大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・51『天孫降臨と二つの恋・2』

2021-07-25 09:15:34 | 評論

訳日本の神話・51
『天孫降臨と二つの恋・2』  

 

 

 猿田彦は天狗のように描かれることが多い国津神です。

 手塚治虫の『火の鳥』ではアトムのお茶の水博士のように描かれています。石ノ森章太郎の『古事記』では猿の惑星のキャラのように描かれています。

 異形の神さまではありますが、生命力が溢れているように感じます。豊芦原中つ国が豊かで生命力に溢れていることの表現かもしれません。

 猿田彦を目にしたニニギノミコトはタヂカラオの肩に乗ったまま訊ねます。

「おまえは、いったい何者だ?」

 猿田彦は高千穂の峰に怪しげな神さまの一団が現れてきたというので偵察に来たのに違いありません。

 大魔神のようなタヂカラオ、その肩にチョコンと乗った少年ニニギノミコト、その横には大賢人のオモヒカネ、勇士イシコリドメ、アメノイハトワケ、魔導士フトダマ、錬金術師タマノオヤ等々。

 まるで、オンラインRPGのギルドの一団のようです。

 それまで豊蘆原中つ国を縄張りにしていた中つ国ギルドとしては、問いただすのは猿田彦の方です。

 ところが、猿田彦は蹲踞して、こう述べます。

「これは、中つ国の国津神の猿田彦であります。高千穂の峰に尊い神さまが降り立たれたというので、道案内のため、お迎えにあたった次第であります」

 神話的には、ニニギの一団にえも言えぬ神々しさを感じて恐れ入ったということになっています。

 

 でも、この神さまギルドの中にアメノウズメがいたのですなあ(^_^;)

 

 ウズメは天岩戸でR指定のダンスを踊って、神さまたちを魅了しただけでなく、アマテラスにさえ「何事が起こったの!?」と岩戸を少し開かせるぐらいの魅力があります。

 現代では、芸能の女神様になって、京都の車折神社をはじめ彼女をご神体にする神社がいっぱいあります。

 猿田彦は、この日本史上初のアイドルに心を奪われたのでしょうねえ。

 ニニギノミコトは「じゃ、この高千穂の峰に最初の宮殿を建てるよ」と宣言します。

「え、こんな山の上にですか?」

「うん、ここからはグーグルアースみたいに中つ国が見えるし、韓の国も望める。朝日も夕陽もめちゃくちゃ綺麗だろうし、ここにするよ」

「そ、そうでありますか(^_^;)」

「だからさ、もう帰ってもいいよ。ぼくが、ここに留まると分かったら、中津国のみんなも安心でしょ(^▽^)」

「は、それは、たしかに……」

「ウズメ、猿田彦を送ってやってくれる(*^^)v」

「え、わたしがですか!?」

「まずかった?」

「え、いえ、そんなことは(n*´ω`*n)」

「えへへ、ま、そういうことで」

「かしこまりました!」

 

 ニニギは分かっていたのです。

 猿田彦がウズメに一目ぼれして、ウズメも猿田彦のことを憎からず思っていたことを。

 見かけは少年ですが、なかなか大人の感覚。さすがはアマテラスの孫であります。

 こうして、ウズメは猿田彦とともに中つ国に向かい、中つ国の神々から『猿女の君』と呼ばれるようになり、めでたく芸能の神さまになったのでありました。

 

 次回は、天孫降臨、もう一つの恋に突入いたします♪

 

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ライトノベルベスト『連続笑死事件・笑う大捜査線・2』

2021-07-25 07:04:44 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『連続笑死事件・笑う大捜査線・2』  

 



 次々と起こる笑死事件。確たる死因が掴めぬまま、その規模は世界的になってきた。

 死因が分からないので、殺人事件とは呼べず、特捜本部は『連続笑死事件』と呼ぶしかなかった。この屈辱的な捜査本部の看板を忸怩たる思いで見つめながら、たたき上げの倉持警視は解決への意志を固めつつあった。そうして、世間は、いつしか、この特捜本部のことを『笑う大捜査線』と呼ぶようになった。

 編集長はパソコンの画面を見ながら父の顔も見ず事のついでのように言った。

「先生の感覚には、今の子はついて来れないんですよ。もっとダイレクトでビビットなもんじゃないと」
「しかし、それでは、子供たちに本を読む力が付かん」
「教育図書出してるわけじゃないんですからね、そういうのはよそでやってくださいよ。とにかく、この販売部数では、次の仕事はお願いできません」
「読者は育つものだ。もう一年続けさせてくれ。必ず部数は増える」
「ま、そういう読者が現れたら、またお願いしますよ」
 
 この言葉が合図だったように、バイトのKがドアを開けた。

「これが、今の出版業界だ。よく分かったら、もう作家になろうなどとは思うな」
 悪い右足を引きづりながら、父が言う。
「肩に掴まりなよ、お父さん」
「作家は、両足で大地を踏みしめながら進むもんだ。地に足の着いた本を書かなきゃいかん!」
 そう言って、父は転んだが、娘が差し出した手を払いのけ、駅へと向かった。

 ほどなく父は不遇のうちに逝ってしまった。

 娘は、その後5年間消息不明だったが、昨年『素乃宮はるかの躁鬱』で、ラノベの世界に登場した。自分を高く買ってくれるところなら、どこの版元の本でも書いた。

 ただ、父をソデにしたK出版を除いて。

 おかげで、業界トップに君臨していたK出版は三期連続の赤字を出し、親会社のK総合出版はK出版を整理にかかり始めた。
 そこに、その超有名作家になった娘から連絡があり、ほいほい乗った編集長と元アルバイターは、証拠も残さず、死因も分からないまま殺された。

 娘は、父の作品をコンピューターで徹底的に解析し、笑いの要素を抽出した。それを組み合わせ、対象に合わせた話を作り、この世に生きる値打ちがないと判断した相手に次々と送りつけた。メールにしろ手紙にしろ、相手が目を通した後は消滅するか、まったく別の文章になるようにした。この仕掛は、アメリカのCIAの元職員から、身の安全を保証する工作をすることを代償に教えてもらったものだ。
 ただ、彼は、最後の部分を教えるときにリストを渡した。
「こいつらを始末してくれること」
 それが元で、世界中で『笑死事件』がおこることになったのだ。

 科捜研の石川奈々子は、H氏を笑死させた手紙の紙の出所をほぼ突き止め、明日は倉持警視に報告できるだろうと思い、科捜研のCPUに解析を任せ、久々に定時に退庁した。

「ねえ、石川さんでしょ?」
 小学五年生ほどの女の子が近づいてきた。
「そうよ、なにかご用?」
「実はね……」
「ハハ、なにそれ?」
「とにかく、伝えたからね」

 それだけ言うと女の子は行ってしまった。

 そんなことが四回続いた。四回とも違う女の子だ。さすがに笑死事件との関連を疑ったが、いっこうに自分は死なない。
 そのかわり、科捜研のCPUのキーワードを四回目に喋ってしまったことには気づいていなかった。キーワードは、四人目の女の子の肩に留めておいたてんとう虫形のマイクで拾われ、役割を終えたマイクは、ポロリと地面に落ち、折からの竜巻警報の風で、どこへともなく飛ばされていった。

 奈々子は、地下鉄のホームに降りて電車を待った。

 先に下りの電車がやってきた。その発メロを聞いたあと、上りの着メロがして、奈々子は電車に乗って、発メロを聞いてしまった。

――しまった――

 そう、思ったとき、奈々子は爆笑してしまった。慌てて耳を押さえたが手遅れであった。偶然居合わせた医者が、手を尽くしたが、次の駅に着いたときには、奈々子は体をエビのように丸め、涙と涎を垂らした爆笑顔のままこときれていた。

「すまん、石川君。しかし、君の死は無駄にしない。手がかりは残してくれたからな」

 手がかりとは、科捜研のCPUではない。キーワードを知られた時点でバックアップごと消されている。

 四人の小学生を目の前に、ため息をつく倉持警視であった……。
 

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ホリーウォー・15[ヒナタとキミの潜入記・3]

2021-07-25 06:53:10 | カントリーロード
リーォー・15
[ヒナタとキミの潜入記・3] 



 幹部食堂からラウンジに移動するのに一週間もかからなかった。

 同じ広州人……という触れ込みなので、広州出身の林息女チーフの推薦も楽にとれたし、なにより、食堂に通ってくる上級将校たちの目に留まった。
 
 食堂とラウンジは大違いだった。食堂は一応軍の規律の中にあり、兵士下士官用のそれとの違いは席がゆったりしていることと、セルフサービスでないことぐらいで、将校たちもハメを外すこともなかった。

 しかし、ラウンジ、特に賓席と呼ばれる特別なところは、将官クラスと将来を約束された佐官たちのハーレムであった。

 日本で言えば、銀座の一流クラブ並の設備とサービスだ。
 
 扱いには二種類ある。統一中国であったころからのエスタブリッシュメントと、分裂後の成り上がり。それぞれに合った応対ができなければ、このラウンジでは務まらない。
 
「今の大佐、おさわりばっか。典型的なスノッブね」
 開花に擬態しているキミは、きれいな北京語でグチる。
「漢はまだまだ発展する。もうしばらくは、ああいう奴の力も必要だからね。でも、再び統一が実現すれば、真っ先に粛清されるな」
 日本酒をあおりながら、習平均中佐は呟く。
 
 階級は一つ下なだけだが、さっきの大佐より十歳も若い。旧統一中国時代からの太子党に属するエリート軍人だ。
 
「習さんは、日本酒しか飲まないのね」
 明花に擬態したヒナタが、五杯目の杯を満たす。
「わたしは日本酒を飲み漢は日本を飲む。わたしは、日本の総督になる。わたしは日本が好きだ。あの洗練された伝統と技術革新の両立はとても魅力的だ」
「そうね、習中佐の冷静さは、日本でも十分通用しそうですものね」
「中国の大胆さと、日本の技術革新で、新しい国家像を作っていく」
「そう簡単に、二つの文化が融合されるかしら」
「ハハ、わたしは、君のそういう簡単に迎合しないところが好きだ。君の言う通り、このままではダメだ。日本が、あんなちっぽけな国なのに、極東戦争で屈服しなかったのは、いったん国難があれば団結する民族性にある。我々は極東戦争で、その日本の民族性を呼び覚ましてしまった。その表れがヒナタだ。自立し思考学習する最終兵器」
「爆発したら、全人類が滅びてしまうほどの怖いものだってうかがってますけど」
「それも、この漢に潜入しているとか……」
「威嚇だよ。ヒナタを自爆させたら日本も無事じゃ済まないからね」
「なるほど、そんなに怖がらなくてもいいんだ」
 開花がほっとしたように言って、わずかにすり寄ると習の手が自然に肩に周る。
「日本から学ばなければならないのは、あの民族性だ。自分のことや身内の利益では動かない。最後は民族や国家のために一致団結する、あの民族性。それを切り崩しながら我々漢民族の国民性を変えていく……そうしなければ、この大陸国家は分裂したまま衰退していく」
 明花が、空いた杯を足そうとすると、習は杯を伏せ、開花に周した手を戻した。
「今夜は飲み過ぎた。これ以上飲んだら、自分の目的と幻想の区別がつかなくなる」
 
 ドゴゴーーーン
 
 くぐもった地響きがして店が揺れた! ガチャンガチャガチャ パリン ガチャン 棚やカウンターに載っていた酒瓶やグラスが落ちて粉々になる。
 
 キャーー(# ゚Д゚#)!!
 
「怪我は無いか?」
 
 揺れが収まると、中佐は二人を気遣い「大丈夫です」の返事を聞いてから窓辺に寄った。
 
「筋向いのビルが崩れたんだ……」
「テロかなんかですか!?」
「ちょっと見てくる」
 
 習は落ち着いて様子を見に行った。
 店内も通常営業のできる状態ではなかったが、習のように外に出るもの少なく、大方は窓辺近くに寄って様子を窺うばかりだ。
 
 息女がホステスと客にけがの無いことを確認し終わったころに習が戻ってきた。
 
「爆発があったわけではないようだ、おそらく革命前に手抜き工事で建てられたビルのようだね。なに、このビルは革命後の政府直轄の建築だから大丈夫さ。ママ、今日は帰るよ」
 
 それだけ言うと、律儀に勘定を済ませて帰って行った。
 
 明花に擬態したヒナタは、習は使えると思った……。
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