大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・90『在原業平の高安の恋』

2021-07-26 14:56:06 | ライトノベルセレクト

やく物語・90

『在原業平の高安の恋』    

 

 

 在原業平は知らなくても桓武天皇は知ってる。

 だよね、鳴くよウグイス平安京! ⇒ 794年平安京遷都!

 日本史年代語呂合わせの一番にくるあれだよ、あれ(^▽^)!

 その桓武天皇のお孫さんなんだから、すごいと思わない!?

 こんなのもある。

 

 ちはやふる 神代もきかず 龍田川 唐くれないに 水くくるとは

 

 ね、聞いたことない?

 広瀬すずさん主演の青春映画だよ。

 競技かるたに青春をかける、広瀬すずさん主演の女子高生の映画だよ!

 原作はコミックで、日テレでアニメにもなった!

 シリーズの1を『上の句』、2を『下の句』って付けるのも、おしゃれで気が利いている。

 そのお話に出てくる競技かるた会。

 その開始の時に読まれる和歌がね、この業平さんの『ちはやふる』なんだよ。

 

 よくわからないけど、競技開始の合図みたいに読まれる業平の歌でね、文字通り映画のタイトルにもなっている。

 

 その業平さんの逸話にね『在原業平の高安の恋』って言うのがある。

 業平さんは、800回以上も生駒山を超えて高安に通っていた時期があるの。

 その時、茶屋の辻ってところを通るんだけど、まあ、茶屋の辻だから茶店が並んでたわけですよ。

 そこで休憩してると、時々、すごく可愛い女の子に出会う訳ですよ。

 どうにも可愛い女の子なんで、業平さんは、峠を下りてくる時には、もう意識してしまって「ああ、あの窓がある茶店なんだなあ(n*´ω`*n)」てなわけです。

 でも、業平さんは桓武天皇の孫だけあって「ねえ、ちょっとお茶しない(^^♪」なんて気安くナンパなんてしないわけです。

 月に何度か、生駒山を超えて茶屋の辻が見えてくると「ああ、今日はあの娘に会えるかなあ(〃´∪`〃)」と楽しみにして、運よく会えたりすると嬉しいわけです。

 やっと、その娘の茶屋が特定できると「あの娘がオーダー取りに来てくれないかなあ( #´艸`#)」と期待に胸を躍らせるわけです。

 身分が高いけど、謙虚で、イケメンなのに奥ゆかしい!

 そんなことを何十遍か繰り返して、やっと口がきけるようになると、女の子も業平さんを意識するわけですよ。

 そして、茶屋の辻だけじゃなくて、高安の郷全体で噂になったりするんです。

 

 そんなある日のこと、業平さんが峠を下って、茶屋の辻が見えるところまでやってくると、茶屋の二階の窓が開いていて、女の子の姿が見えたんです。

「あ、今日もあの子に逢える(n*´ω`*n)」

 期待に胸を躍らせると、なんと、その子は食事中。

「え、あれが、あの娘か……?」

 お店で顔を合わす時の感じとはぜんぜん違うわけですよ!

 だらしなく背中を丸めて、立膝なんかもしてて、ビックリするくらい大きな口を開けて、山盛りのご飯をバカバカ食ってるわけですよ!

 それで、百年の恋も覚めてしまって回れ右。それ以来、業平さんは茶屋の辻には立ち寄らなくなった。

 その時の二階の窓が東向きだったもので、高安の郷では東側には窓を付けなくなったという言い伝えがあるのです。

 

 なるほど、含蓄のある話です。

 

 ジリリリン ジリリリン

 感心していると、机の上の黒電話が鳴ります。

「もしもし」

 二丁目地蔵さんかな?

「もしもし、やくもです」

 受話器を取ると大当たり。

『二丁目地蔵です、シラミ地蔵さんの件、ありがとう』

「いえいえ、わたしも楽しかったし、ためになりましたし、こちらこそ」

『そう、それは良かった。ねえ、百人一首やりませんか』

「え、百人一首ですか?」

『うん、チカコも元気にしてるかなあって思うし、お茶しながら百人一首のかるた会。いかがかしらあ(^▽^)』

「あ、いいですね! 二丁目まで伺えばいいんですか?」

『いえいえ、それじゃ時間がかかるわ。わたしの方から伺います♪』

「あ、でも……」

 うちは無駄に広いから、カルタやるくらいの部屋はいくつもあるんだけど、家の者に見られるのはまずい。

「お世話になってるお地蔵さんです」なんて紹介したら、みんな腰を抜かしてしまう。

『机の上よ、やくもの(o^―^o)』

「わたしの机?」

『チカコのために、いろいろ揃えてくれてるじゃない。そこでやったら楽しいと思うの。やくもも1/12サイズになってね♪』

「ア、楽しいかも!」

『じゃ、今から行くね』

「あ、五分ほど待ってください(^_^;)」

『どうして?』

「かるた会に相応しいセッティングしますから」

『おお、それは楽しみ。じゃ、五分後にね(^^♪』

 

 よーし!

 

 1/12情景セットのあれこれを並べてみるわたしでした(o^―^o)。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸

 

 

 

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ライトノベルベスト『連続笑死事件・笑う大捜査線・3』

2021-07-26 07:11:31 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『連続笑死事件・笑う大捜査線・3』  

 



 次々と起こる笑死事件。確たる死因が掴めぬまま、その規模は世界的になってきた。死因が分からないので、殺人事件とは呼べず、特捜本部は『連続笑死事件』と呼ぶしかなかった。この屈辱的な捜査本部の看板を忸怩たる思いで見つめながら、たたき上げの倉持警視は解決への意志を固めつつあった。

 そうして、世間は、いつしか、この特捜本部のことを『笑う大捜査線』と呼ぶようになった。

 犯人は重大なミスを犯した。メッセンジャーに使った子供たちに顔を晒してしまったのだ。 

 むろん子供たちはマインドコントロールされ、暗示もかけられているので、当たり前に聞いては四人それぞれの「犯人の特徴」を言う。それも、聞く度に、その特徴が変わる。
 逆に言えば、そのマインドコントロールと暗示を解いてやれば、子供たちは正確な犯人像を言ってくれるはずだ。
 倉持警視と鑑識の山本部長は、石川奈々子という身内の犠牲者を出したこともあり、非常な決心をもってこれに臨んだ。

「早くホシを上げなければ、日本の警察の威信に関わります!」

 管理監は、そう吠えたが、要は自分の出世に関わるからである。
 そうこうしている間に、しだいに子供たちの暗示が解け始めてきた。

「ちょっと手荒だけど、動き出さなきゃならないわね」

 警視庁の脇を法定速度で走りながら、女は、そう呟いた。

 車の中には、子供たちの脳波を検知するためのパソコンが置いてある。測定機は、子供たちの髪の毛に結びつけてある。髪の毛にそっくりなので、結びつけた髪の毛が抜けない限り有効である。
 それが、もう限界に近いことを示している。むろん簡易な変装はしているが、鑑識の山本にかかれば、半日で正体を見破られてしまうだろう。
「もう、これまでね」
 そう呟くと、女は眼鏡をかけただけで、警視庁に乗り込んだ。

「もしもし、どこの部署にご用でしょうか?」

 案の定、エレベーターの入り口で、警戒の警察官に声をかけられた。女は一枚のカードを警官に見せた。
「ああ、どうぞ、五階です」
「誤解ですね」
 誤解がキーワードの一つであった。「五階」と「誤解」は微妙にアクセントが違う。言われた本人も気づかないほどに。そして、もう一つ「交代」という言葉を聞くと、この警官は笑い死ぬ。

 五階につくと、特捜本部まで行くのに二度誰何(すいか)され、二度、さっきと同じカードを見せ、通過した。
 二人目までは、交代の時に死ぬはずである。三人目は若い女性警官であった。たまたま、妹に似ていた。

「ありがとう、婦警さん」
 女性警官は可愛く笑った。
「いまどき、婦警なんて言う人いませんよ」
「そうね、でも、わたし『婦人警官』て、言い方好きなもんで。母はそう呼ばれてましたから」
「お母さん、婦人警官でらっしゃったんですか!?」
「ええ」
「じゃあ、もっともですね」
 これで、この子は昏睡のあと、少し記憶障害が残るだけですむ。

 特捜本部に入ると、女はすぐに小さなヘッドセットを着けた。これでこの部屋中に声が届く。

 女は、最初のカードを読み上げた。部屋の全員がクスクス笑い出した。倉持警視は、密かにイヤホンを両耳につけた。
「ハハハ、そいつが被疑者だ、確保しろ。ハハハ」
 まだ、症状の軽い倉持警視が言った。
 ニコニコした若い刑事が三人やってきた。女はすかさず、次のカードを読み上げた、マイクを外して。
 三人の若い刑事は大爆笑し、床に倒れ痙攣し始めた。
「この三人は、四十秒で死ぬ。次は、あなたたち」
 女は再びカ-ドを読み上げた。特捜本部のほぼ全員が大爆笑になり、床をのたうち回った。

「なぜ、あなたたちには効かないの……」

「だって、面白くないもの……」
 そう答えたのは管理監だった。女は思った。こいつは日本語の機微が理解できないインテリバカだと。すかさず、カードを英訳して言ってやると、管理監は見事に即死した。

「そこまでだ!」

 倉持警視が、叫んだ。

 外で大勢の人の気配がした。同時に倉持警視がピストルを撃った。女は、かろうじてかわしながら、マイクをスワットの無線にリンクさせ、カードを読み上げた。とたんに外で大爆笑が起こり、人がどたどた倒れる音がした。

「ど、どうしたんですか!?」

 さっきの女性警官の声がした。女はドアに向かい「交代」と叫んだ。痙攣したような笑い声がして、気配が消えた。

「無益な殺生しやがって!」
 倉持警視の怒声続いて、銃声がした。
「スワットは死んだけど、あの婦警さんは昏睡しているだけよ。それにしても、あなたには、なぜ効かないの!?」
「オレは、洒落の分からん男でな!」
 倉持警視は、一気に間合いを詰めてきた。女はパソコンのケーブルを思い切りひっぱり、倉持警視はそれに引っかかって、ドウと倒れ、イヤホンの片方が外れた。
 女は素早く、それを奪うと、倉持のピストルを持った手を踏みつけた。
「なるほど……翻訳機か。日本語が英語で聞こえるのよね。そっちのエライサンとは反対か」
「一つ、教えてくれないか。お前さん自身は、なぜ死なないんだ……」
「作家はね、自分の言葉に愛情を持ってるのよ。その愛情を注いだ言葉で死ぬわけ無いでしょ」
「でも、生かしておくわけにもいかないな」
「どうぞ……」
 女は、倉持の手を踏みつけた足を緩めた。すかさず倉持警視は、しびれる手でピストルを撃った。
 弾は女の胸を貫いたが、死ぬまでには至らなかった。
「最後の一枚、お父さんのギャグ……」
 女は、苦しい息の中で、その短いギャグを読んだ。そしてニッコリ笑ってこときれた。
 倉持警視は、大爆笑の末、二分後に息を引き取った。

 この内容は、女のヘッドセットを通して、彼女のパソコンに送られ、自動的に文章化され出版社に送られた。ただし、殺人ギャグは全て文字化けしていた。
 作品は『連続笑死事件・笑う大捜査線』として出版され、その年のベストセラーになった。

 ちなみに文字化けした殺人ギャグは以下の通りである。解析すれば、まだ効き目があるかも知れない……。

 !""""#$%&'((()))))=~~^\”%%`@@@_¥♪!""""#$%&'((()))))=~~^\”%%`@@@_¥♪###!!
 
     『連続笑死事件・笑う大捜査線』完

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ホリーウォー・16[ヒナタとキミの潜入記・4]

2021-07-26 07:00:31 | カントリーロード
リーォー・16
[ヒナタとキミの潜入記・4] 



 
 ビルの崩壊の原因は手抜き工事だった。鉄筋が不足していて、一部のコンクリートには海砂が使われていて、不足していた鉄筋の腐食に追い打ちをかけたのだ。
 ただちに、施工業者とビルの管理会社の幹部が逮捕された。
 
 チャンスは意外と早くやってきた。

 例の大佐たちが粛清されたのだ。

 共和国建国に力はあったとは言え、大佐たちは中国の悪い側面を濃厚に引き継いでいた。
 身内に甘く、情実や賄賂で彼らは動いた。
 習平均中佐たちは、地道に彼らの腐敗ぶりを記録していた。
 例の大佐は、軍組織の中では使い走りのトップぐらいの位置で、大佐自身が腐敗の中心に居たわけではない。
 ただ、走り使いは、行った先々で利権をあさっていたので、大佐を粛清することで、彼を便利使いしていた将官クラスの守旧派が芋釣り式に検挙され、将官の半分がいなくなった。
 
 政府は、ビル崩壊の原因に重ね合わせて『組織の腐敗・腐食分子を一掃する』とキャンペーンを張った。
 
 どうやら、旗振り役は習のようであった。
 
 組織と言うものは、たとえお飾りでも階級に見合った者がトップに立っていないと組織は弱体化していく。古くはルーマニアのチャウシェスク、リビアのカダフィ大佐らがそうであった。

 習は大佐に昇進はしたが、軍のトップには、要領が悪く他の将官たちのように身軽に動けず、そのために権力の悪用もできずボンヤリしていた予備役寸前の能無したちを据えた。

「習さんやったわね、おめでとう。これで、このラウンジも習さんみたいな清廉な方たちばかりになって、ダブルスタンダードを使わずにやっていけるわ」
 
 今度の改革で、ラウンジの女支配人になった林息女が、揉み手をして喜んだ。明花のヒナタと開花のキミも表面それに同調した。
 
「息女大姉、悪いが国は、このラウンジを閉鎖する。言い方は悪いが、軍腐敗の温床の一つがここだ。これからは民間の業種の一つになる。高級であることはかまわんが、客は金さえ払えばだれでも利用できるものになってもらう。従って、ここは競売にかけられる。むろん大姉が、その競売に参加することは自由だが」
 
「……分かったわ」
 
 林息女の目には、怯えと野心の両方が光っていた。

 改革没落組の処刑が始まった。

 軍のトップにいた者たちへのそれには容赦はなかった。文官たちは財算没収のうえ免職にしたり、罪に相応な有期刑に処したが、軍人たちは死刑になるものが多かった。ただ、以前のような公開処刑は行わず、刑務所の中の執行室で、医師による薬殺に処された。
 
「死刑は嫌だあ!」
 
 最後まで泣きわめいていた例の元大佐などは、本人にも知らせず精神安定剤ということで薬を投与。眠るように逝かせてやった。

「習さん、処刑者の名前も公表しないのね」

 民間のクラブに変わったラウンジに久々にやってきた習平均に、林息女が先週の天気予報を確認するように聞いた。
 
「軍法会議の決定さ。わたしが決めたわけじゃない。ただ、非人道的な方法がとられなかったことを、わたしは喜んでいる」
 
 あいかわらず日本酒を舐めるように飲みながら習は言った。処刑された者は名前も公表されなかった。かつての職階と罪名だけが官報に出るだけである。日本的な穏便さと言えた。
 
「分かる人にだけ分かればいいのよね」
 
 明花が、拳一つ分開けたシートで言った。横で、開花が微笑んでいる。二人とも習の好みをよく知っている。
 習は、こういうところでもベタベタされることを好まない。
 
「息女大姉、よかったら、この店を買い取ってクラブとして成功した話を聞かせてくれないかな」
 
 習は、こういう逆境から実力で立ち直った者の話を聞くのが好きだ。
 
「大変でしたけど、この陳姉妹の力が大きいんですよ」
「ほう……」
「そんなあ、息女ママの力とねばりですよ」
 
 明花は謙遜したが、習は正確に陳姉妹の力と、クラブの再建に不正じみたことがないことに感心した。

 習は、ヒナタの明花とキミの開花にクラブのホステス以外の力があることを感じ始めていた。
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