大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・221『高坂家のファッションショー!』

2021-07-09 13:22:22 | 小説

魔法少女マヂカ・221

『高坂家のファッションショー!』語り手:マヂカ     

 

 

 ファッションショー!? で、再生服なの!?

 

 遊びに来たブリンダがビックリした。

「ああ、そうだ。わたしが着ているワンピースも、ダイニングのカーテンだったものだぞ」

「ちょっと、立ってみて」

「ああ」

「ターンして!」

 ちょっと気恥ずかしいが、ファッションモデルのようにターンしてやる。

「ど、どうだ(#^_^#)?」

 (*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪

 ブリンダだけでなく、霧子やノンコ、メイドや執事たちもにこやかにうなづいている。

「とってもいい! シックな色合いが、これからの季節に合ってる! プラタナスの枯葉の歩道を散歩するのにピッタリよ!」

 シックなのは、日に焼けたカーテンの生地をそのまま使っているからだ。

 ここのところ宿舎でなにやらやっていると偵察。その結果のファッションショーなのだ。

「日露戦争の勝利を記念して屋敷中のカーテンを張り替えた時のだから、丈夫な生地だからね!」

 霧子が、まるで自分のアイデアであったかのように興奮している。

「お嬢様方に着ていただくつもりはなかったんですけどね(^_^;)」

 クマさんが恐縮。

 メイドや執事たちも、同じような再生生地で作ったカジュアルな服を着ている。

 霧子のアイデアで、どうせバレたんだからファッションショーにしようということになっている(^▽^)/。

 

 ワンピースにツーピース、スカートも、フレアやタイトとさまざま。

 男子用も、スーツに仕立てられたものから、カジュアルなブレザーやベストに仕立てたものと様ざま。

 いつもは黒を基調としたメイド服・執事服なので、みんな印象が違う。

 クマさんは、ひざ丈のフレアスカートにボレロ、トモ布で作ったベレー帽は、本人は恥ずかしがっているけど、シックなモダンガールで、銀座を歩いても違和感なく注目の的だろう。

「あなたのは、襟と袖口に赤を……田中執事長はブラウンの別珍でアクセントを……それは、ウエストを絞って、こっちは胸元にアクセントを……」

 指導しているのはメイド長の春日。

「春日さん、指摘が的確ね……」

 ブリンダも感心している。

「春日はね、結婚して銀座で仕立屋さんをやっていたの。旦那さんが亡くなって、お父様がお願いしてメイド長に戻ってきてもらったのよ」

「それで、仕立てのプロなんや!」

 ノンコが感心。春日を苦手にしていたノンコだけど、ちょっと認識が変わるかもしれない。

 そして、本人の春日は「自分のものは自分で作ります」と宣言して、二日でお召しと羽織に仕立て上げた。

「ミセス春日は和裁もやるんだ」

 ブリンダは感心するが、この時代の日本女性は和裁は出来て当たり前だ。

「そうよ、大逆事件(明治末年に起こった、天皇暗殺未遂事件)の後なんか『これからの社会情勢の変化は激しい、女子たる者も、その手に自活の技術を身につけるべきだ』って言った人がいるの。だれだか分かる?」

 知っているけど、わたしは言わない。

 霧子の質問に、ノンコと霧子が腕を組む。

「津田梅子とか平塚らいちょうとか?」

「ううん、徳川慶喜公よ!」

 霧子が溌溂と答える。

 そうだ、慶喜は大正の初年まで生きていて、大逆事件では、ずいぶん過敏に反応していたっけ。

 慶喜の第六天町の屋敷を思い出す。

 敷地こそは広かったが、建物は田舎の分教場のように質素だったぞ。

 明治天皇も「維新の大業は慶喜がいなければ為し難かった」と、宮中に招いて皇后にお酌をさせていた。

 霧子は、そういうことも知っているようだ。

「それでは、手を加えて出来上がったものを着てお買い物に行ってもらいます」

 春日が宣言。

「そして、腕に自信がついたところで、震災被災者の子たちに送る服に取り掛かります」

「え、そうやったん?」

 ノンコが口に出して驚く。

「さすがは春日ね……」

 霧子がやられたという顔をする。

 

 自分たちの再生服を作った後、被災した子供たちの服を縫って世間の役に立つ。

 霧子のお父さんの高坂公が発案者なんだろうけど、それを受けて実行する春日もなかなかだ。

 

 高坂公に報告して公の部屋から出てきた春日を掴まえて褒めてみた。

「春日さん、今回の事、脱帽です」

「いえいえ、こうやって洋服を普及させたら、洋服の仕立屋も、ちょっと息がつけるでしょ」

 霧子に聞くと、春日が嫁いだ仕立屋は、思うように注文が取れずに店を畳んだだそうだ。

 

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

 

 

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ライトノベルベスト『チョイ借り・2』

2021-07-09 06:44:08 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『チョイ借り・2』  




 オレは、もともと律儀で行儀が良い。

 素行と勉強の悪さは学校に問題がある。

 言い出すと切りがないので、ダブったけど、無遅刻無欠席だったとだけ言っておく。

 日の出と同じくらいに起きると、セミダブルのベッドで、チイコが、これでも女かという姿で寝ている。

 ゆうべのチイコの激しさは、どこか贖罪めいた感じがした。ダブった責任の何パーセントかを感じているようで、イタしている最中も「ごめんね」を連発していた。

 たしかにチイコたちとは、よく遊んだ。しかしダブったのは自分の責任。チイコは、そういう「ごめんね」という構え方でオレに好意をもってくれている。可愛いヤツだとは思う。

 だが、この寝姿。

 開いた脚を閉じてやり、ずり落ちた布団を掛け、衣類一式をたたんで枕許に置いてやる。まあ、目が覚めるのは、二時間はかかるだろう。それまで軽く片づけし、朝ご飯の用意をしてやろう。部屋を貸してくれたチイコのオジサンへの礼儀。

 で……服を着てブッタマゲた。

 なんと、畳一畳ほどの玄関ホールにオレンジ色のチャリが居た。靴を脱ぐとこだけでは収まらないので、前輪がホールのフローリングの上に乗っかっている。

 おかしい。二つの意味でおかしい。

 第一に、夕べ不法駐輪のとこに置いてきたはずのチャリが、ここにあるのがおかしい。

 第二に、起きてざっと部屋を見渡したときには、ホールにチャリは無かったぞ。

 チイコを見苦しくないようにして、オレ自身が身繕いをしている間に現れた……なんだか気を遣った現れ方だ。

「そう、気をつかったのよ」

 ……自転車の方から声がした。マイクか何かが仕掛けてあって、誰かが喋っている。ひょっとしたらカメラなんか仕掛けてあって、夕べのチイコとのことが……。

「そんな悪趣味じゃないわよ」

「だ、誰なんだ……!?」

「わたし、わたしよ。オレンジ色の自転車」

「自転車が喋るわけないだろ……だれなんだよ、こんなイタズラすんのは」

「カタイ頭ね。じゃ……じゃ、これで喋りやすい?」

 自転車の姿がボンヤリしてきたかと思うと、二三秒で、オレンジ色のセーラー服の女の子に変身した。

「これなら、喋りやすいでしょ」

「お、おまえ……」

「さあ、だれでしょ?」

「わかんねえから、聞いてんだ(;゚Д゚)」

「わたしも、よく分からない……ほんとだよ」

「おまえ、人間か?」

「さあ……」

 その子は、どうでもよさそうに首を捻る。

「ざけんなよ。夕べからそこにいたのかよ」

「そんな不躾な。ちゃんとチイコちゃんにお布団かけて、ナオキが着替えるの待って、ここにきたの。それまでは、あの自転車置き場。チイコちゃんが優しくしてくれたんで、どこも傷つかずにすんだ。ナオキは、わたしのこと放り投げるつもりだったでしょ」

「おまえ……自転車か?」

「さあ……ま、昨日ナオキが拾って、乗っけたの覚えてるから、有る意味自転車であることはたしかでしょうね?」

「それが、人間に姿変えて現れたってか。安出来のラノベみたいだな」

「わたし、半分てか、何割かは人間、話すの面倒だから、そこのパソコン見てくれる」

 パソコンが勝手に起動して、新聞みたく、文章と写真がでてきた。

「鈴木友子、急性劇症肝炎で死亡……通夜、告別式……昨日葬式だったんだ」

「うん、ナオキが拾ってくれたころ、友子は火葬場で骨になっておりました」

「で……友子の愛車……って、オレンジのチャリじゃん!」

「うん。なんだか、友子と自転車がくっついたみたいで。両方のタマシイがくっついて、こうなっちゃった」

「……おい、住所とか、学校出てこないじゃないか」

「出てきたら、どうするつもり?」

「むろん、友子の形見だから、友子の親に返さなくっちゃ」

「アハハハ……」

「なにがおかしいんだよ!」

「わたし、チョイ借りよ」

「だからさ、そういうイワクのある物なら返さなくっちゃよ……」

 オレは、マジになって、パソコンの画面をスクロールした。

「あのね、反対、反対。わたしがナオキをチョイ借りしたの」

 なんだって……。

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コッペリア・48『栞と颯太のゴールデンウィーク⑨』

2021-07-09 06:31:52 | 小説6

・48

『栞のゴールデンウィーク⑨  

 



 関西旅行の二日目は、もう一人の颯太のことは忘れて大阪の名所を回ってみることにした。


 梅田はパスした。

 大阪まで来て東京の繁華街と変わらないところに行っても仕方がない。

 一見俗なようだが大阪城に行ってみた。

 規模的には皇居と変わらないが、ここには深遠なよそよそしさが無い。

 例えば半蔵門前や、皇居前広場でむやみに地図を広げてキョロキョロしていると、すぐにお巡りさんの職質をうける。むろん二重橋から中に入るなんて、正月や天皇誕生日を除いてはあり得ない。

 その点、大坂城は、あくまでも市立の公園なので、どこへ行こうと自由である。セラさんなどは日本一の大手門に少したじろいだ。外人さんがいっぱいだったけど、東京の名所も似たようなものなので気にはならない。

「皇居だったら、絶対皇宮警察がいて、こんなとこ立ってたら職質ね……」

「それは覚えのある言い方だな」

「フフ、まだ男だったころにね、彼女が皇居見たいっていうもんだから。天然の女って怖いもの知らずだからね」

 なんだか、皇居の二重橋を堂々と渡るようで妙な感覚で二の丸へ進み、西ノ丸公園で、ひたすらボンヤリした。

 連休だけど大阪城はメジャーすぎて、かえって観光客は少ない。

「フウ兄ちゃん、なんか考えてる?」

 栞が空を見たまま聞いてくる。

 昨日の颯太なら、答えように窮したかもしれないが、子どものころからリラックスできた大阪城。

「なあんも……」

 本気でそう応えた。

 それから江戸城にもない巨石の石垣に驚きながら天守閣へ。

「鉄筋コンクリートの天守閣としては、これが日本で一番古い」

 颯太の手馴れた案内。エレベーターで天守の最上階へ、

「程よく大阪の全貌が見える。ハルカスだと遠くまで見えすぎ。神戸や京都まで見えちゃって、大阪が実際より小さくつまらないものに見えてしまう」

「スカイツリーと同じだね。あそこも思いのほかお客さん集まらないんだってね」

「あそこは、料金も高さ以上だからね」

 栞には颯太が、自分でも考えあぐねている問題と重ねて言っているような気がした。

 昼はブッタマゲた。

 

 タクシーで着いたのは、天神橋筋商店街。

「ここ、日本一長い商店街。ほら、北を見ても南を見ても、端っこが見えないだろう」

「なるほど……」

 セラさんは、スマホを出して天六商店街について調べてみた。

「へー、2・6キロもあるんだ」

「ここ読んだ小説に出てくる『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』っていうの。二十メートルに二軒は飲食店が……あるよ!」

 栞もスマホを出して喜んだ。

 ほとんど無意識に入ったお好み焼き屋さんが、全国でもベストテンに入るお店だったので、続いてビックリ。

 それから、日本で一番おいしいといううどん屋さんに入った。入ってから「日本一のうどん屋」で献策すると、大阪のうどん屋さんが五件もヒットしたのには笑ってしまった。

「これで、まだ半分なんだ」

 そう気づいたのが天満宮への参道への横道だった。日本で一番気さくな天神さん。お守りを一つずつ買った。

 三時には、道頓堀に。

 人で一杯だったけど、颯太の説明では、ここはいつ来てもこんなものらしく、懐の深そうな……よく見ると通りのほとんどが多種多様な食べ物屋さん。

「引っかけ橋に行こう!」

 セラさんの事前情報で戎橋へ。

「なんだ、みんな鵜の目鷹の目でナンパしてんのかと思った」

 思いのほか(大阪としては)静かだった。

 振り返るとゴール寸前のランナーのようなグリコの看板。

 三人かわるがわるにグリコマンの真似して写真を撮る。

「すみませ~ん、シャッター押してもらえますか(^▽^)」

 同じく三人連れの観光客にお願いし、最後に三人でグリコマン。

 あたしと、フウ兄ちゃんのゴールはどこにあるんだろう……そう思う栞だった。


 

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