大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・53『ねえ、できちゃった(^_^;)!』

2021-08-03 14:12:04 | 評論

訳日本の神話・53
『ねえ、できちゃった(^_^;)!』  

 

 

 ねえ、できちゃった(^_^;)!

 え( ゚Д゚)!?

 

 たった二つの会話ですが、読者が小学生以上ならお分かりになると思います。

 ご飯ができたとか、オデキができたとか、逆上がりができたとか、オリハルコンでエクスカリバーができたとか、そういう『できた』話ではないことを。

 これは、奥さん、それも新妻が旦那に妊娠したことを告げる時の常套句、定型文、デフォルトであります。

 

 イワナガヒメを送り返して、寿命が並の人間ほどになったニニギノミコトですが、まだまだ若いので屁とも思っていません。

 その、屁とも思わないニニギは、サクヤの妊娠宣言にはビックリします。

 え……まだ、そんなにやってないのに?

 それに、考えてみたら、サクヤはオレのプロポーズを一発でOKしたよな?

 ちょっと、イージーすぎじゃね?

 ひょっとしたら、他の国つ神ともよろしくやってて、誰の子だか分からない子を身ごもって……それで、世間知らずのオレをひっかけた?

 

 まあ、疑心暗鬼というやつですなあ。

 

「そ、そうか、できたか! め、めでたい(^_^;)! う、嬉しいぞ(^0^;)!」

「あ、ニニギ、あたしのこと疑ってるでしょ!?」

「あ、いや、そんなことないよ(#^曲^#)」

「いや、疑ってる!」

「サクヤぁ……」

「いいわよ、あなたの子であることを証明してやるから!」

「お、おい、なにをする気だよ!?」

 とっとと行ってしまうサクヤを追いかけるニニギ。

「な、なんて足が速いんだ(;'∀') ゼーゼー……」

 

 やっと追いつくと、サクヤは家来の神々を使って産屋を建てさせていました。

 

「なんだよ、この小屋は?」

「産屋です」

「産屋ってことは、ここで子供を産むってこと……だよな?」

「そうよ、生まれるまで、ここで見てるといい!」

「でも、この産屋、窓とかないんだけど、真っ暗じゃね?」

「これでいいの!」

「え、もう中に入っちまうの?」

「うん! みんな、わたしが入ったら入り口も打ち付けて壁土で塗り固めてしまうのよ!」

「お、おい、サクヤ、お、おまえたちも、そんなことしたら真っ暗に……」

 ニニギがオロオロしているうちに、サクヤを閉じ込めたまま産屋が完成します。

「じゃ、イッセーノーで、火をつけるのよ!」

「ちょ、サクヤ!」

「イッセーノーで!」

 

 ボ!!

 

「キャーーやめてえ(#`Д´#)!」

 叫んだのはニニギです。

 サクヤは燃え盛る産屋の中で、ヘッチャラなのか気絶したのか静かです。

 やがて産屋はパチパチボウボウと激しく燃えさかり、傍にも寄れなくなります。

 

 オギャー オギャー オギャー

 

「え、生まれた!?」

 産声が三つ聞こえ、やっと火が収まって、ニニギは暑さをこらえながら燃え跡に近づいていきます。

 すると、燃え殻の中に、三人の赤ちゃんを抱っこしたサクヤがピースサインをしておるではありませんか!?

「やったね!」

「だ、大丈夫かい?」

「これで分かったでしょ、これだけの火の中で生まれてもビクともしないで産声を上げて、間違いなく天津神、ニニギの赤ちゃんよ!」

「わ、分かった。かりそめにも疑ってごめんなさい、この通りです(。>ㅅ<。)!」

「よし、分かればいいのよ、分かればね」

 

 こうして、天孫降臨の第二世代が誕生したのでありました。

 

 次回は、この第二世代の冒険に話しを進めていきたいと思います(^▽^)/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

せやさかい・221『さくらと椛』

2021-08-03 09:47:30 | ノベル

・221

『さくらと椛』さくら      

 

 

 

 バレイって言葉知ってますぅ( ̄ー ̄)b?

 

 英語で谷とか峡谷とか       ちゃいます。

 優雅に踊る西洋の踊り       そら、バレーです。

 オリンピック予選リーグで敗退   それはバレーボール。

 ポテトチップスの原料       それは馬鈴薯。

 地縛霊の短縮形          なるほど、場に憑く霊で場霊。 座布団一枚!

 

 さっきから、留美ちゃんも詩ちゃんもスカタンばっかり言うてます。

 ほんまの意味知ってるさかい。

 

 バレイとは馬齢のことなんです。

 馬っちゅうのんは、歳をとったら馬力が無くなってしもて役に立たんとこからきた『無駄に年を取る』という意味やさかいです。

 プ、プフフフ(* ´艸`)

 アハハハハハ(^◇^)

 二人とも笑い出した。

「だって十五やそこらで馬齢だなんて、ふつう笑っちゃうよ」

「そうよ、お祖父ちゃん気ぃ悪くするわよ。さくらが馬齢なら、お祖父ちゃんなんか馬齢の化石でしょ!」

「だれが、馬齢の化石やてえ?」

 聞きつけたお祖父ちゃんが作務衣姿でリビングに入って来る。

「ああ、オリンピックのタメどりか」

「うん、三人で感動を噛み締めようって」

「しかし、よう録画しといたなあ」

「テイ兄ちゃんが録画してくれてたさかい」

「ライブでは三人とも観てるんですけどね、三人で観れば感動がちがいますからね」

 そう答えながらも、留美ちゃんはお祖父ちゃんにお茶を淹れてる。

「大橋悠衣の二冠達成は五回も観ちゃった」

「あんな素敵な笑顔は初めて見ました!」

「いやいや、そない感動してる留美ちゃんの笑顔もピカイチやと思うよ(^▽^)」

「いえ、そんな、わたしなんか(〃´∪`〃)」

 うん、たしかに留美ちゃんの笑顔はようなった。うちに越してきたことがプラスに働いてるんや。

「いやいや、なかなか……」

「だったら、きっと阿弥陀さまのおかげです(#´□`#)」

 留美ちゃんもお寺の子ぉらしいこと言うようになった。

「で、なにが馬齢やねん?」

「ああ、これよ、お祖父ちゃん」

 詩ちゃんがリモコンをクリック。

「ああ、スケボーの西矢椛か!」

 お祖父ちゃんが身を乗り出す。

 もう三回も観たんやけど、うちらも観てしまう。

「この西矢椛いう子ぉは、まだ中二やねんで、うちよりも一個下!」

「せやなあ……て、さくら、それで自分を馬齢て言うてんのんか?」

「う、うん、うちはスケボどころかスケートもようしいひん」

「いや、だから笑っちゃうって」

 バシバシ

 詩ちゃんが肩を叩く。

「せやけど……詩、ちょっと巻き戻して……そこそこ……この椛いう子、ちょっとさくらに似てへんか?」

「へ?」

「笑顔がな……」

「え、え、なによ、お祖父ちゃん(;'∀')」

 お祖父ちゃんが、じっとうちの顔見るもんやさかい、留美ちゃんも詩ちゃんもマジマジ。

「あ、そういえば……」

「似てるかも」

 丸い鼻   笑うと線になってしまう目ぇ  離れた眉毛  で、丸まっちい童顔(^_^;) 

「一つ一つは、ベッピンさんの造作やないねんけど、笑うてると、実に美しい。オリンピックいう晴れの舞台に立ってるいうこともあるんやろけど、この子の笑顔は天性のもんやろなあ……」

「ちょ、お祖父ちゃん、なに泣いてんのん?」

「いや、一昨年、うち来たころのさくらのこと思い出してなあ」

「え、あ……(#^~^#)」

「『椛とさくら』、なんだか語呂もいいわね」

「なんだか、ラノベになりそうです」

 アハハ、ラノベのヒロインにされてしもた。

 

 あとで、二年前の写真を開いてみる。

 山門前で、みんなで撮った写真。

 あの時は、そう思わへんかったけど、今から見ると、ちょっと痛々しい。

『椛とさくら』

 いや、

『さくらと椛』や。

 あ、いや、単に語呂がね、出席番号順でも、うちが先やしね。

 え、出席番号は苗字の順?

 えと……酒井と西矢……って、ほら、やっぱし、うちが先やんか(* ´艸`)。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ライトノベルベスト『絶望的リフレイン』

2021-08-03 07:06:39 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『絶望的リフレイン』  

 



 この角曲がったら

 君がいるとは思わなかった。

 君は一瞬ポカンとした顔になって、次の瞬間「待て!」と叫んで追いかけてきた。

 あの時は逆だった。

 あの角曲がったら、君がいるような予感がした。

 恋する気持ちに男も女も無い。80%のドキドキと、10%の希望と、10%の絶望の予感。

 いや、逆だ。10%の希望と絶望の予感があるから、ドキドキするんだ。

 あの時の君は、まるで幼稚園の子が鬼ごっこで、思わず鬼と出くわしたみたいな顔になって逃げだした。

 僕には、そんなつもりは無かった。

 あの顔を見て、とっさにコクるほど度胸も無ければ、可能性もあるとは思わなかった。

「待って、待ってよ、沢村さん!」

 そう叫びながら、僕は追いかけた。

 なぜって、僕の手には、君のスマホがあったから。

 そうなんだ、あのスマホは、君が僕を見た瞬間、思わず落っことしたものだから。返してあげなきゃと思ったんだ。
 三つ角を曲がったところまでは君の姿は見えていたけど、四つ目で君の姿は見えなくなった。
 途方に暮れて、四つ辻で見渡していたら、小学生の女の子の二人連れが通りかかった。

「A高校のオネエチャン、見かけなかった?」

 そう聞くと、二人の女の子は「あっち」と指差した。
 でも、二人は、とっさに逆のことを教えたんだ。行った先には人っ子一人いなかった。

「停学三日を言い渡す」

 生活指導部長が、そう言った時、君は付け加えた。

「もう、わたしの傍には近づかないって約束させてください。そうでないと、わたし警察に言います。ストーカーだって」

 あの一言はショック……その前からショックだった。拾ったスマホには、校内一のイケメン支倉のメールが入っていて、君の返信が途中まで入っていた。電源入ったままだったから、僕は思わず読んでしまった……いや、目に飛び込んできた。たった六文字の二つの言葉。

――君が好きだよ――
――私も愛してる――

 でも、今は真逆のリフレイン。

 君は外事課の刑事として、僕を追いかけている。

 僕には、そんなつもりは無かった。知りもしなかった。

 上司の勧めで入った外国語学校のあの人がC国のスパイだったなんて!

 僕は、大したことは教えていない。たとえ相手が日本人であろうが、国防上教えちゃいけないことぐらいは分かっている。

 たった一つの間違いは、あの人に上司を紹介したことだった。

 上司は、国防上の機密をずいぶん、あの人に喋ってしまった。
 あの人は、僕から聞いたと情報を流し、外交官特権で、昨日本国に帰ってしまった。
 上司は、まだ使えると踏まれている。だから、僕に押し付けられた。

 三つめの角まで、君は追いかけてきた。

 三叉路に立ったとき、通りすがりの女子高生が、心なし、あのころの君に似た女子高生が、こう言った。

「逃げるんだったら、あっちの道!」

 君に似た面影に、ボクの判断力は鈍っていた。

 その通り逃げたら、目の前に巨大なダンプカー。僕が、この世で見た最後の物体。

 ああ、絶望的リフレイン……!


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホリーウォー・25[ミッションパラサイト・3]

2021-08-03 06:43:57 | カントリーロード
リーォー・24
[ミッションパラサイト・3] 



 

 青海チベット鉄道のラサ駅から発車準備のため退避線に入っていた列車が無人のまま動き出した。
 
 列車は、そのまま本線に入り、制御不能のまま隣のラサ西駅を通過、次の馬郷駅手前の急カーブを曲がり切れずに脱線転覆してしまった。被害の割に死者・負傷者はいなかった。
 
 ほとんど同時刻に、ラサ・クンガ空港で整備待機中の貨物機が無人のまま整備ヤードから誘導路に入り、滑走路に入ろうとしていた旅客機にぶつかって大破炎上した。旅客機の方は管制塔から貨物機の接近を知らされていたので、寸前に乗員乗客が避難。これまた、死者・負傷者はいなかった。

 チベットの中枢と隣接する秦共和国を結ぶ陸と空の幹線が断ち切られてしまった。

 そして、地方政府前で、漢族の若い女性が秦共和国のチベットの不当な支配に抗議する演説を始めた。
 すぐに武装警官隊が駆けつけたが、どこからともなく現れた屈強なラマ僧によって、一個小隊の武装警察は全員のされ、武装解除されて縛り上げられた。

 ラサ郊外の秦軍駐屯地の弾薬庫と武器庫が同時に爆破された。

 直後、駐屯地から二人の女性兵士が現れたかと思うと、上着を脱ぎ、チベットの民族衣装になって演説し始めた。
 
「秦の支配から逃れる時が来た。見よ、燃え盛る侵略者の兵舎を! やっと我々の国を取り戻すときがやってきたのだ!」
 
 この演説を直接聞いている者は少なかったが、SNSで画像が全世界に流れた。

――チベットに独立の狼煙が上がる!――

 そんな記事が、世界中の新聞やテレビのトップニュースになった。秦も、その後ろ盾になっている漢も、なすすべも無く混乱するばかりであった。あくる日には秦が漢に抗議するという珍事態になった。地方政府前で演説していた女性が北京市長の娘・林音美と知れたからである。
 この事件は、今までの百年以上にわたる抗議運動とは質と水準が違った。チベットと、その外を結ぶ陸と空の幹線は遮断され、駐留していた秦軍と漢の軍事顧問団は、たった二日で無力化された。三日目にチベットは大陸国家からの独立を宣言。大陸五か国の疑心暗鬼が始まった。

「やられたな……」

 習大佐は、天壇の司令部で歯噛みした。もう五か国を結び付けているのはシンラだけである。シンラとのパイプを残しておいたことに、辛うじて起死回生の可能性をかけるしかなかった。それに日本がポーカーフェイスで送り込んだ自律式核融合兵器である。日本に送り込んである工作員から「ヒナタというガイノイドで、複数のガードが付いている」という間の抜けた情報だけが上がっている。

「しばらくは内を固めるしかないか……」

「これ以上は藪蛇になるかもしれないわね」
 天壇女子中高の制服を着ながら、雪嶺のヒナタが独り言ちた。
「しばらく天壇の女子高生やるのもいいと思ったんだけどね」
 春麗のキミが不満げに言う。
「早くしろ、退学届出して、さっさと、この国からオサラバするんだから」
 潤沢のスグルが隣室でイラついている。日本で本物の潤沢が捕まっているという噂が流れ始めているからだ。

 どうやら潮時であるという点では一致している三人だった。天壇の雲が北京の蒼空をゆっくり流れて行く。

「昔と違って、空だけはきれいになったね」

 ヒナタは、これまでの思いを言葉にしただけだったが、スグルには呑気な独り言にしか聞こえなかった……。


 ホリーウォー 第一期 完       
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする