だ。

 真っ当な商売なら、ラスベガスの船などには乗らない。私達同様、ウソで塗り固めた経歴と旅行目的だ。

 だいいち、孫大人の先祖が神戸の華僑だったなんて、聞いたこともない。

 孫の先祖は、満州馬賊だ。

 袁世凱のブレーンを振り出しに、国民党、中共時代には台湾に足場を置きながらも、深圳で財を成し、香港、上海、瀋陽に拠点を分散、どこがこけても、実質を失わないように立ちまわっていた。

 瀋陽が奉天と改称したのは孫大人の父親の功績だと言われている。名は体を表すで、その後満州が独立したのは、この改名が大きかったと言われている。

 北大街が奉天一の歓楽街になり、満州戦争直前まで発展を遂げられたのも、孫一族の力だ。

「神戸では、なにを扱っておられるんですか?」

「いろいろです、餃子の皮からパルス兵器まで、その時その時儲かりそうなものを薄く広く」

 コスモスの質問に大きく応える。

 この答えに嘘は無い。孫大人というのは、そう言う人だ。

 こだわったのは北大街の流行り廃りのことだけで、肝心の商売にこだわりは無い。

 一つの分野で程よく儲けると、さっさと違う分野に鞍替えして、人の恨みを買わないようにしている。

 もっとも、孫大人の『程よく』は、並みの貿易商の『大儲け』のスケールなんだがな。

「それで、今は、なにを手掛けておられるんですか?」

 水を向けると、孫大人は少年のように頬を赤らめた。

「演舞集団『北大街』です」

「プロモーションですか?」

「ハハハ、芸術の事は分かりませんが、良し悪しは分かります、これはというものに肩入れして……まあ、趣味のようなものなんですが、あ、ちょうど出番だ。わたしのイチオシです、観てやってください!」

 ステージは満州を思わせるような平原のホログラムを俯瞰している。

 徐々にカメラが下りてくると、二組の鉄路が見えてくる。

 アップになって来ると、上りと下りから列車が走って来る。

 アジア号だ。

 シュッシュッシュッシュッシュッシュッ……

 長距離ランナーの息遣いを思わせる蒸気音がし始め、列車が交差したところで最大になる。

 ポオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 二編成の列車が汽笛を鳴らしてすれ違う!

 満鉄の列車は編成が長い。

 二十秒ほどたっぷりとアジア号の豪快さを堪能させてくれて、すれ違った瞬間、踊り子が現れた。

 踊り子は蹲っていて、遠のく列車の音に反比例して身を起こしていく。

 その姿は、蒸気機関車をモチーフにした黒い意匠で、要所要所に金筋や赤線が走っている。

 まるで、アジア号がすれ違うことで産み出した蒸気機関車の妖精のようだ。

 列車の遠のく音は、しだいにドラムのトレモロのように大きく忙しくなってくる。

 それに合わせて、踊り子は、ステップを踏み、旋回し、大地を寿ぐような笑顔を振りまきながら、フリの大きいダンスパフォーマンスに昇華していく。

「見事ですね……」

 お世辞でなく、コスモスが感嘆する。

 

 これは……見た事がある……

 

 いや、見た事があるどころではない。

 身体の奥の方からこみ上げてくるものがあって、体が踊り子と同じリズムを刻んでしまう。

 タン タタタン タン タタタン タタタタタン……タン タタタン タン タタタン タタタタタン……

 これは、このわたしのボディーがJQであったころの。

 いかん、よほど抑制しなければ、自分がステージに上がって踊り出しそうだぞ(;゚Д゚)!

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

 

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ライトノベルベスト(前しか向かねえ!)

2021-07-27 05:39:52 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

しか向かねえ!』  




「……前しか向かねえ!」

 如月(きさらぎ)先生は、そう言った。

 なんで、こんな時に思い出すんだ……。

 いや、これでいい。今は闘志を持った方が負ける。大久保准尉が……あの、いつも冷静な大久保准尉が闘志を漲らせ、窪地から飛び出した瞬間額を打ち抜かれ、事実上小隊が壊滅したときに、そう感じた。

 ヤツは、こちらの闘志を読んでいる。殺気と言ってもいい。自分達遊撃特化部隊は、その殺気を殺しながら敵に接近することは学んでいたが、攻撃の瞬間は殺気に満ちる。その一秒にも満たない時間でヤツは、こちらを補足し、照準を決め、決めた瞬間トリガーを引いている。もう六人がこれでやられている。

 小隊で生き残っているのは自分一人だ。

 当たり前なら投降する。

 単位としての小隊が壊滅したのだから、たった一人生き残った自分が取るべき道は、これしかない。
 しかし、相手は投降など受け入れずに撃ち殺すだろう。奴らに軍事国際法や交戦規定は通用しない。

 それに相手もヤツラではなく、ヤツになっている。

 我々だって、無為に壊滅したわけじゃない。相手の小隊をほぼ壊滅させて、ヤツ一人になった。もう一対一。殺すか殺されるかしかない。

 自分達が、政府の決定を批判することは許されない。しかし、政府はこの期に及んで及び腰だった。

 島を占拠したのは、三個中隊に満たない。西南遊撃特化連隊の全力で攻撃していたら、ものの三十分で奪回できていただろう。

 政府は世論を気にして、一個中隊で攻めさせた。

 そしてその犠牲の上で敵の実勢力を知ってなを、政府は、同勢力の三個中隊の出撃しか認めなかった。トラップとスナイパーのために、三個中隊は全滅した。もっとも敵も一個小隊ほどに減ってはいた。連隊長は、これ以上の犠牲を出さないために連隊全ての出動を具申したが認められなかった。

 で、我々の一個小隊が、送り込まれた。三時間がたって、ヤツと自分の二人になった。

 で、如月先生の言葉が蘇った。

「……前しか向かない!」

 如月先生は、興奮すると、言葉の頭にくる「お」の音が消えてしまう。だから、正確には、こう言った。

「お前しか向かねえ!」

 自分が、まだ一人称を「あたし」と言っていた高校三年生。勉強ができないことと、家の貧しさから就職するしかなかった。「あたし」の取り柄は、皆勤であることと。頭は半人前だけど、体で覚えたことは忘れない。だから体育の成績だけは良かった。人付き合いも苦手で、高校の三年間BFはおろか、同性の友達も居なかった。こんな「あたし」が受けて通るような企業は無かった。

 で、最後に残ったのが自衛隊だった。

 むろん筆記試験もある。如月先生は二か月かけて、過去五年分の採用試験を繰り返し「あたし」にやらせた。幸いなことに、自衛隊は、その年から適性試験をやるようになっていた。体では負けない。そして合格し五年後の今、この南西諸島の小さな島の窪地……いや、いつの間にか薮に隠れていた。頬に冷たいものが触れた。小隊長のテッパチだ。テッパチの中は左半分が吹き飛ばされた小隊長の顔が入っている。

 その時、風の向きが変わった。こちらの臭いがヤツの方に流れていく。しばらくは小隊長の血の臭いに紛れるだろうが、時間の問題だ。

 考えなかった。訓練でやった様々な事が、組み合わされ、最後のピースがはまった。

 小隊長のテッパチに照明弾を挟み込み、点火と同時に進行方向に投げた。ヤツはイメージ通り、投げた逆の方向を掃射した。自分はテッパチの方角に進み、ヤツのシルエットに銃口を向けた。

 ヤツの正体が分かった。自分はわずかに急所を外してトリガーを引いた。5・5ミリだから貫通銃創だろう。

 舌を噛みきらないように、スカーフで猿ぐつわをし、敗血症にならないように、抗生物質の注射をしてやった。出血とショックで、ヤツは朦朧としていたが念のため手を縛着し、ズボンを足許まで引き下ろしておいた。

「A島攻略隊ブラボーワン。敵の殲滅を確認、腹部貫通銃創の捕虜一名を確保しあり。撤収支援を要請。オクレ」

 通信は、暗号に圧縮され、二十海里離れた護衛艦に届いた。自分はそれまでの三十分ほどを、敵の自分と対峙しながら、待った。

「……前しか向かねえ」

 弱った敵の自分は、怪訝な顔で自分を見ていた……。

 

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ホリーウォー・17[ヒナタとキミの潜入記・5]

2021-07-27 05:26:32 | カントリーロード
リーォー・17
[ヒナタとキミの潜入記・5] 



 シンラ北京教官区の孫潤沢は、いつものように司祭補とは思えぬ安物のスーツを着て、教会までの三キロを歩いていた。

「ムキキーー! どこ見て歩いてんのさ!」

 歩道の先で、猿のように喚いている若い女が目についた。女の目の前には、五十がらみの、いかにも流民という感じの痩せぎすのオッサンがはいつくばっている。

「悪気はないんです、お嬢さん。山東の田舎からきて間が無いもので、職業紹介所を探して歩いていたんです。お嬢さんにぶつかろうなんて気持ちはなかったんです。ほんとうです、許してくださいよ」
「ふん、山東の田舎者が! 北京に来るんだったら、都会の礼儀をわきまえることね、安物スマホのナビなんか見ながら歩いているから、人にぶつかったりするのよ。なによ土下座なんかして。ああ、田舎くさくて嫌だ! だれか、百元あげるから、この田舎者張り倒してよ!」
 
 女は百元札をヒラヒラさせながら、流れ歩く通行人に呼びかけ始めた。ニヤニヤ笑っていく者、関わりになりたくなくて無視していく者が多かったが、しだいに女とオッサンの周りに人垣が出来始めた。

「ようし、その百元はオレがいただく。オッサン覚悟しな」

 ヒョロリとした公務員風が前に出た。公務員風は、オッサンを回し蹴りにしようとして、片足を上げて勢いをつけようとしたところ、公務員風は、足をひっかけられて、みっともなくひっくり返った。

「みっともない真似するんじゃないよ!」

 若い女が、立ちはだかっていた。
 
「今の、動画に撮ってSNSに流したからね。二人ともIDパス入れっぱなしだったから、それも写ってる。女、あんたは国営鉄道北京局長の副社長、オニイサンは……あらあら、こともあろうに労務安定局の役人さん。その顔は、現場で上司から冷遇されてるって顔だね。でも、あんたが助けるべきオジサンに八つ当たりはないと思うよ」
 
 周りの群衆は、それぞれのスマホを出し、画像を検索すると自分たちもうつっていることにびっくりし、急きょ、エリート女と憂さ晴らし公務員を非難し始めた。

「あなた、なかなかやりますね」

 孫潤沢は、啖呵を切った若い女に近寄って声を掛けた。

「わたしも広州からの出稼ぎ。見てられなくて……オジサン、これがさっきの男のIDだから、労務安定局に行ったら見せるといい。今日はきっと仕事が見つかるわよ」
「ありがとうございます!」
 オジサンは、何度も頭を下げて労務安定局を目指した。女は、いつの間にか姿をくらましていた。
「逃げた女は、あんたの画像を加工して……ほら、もうやってしまった。二つの動画、どちらが信用されるでしょうね」
「負けたら、広州に帰るだけ。もし成功したら儲けものぐらいに思ってる。じゃ、失礼します。わたし仕事が終わって帰るところでしたから」
「待って、よかったら、もう少しお話しできないかな。ね、陳明花さん」
「……いけない人。勝手に人のID読み込んじゃったりして」
「君と同じだ。正しい使い方ならOKだと思うよ」

 こうしてヒナタは、習の意に反してシンラへの直接的アプローチに成功した。
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