大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・50『天孫降臨と二つの恋・1』

2021-07-18 08:44:10 | 評論

訳日本の神話・50
『天孫降臨と二つの恋・1』  

 

 

 ニニギノミコトの天孫降臨には二つの恋バナがあります(#^▽^#)。

 

 アメノウズメ(天宇受賣命)を憶えておられるでしょうか?

 スサノオ(須佐之男命)の乱暴に耐えかねたアマテラス(天照大神)が天岩戸に隠れて世の中が真っ暗になったことがありました。

 真っ暗では、流行り病や災いが一杯起こるので、思いあまった神さまたちは天の安川の河原に集まって対策会議を開きました。

 議長はオモヒカネという老人の神さまで(アマテラスの第一のブレーンで、中つ国を帰順させるため、毎回アマテラスの相談相手になりましたね)、ニニギノミコトが中つ国に降り立つ時には神さま団の団長で付き添っています。

 で、その天の安川の河原で、アマテラスを引き出すためにダンスパフォーマンスをやった女神です。

 戦前の教科書や、戦後の子供向きの本では「アメノウズメが踊った」としか書いていませんが、要はストリップです。

 胸乳(ムナヂ)も露わに、裳(も・スカートの一種)の紐を女陰のところまで引き下げて……動画サイトに上げたら一発で削除されそうなダンスをやったんですなあ(^_^;)。

 刺激的で、現代の感覚ではR指定の代物ですが、神さまたちは明るく大笑いしました。

 現代人なら、真っ赤になって目を伏せてしまうでしょう。セクハラだと訴えられて裁判沙汰になります。

 脱線しますが、古来から日本は性的なものには寛容でした。

 祭りでは、田んぼの真ん中に柱を立てて、藁で作った巨大な女陰と男根をぶら下げます、風が男根を揺らして女陰に入る度に、ワーワーキャーキャーと囃し立てるなんてことをやっていました。むろん、笛や太鼓で囃し立て、お酒も飲んで、とことん発展いたします。中には、選ばれた男女が、みんなが見ている前で本番をいたすこともありました。

 それは、五穀豊穣を祈る神事だったからだ! 常日頃から乱れていたわけでじゃない!

 いえ、今の感覚からは乱れていました。

 以前述べたかもしれませんが、西南戦争において藍郷隆盛が私学党の若者を引き連れて政府軍に夜襲を掛けた時のこと。

 あまりにも息を潜めて真剣に進むのが可笑しくなって、ポツリと言いました。

「まるで、ヨベ(夜這い)のごたる」

 それまで、緊張していた夜襲軍の中で、クスクスと笑い声が上がって止まらなかったそうです。

 夜這いついでに。

 夜這いの末には、女の子のお腹の中に赤ちゃんができます。

 親は、娘に尋ねます。

「腹の子の父親はだれだ?」

 今なら、親の目は怒りに燃えるのでしょうが、親は嬉しそうです。

「えと……太兵衛、治郎作、茂兵衛、弥助、喜六……清八もいたかも(#^_^#)」

 そうして、心覚えのある男たちが集められ、娘は、好きに男を指名します。

 DNA鑑定などありませんから、ほんとうに娘の好み次第。時には親が「○○にしとけ」と言ったかもしれません。

 それで、男は娘の夫になります。

 この、妻問婚と言いますか自由恋愛と言いますかフリーS〇Xと言いましょうか、そういう空気があったわけです。

 これと、五穀豊穣が重なるものですから、イタすことは目出度いことで、アメノウズメのダンスも明るく目出度く、そして、何よりも魅力的だったのです。

 おそらく、神話世界ではアマテラスと並び立つ魅力です。

 アマテラスは女王、巫女の女ボスとしての美しさの権化で、性的な対象にはなりません。

 しかし、アメノウズメは、そういう対象としての魅力に満ちています。ウズメみたいな女の子が彼女ならいいなあと思わせる魅力ですなあ。会いにけるアイドルのもっと身近で、スゴイものですね(n*´ω`*n)。

 長々と書きましたが、アマテラスがウズメを派遣団に加えたのは、おそらく、中つ国の男たちがその気になるだろうことを予感というか望んでいたのでしょう。

 良き夫婦となって、子を増やし、中つ国を豊かな国にしなさいという思いが託されていたと思います。

 そして、そのウズメを見初めたのが猿田彦という国津神(地上の神さま)でありましたぞ。

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ライトノベルベスト『フォーチュンクッキー!』

2021-07-18 06:03:33 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『フォーチュンクッキー!』        

 

「チェ、こんなもの」

 そう言ってお姉ちゃんは、テーブルの上に投げ出した。

「いらないんだったら、ちょうだい!」

 そう言ってもらっちゃった。

 ティッシュのパッケージほどの大きさの箱に、それは入っていた。

 フォーチュンクッキー[辻占煎餅(つじうらせんべい)]と幸せ色で書かれていた。
 
 これは、お姉ちゃんに想いを寄せている彼が、ネットで見つけた限定品らしい。

「こんなもので、気を引こうっていう子供っぽさがヤなのよね」

 そう言って、大人ぶったOL三年目の姉上は、あれほどバカにしていたジブリのアニメを見に行った……たぶん友だちで、同類のお局様コースまっしぐらのヨーコさんと。
 
 お姉ちゃんは、ミーハーが嫌いなミーハーというヤヤコシイオンナなのだ。

 流行りのものは、とりあえず拒絶する。で、世間が「やっぱ、すごい!」と評価(主にテレビの某コメンテーター)すると、さも自分が評価したようにして飛びついていく。こないだの80年代体験ディスコに行ったのもそうだし、今日のジブリも、いつだたかの村上春樹って人の本もそう。

 で、これは、職場の一ノ瀬さんという、職場の女子がみんな狙っているというイケメンのサラブレッド。会社の会長の甥ということで、会社での未来は約束された人らしい。

 一度だけ、お姉ちゃんの荷物持ちで、出かけた先でばったり出会い。わたしにもキチンとご挨拶してくださった。イタズラ好きなガキ大将の匂いが残っているような印象で、下げた頭を上げたときには、初対面の距離を超えた近さで、ウィンクされちゃった。
 
 このフォーチュンクッキーは、そんなお姉ちゃんを試そうとする一ノ瀬さんのイタズラな気持ちだと思う。

 フォーチュンクッキーはAKBで、大いに流行っていた。

「また、世間は秋元康の策略にのって。こんなのサンフランシスコの場末の中華料理屋で始まった駄菓子じゃん。中にオミクジだなんて、不衛生!」

 と、ニベもなかったよ、あのころのお姉ちゃんは。

 あたしは知っている。うちのバンドでも、この曲をやるので調べたんだ。元々は日本のものだ。昔アメリカで万博をやったときにアメリカに持ち込まれ、それをチャイナタウンのレストランで真似してやるようになり、アメリカ人でも中国のものだと思っている人が多いらしい。

 元来は、北陸地方の、お正月の縁起物で、神社なんかで売られていたらしい。  

 あたしだって、いつまでも、オバカな妹じゃないんだぞ。

 試しに、一個蟹の爪みたいな辻占煎餅を割ってみた。

「末吉、運命の人は、意外に近くに」

 それを見て、遼介の顔が浮かんで、思わず心臓バックン!

「さあ、みんな。本番前の縁起物に、どうぞ!」

 控え室で、緊張の固まりになりつつあるメンバーに、フォーチュンクッキーの箱を開けて見せた。

「これ、ひょっとして、フォーチュンクッキーか!?」

「おうよ。本家本元、福井の壽屋の辻占煎餅よ!」

 研究が進んでいるメンバーには、これだけで分かる。

「これ、限定品なんだぜ。よく手に入ったな!」

「これも、今日のロックコンクールのためよ」

 わたしも見栄を張る。

「わ、オレ、大吉!」

 ドラムのジンが、まず喜んだ。キーボードのミヨシが中吉、ベースのサトーも大吉。

「おれ、こういうの運がないから、だれか引いてくれよ」

 遼介は、あたしの顔を見た。

「情けないオトコね、凶が出ても責任とらないからね」

 あたしは、テキトーに選んで渡してやった。

「……………」

「何が出たんだよ、教えろよ」

 ジンがせっつく。

「いや、これは……」

 遼介がモジモジするもんだから、あたしも含めて遼介をもみくちゃにしてやる。

「アフタースクールのみなさん、スタンバってください」

 係のオニイサンが、出番近しを伝えてくれた。

 フォーチュンクッキーのお陰か、コンクールは準優勝だった。

 カーー カーー

 カラスが二三羽、西に飛んでいく。

 まだコンクールの余韻が残っている……準優勝の火照りが。

 帰りの電車は、前の駅でミヨシとサトーが降りた。ジンは、もう一個むこうの駅だ。

 だから、この道を歩いているのは、あたしと遼介だけ。

「良かったね、初出場で準優勝もらえて」

「フォーチュンクッキーのお陰かもな」

「あ、遼介のは、なんて出てたのよさ!?」

「これ……」

 ヤツはお神籤の上、三分の一だけを見せた。そこには大吉と書かれていた。

「よかったじゃん。で、その下は」

「いいよ」

「よくない、見せなさい!」

 ふんだくって見てやると、こう書いてあった。

「運命の人は、意外に近くに」

「おお……でも、一番下の方なんて書いてあったの? 千切れてる」

「もみくちゃにされてるうちにさ……」

「……うそ、持ってんだ。出せ、遼介!」

「だ、大事にしたいから……」

 こういうウソのつけないところが、遼介のいいとこだ。数秒して、ヤツはやっと出した。

「それは、これをくれた人」

「遼介……」

「前から……好きだったから。だから……」

 運命を感じてしまった。

「あ、あたしも……」

「真琴……」

 ヤツの顔が迫ってきた。あたしは幼い一線を……越えられなかった。

「あ、あたし末吉だから、だから大事に……」

「ああ、大事にしような」
 
 そう言って、遼介は、三叉路の左側の道へ行った。

「遼介!」

 思わず呼ぶと、ヤツは電柱一本分向こうから言った。

「オレも、末吉に付き合うから!」

 フォーチュンクッキーの思い出でした…………

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ホリーウォー・8[スグルのメモリーを集める・6]

2021-07-18 05:39:31 | カントリーロード

リーォー・8
[スグルのメモリーを集める・6]  




 
 今から思うと無謀だったんだけどね……

 狩野豊子陸上自衛隊関東補給処三佐は、二台のパソコンを操作しながら話し始めた。

 高校のトライアスロンでは二年連続の入賞だったし、普通科のお父さんとサスケに出てさ。お父さんは中盤のエリアで脱落。あたしは最終まで残って、タイムでアメリカのジミーって選手に2秒のタイムロスで負けちゃった。
 で、ジミーと仲良くなったら……アハハ、見かけより5歳トシ誤魔化しててね。登録も現役海兵隊員だったけど、ほんとは引退したフォース・リーコンの隊員。中東の作戦で限界を感じて除隊して、一般の海兵隊員になってた。

 話しの上手い人でね、サスケ参加者の中では一番人を笑わせていたわ。話術もフォース・リーコンじゃ、大事な能力らしいわね。
 自衛隊に入るのは早くから決めてたけど、特化を志望したのは、これがきっかけ。三か月の基本訓練は屁みたいなもんだった。

 で、一応特化候補生として部隊長の推薦もらってね……伊豆の訓練場に行った時の教官が、吉岡二尉(スグル)だった。着いたらいきなり装具を渡されてヘリコプター。なんの説明もなしに、富士の裾野に下ろされた。

 携行食料は半日分。所持金はゼロ。15キロの装具を付けてほっぽらかし。

「三日以内に、伊豆の訓練場まで戻ってくること。交通機関を使ってはならないことはもとより、民間人に発見されてはならない。触法行為はいっさい許されない。なお、貴様らの行動は、我々が逐次監視している。では、健闘を祈る」

 吉岡二尉は、班編成が終わったら開封しろって封筒を残して、そのままヘリで戻っていってしまった。富士の裾野で、まだ名前も知らない20人の候補生が残されたわ。

 兵隊って、命令と任務分担が決まってないと、ただのお人形さん。30秒ほど当惑と混乱。でも、選りすぐりだから、すぐに状況を認識して、4班に分けて行動を開始……どうやって分けたかって? ジャンケンよ。互いに認識もないし、こういう場合一番不平が出ず、迅速に決定できる方法。

 で、吉岡二尉の封筒を開封したの。何が書いてあったと思う……全員で「だるまさんが転んだ」をやれ。いま思うと笑っちゃうんだけど、20人が、それぞれの個性や能力を見極めるのには最適ね。ごく粗々だけど、個性が分かったわ。

 それから、5人ずつの班に分かれて行動開始。

 人に見つかっちゃいけないから、主に山の中を行動。やむなく人目に付きそうなところは夜間に監視カメラに写らないように動くの。

 傑作よ、裏路地や野原を匍匐前進したり、川の中を首まで浸かって渡ったり。
 最初に困ったのは食糧。なんせ全員朝食抜きで集められてたから、昼過ぎには腹ペコ。携行食料? 笑っちゃうわよ、チューブ入りの栄養補助食品が一個きり。カロリー的には1000キロカロリーある特殊なもんだけど、人間やっぱり形のあるもの食べなきゃもたないのよね。二日目には蛇を捕まえて、刺身にしたわ。火は使えないからね。
 途中で猪に出会ってね……え、殺して食べたんだろうって? できないわよ。言ったけど火が使えないし、4人で猪一頭食べるなんてできないじゃない。みんなで寄ってたかって半殺し。最後は首を絞めて気絶させるの。

 困ったのはウンコとおしっこ。笑うけど、深刻よ。

 だって、その場に置いておけば臭いでわかっちゃう、ウンコはビニール袋に、おしっこはペットボトルに入れて運ぶの。で、適当な場所で処分。おしっこは川なんかに流すんだけど、大きい方はね……近頃は犬のウンだって、めったに落ちてないじゃない。最後まで持ち歩くハメになったわ。
 なんとか二日目の夜には伊豆半島に入れて……気のゆるみね、道路を渡る時に車が近づいてくるのが分かって、わたし一人が取り残されて、道を渡ったときにははぐれていた。一応目印になるように分からないように、樹の枝なんかを折ってくれていて、だいたいの仲間の位置は分かった。

 でも、ここで凡ミス。ばったり地元のお爺さんに出くわして……お爺さんも地元で慣れた山。気配が一般の人ほどしないの。気が付いたら羽交い絞めにして、お爺さんの首にナイフを当てていたわ。
 なんとか謝って、自衛隊の訓練ですって説明したら、納得してくださった。
 で、昼前に仲間に合流して、やっと伊豆の訓練場に戻れた。

 結果? ハハ、ここでこうしていれば分かるでしょ。

 合格したのは4人だけ。そのうち3人は極東戦争で死んだり行方不明。わたしは……うん、むろんお爺さんと出くわしたのが大きな減点だったけど、監督官に写真撮られていてね。それも藪の中でしゃがんで用を足している姿。こんなの他でやったらセクハラだけど、特化じゃ立派な採点。実戦だったらお尻剥きだしたまま殺されてるってことだもんね。

 でも、不合格者にも並のレンジャーの資格はもらえた。ね、この胸の徽章。この業界じゃ一目おいてもらえる。

「君は、補給の仕事に向いてるんじゃなか」

 吉岡二尉が言ってくれたの。

 わたしの班が装備管理、糧秣調達という点じゃ一番だった。それにお土産(密封うんこ)が、合格者の班と同じくらいよくできていて、軍用犬でも感知できないレベルになっていたの。

「悩んでいるのなら、腕相撲しよう。みんなも参加しろ」

 その結果、わたしは合格者の人たちと同じ成績だったの。腕相撲って腕力だけじゃない、タイミングと全身のバランスが大事。それが補給の仕事に通じているのは、この仕事やって半年目ぐらいだったかな。

 この話をしている間に狩野三佐は、一個連隊の補給品のチェックを終えていた。

 ヒナタは、スグルの着眼点の良さとユーモア精神を理解した。 

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