大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・93『チカコとお風呂(^▽^)/』

2021-08-11 14:10:52 | ライトノベルセレクト

やく物語・93

『チカコとお風呂(^▽^)/』    

 

 

 チカコといっしょにお風呂に入る。

 

 チカコは1/12サイズの多関節フィギュアなので、首なしの素体を持って行って首を挿げ替えてから入る。

 元々のフィギュアだとゴスロリ衣装のまま入らなきゃならないから。

「よいしょっと」

 なるほど、裸の素体に換えると、これからお風呂に入りますって感じになる。

 

 で、肝心のお風呂。

 

「ふ、深すぎる……」

 なんせ、1/12なもんだから、リアルサイズに換算すると8メートルぐらいの深さになる。

「その湯桶にお湯を入れて浮かべてちょうだい」

「沈まないかなあ……」

 半分ほどお湯を入れて湯船に浮かべる。

「「おお」」

 半分お湯を入れても、湯桶はユラユラ揺れながら浮いている。

 湯桶は、こないだメンテナンスしてもらった時に大工さんがくれたもので、ちゃんと檜でできている。

 湯桶の内にも外にもお湯なので、檜の香りがフワフワと広がる。

「うん、これで、いっしょにお風呂に入れるね(^▽^)/」

「ああ……やっぱり、お風呂は檜ぶろに限るわねえ」

「チカコって、檜ぶろに入ってたの?」

「そうよ、お風呂って天然温泉でもない限り、やっぱり檜ぶろでしょ」

 うちは古い家で、たまたま檜ぶろなんだけど、普通はホーローとかプラスチックとか、ステンレスとか……タイル張りというのもあるなあ。

 檜ぶろは、やっぱり、ちょっと……いや、かなり古いお家……というか、お屋敷だよ。

 チカコの今の姿は黒猫だけど、これは憑りついているだけ。

 元の姿は……左手首。

 

 うう……これは、やっぱり触れちゃいけない問題なんだろうなあ。

 

「ねえ、東の窓の不思議を解きにいきましょうか?」

「え、いいの?」

「気になってるんでしょ?」

 気にはなってる。

 東の窓から食事中の姿を見られ、茶店の娘は業平に幻滅されて玉の輿を失ったんだ。

 業平は、苗字こそ在原だけど、祖父は桓武天皇なんだ。

 平安時代きってのイケメン貴族だ。

 だからこそ、後の高安の人たちは東に窓を付けることをやめたんだ。

 それが、玉祖神社の巫女さんから預かった『東窓』のお札を貼ったら、女の子の引きこもりが直ってしまった。

 訳わからん(@o@)

「よし、今夜寝てる間に調べに行こう。枕もとにお地蔵イコカ置いておくのよ」

「今夜?」

「そうよ、俊徳丸には内緒で行くからね」

「そ、そうなんだ」

「そうと決まれば……」

「あ、もう上がる?」

「ううん、体洗うのよ。背中を流しなさい」

「う、うん、いいよ」

 風呂椅子の上に載せて、小さな背中を洗ってあげる。

 

 ザパーーン!

 キャーーー!

 

 勢いよくお湯を流してあげたら、あっという間にチカコは流されてしまった。

 スノコにに引っかかって、下水に流されることはなかったけど、もう一度お風呂に浸かるはめになってしまった。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸
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せやさかい・229『朝のお散歩 ソフィーといっしょ』

2021-08-11 08:40:20 | ノベル

・229

『朝のお散歩 ソフィーといっしょ』頼子     

 

 

 狙ったわけじゃないんだろうけど、朝顔の花言葉は結束だ。

 

 いまは、高校と中学に分かれてしまったけど、文芸部の結束は永遠だ。

 メールで知らせてやってもいいんだけど、気づくまで放っておく。

 自分で気が付いた方が感動は大きいというものだしね。

 

 わたしはlineは使わない。

 

 小6で初めてスマホを持った時に、お祖母ちゃんから『使ってはいけないアプリ』の一覧がきて、その筆頭にあったのがlineだった。

 だから、既読マークとかは付かないから、読んだかどうかは返事が来なければわからない。

 一度は、スマホで花言葉のこと知らせてやろうと思って、思いとどまったのもlineではないからだ。

 

 そんなわたしは、朝顔の水をやってから日課の散歩に出ている。

 

「お散歩は、徒歩で40分以内にして下さい」

 ジョンスミスから釘を刺されている。

 ほんとうは、さくらや留美ちゃんのように自転車で回りたかったけど、自転車だと、ちょっと警備がたいへんなんだそうだ。

 徒歩だと、ソフィー一人が付いてくるだけで身軽に出かけられる。

 本当は30分だったんだけど、ソフィーが粘ってくれて、10分のおまけがついた。

 

 でもね……

 

「お城でもないのにシャチホコが付いてます、あっちの家はお猿が載ってます、あ、あの家は淡路瓦を使ってますよ!」

 日本文化に目覚めたソフィーは、あちこちに好奇心発揮しまくり。

 領事館がある一帯は、戦災でも焼け残ったとこだそうで、古いものが結構残っている。

 ソフィーは、それにいちいち感動したり記録に残したり。

 まあ、わたしが学校で散策部なんて部活を作って、ソフィーも無理やり入れちゃったせいでもあるんだけどね。

 本人の努力も大したもので、来日二年目には漢字もマスターして、その好奇心に羽根が付いた。

「殿下、この鳥居すごいです!」

 今朝から道を変えると、さっそく神社の前で停まってしまった。

「え?」

「この鳥居、元禄十二年の寄進ですよ!」

 元禄十二……えと、元禄というのは忠臣蔵の時代で、将軍綱吉が生類憐みの令とか出した時代?

「1699年です、忠臣蔵の二年前です!」

「あ、ああ、そうなのね(^_^;)」

「すごくないですか? 1699年は、まだ、わがヤマセンブルグ公国は成立していない時代ですよ! それが、重要文化財の指定も受けないで、そこらへんの電柱といっしょに立っているんです! 写真撮ります!」

 パシャパシャ パシャパシャ

「明神鳥居ですね、大阪にはこの様式が多いようですが、扁額の形式は……」

 という具合(^_^;)

「う~~~ん」

「どうかした?」

「鳥居の一番上を笠木というんですけどね、天辺の形がここからでは分かりません……」

「あ、登っちゃダメだからね」

「うう、残念」

 ソフィーは魔法使いの家系で、身体能力は忍者並。

 まあ、それをかわれて、わたしの専属ガードをやってるんだけどね。警察に通報されそうなことはさせられません。

「殿下、あれは、なんでしょう?」

 ソフィーが見咎めたものは、鳥居の横のコンクリートの土台。

 コンクリートだから、元禄ではないんだろうけど、苔むしていて、それなりの時代を感じさせる。

 土台の上には墓石みたいに縦長の石が二本寄り添うように立てられていて、なんだか巨石記念物めいている(ヤマセンブルグには、ローマ時代のが残っている)んだけど……コンクリートだしね。

「ちょっと、社務所で聞いてみましょうか?」

「あ、時間超えそうだよ……」

「あ……ですね」

「あした、もっかい来よう」

「え、ほんとですか!?」

「うん」

「約束ですよ!」

「うんうん」

 心残りっぽいけど、仕方がない。

「朝顔の花言葉、もう一つありました」

 写真を撮るついでに検索していたようだ。

「え、なんなの?」

「あなたに絡みつく(^▽^)/」

「え?」

「アハハハ」

 わがガードも、なかなか言うようになってきました(-_-;)

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ライトノベルベスト『ラブラドール・レトリバー・1』

2021-08-11 06:11:54 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『ラブラドール・レトリバー・1』    




―― 新しいラブドールを買った、見に来いよ ――

 そのメールを読んで、さすがのあたしも腰が引けてしまった。

 来栖さんは、職場の上司としても、男としてもクールってか、イケてるってか、尊敬さえしている。

 今の会社に入社したときに、大阪支社から主任として転勤してきた人で、酒癖が少し悪いということ、シャレが大阪風でノリにくいことを除いて申し分ない。

 仕事の上で男女の区別はしない。

 自分が課長に昇進した時の後任に年上の男の先輩を差し置いてあたしを推薦してくれたことでも分かる。

 仕事一途のように見えて情にも厚い。

 Sという、どうしようもなく仕事のできない先輩がいて、自他ともに整理解雇対象であることを当然だと思っていた。

 ところが、来栖さんは会社と掛け合って、総務資料課という閑職ではあるが会社に残れるようにしてくれた。

 Sさんは、窓際の仕事であるにもかかわらず、嬉々として仕事に励んだ。

 昔と違って、会社の資料はデジタル化され、社内の誰でも自分で検索し、活用ができるようになっている。

 ただ広告代理店という仕事柄、どうしてもコンピューターの無機質な資料には収まり切れないものがある。

 広告ポップの現物や、取引相手の担当者の個性や嗜好や弱みなどは、当時の担当者のアナログな資料を見なければ分からないものがある。

 Sさんは、そういうものを取引相手別、年代別に閲覧できるように整理してくれた。おかげでアイデアに行き詰った時などは、直で資料室に乗り込むと、狙っていた通りの資料を出してくれる。先日も新しい広告のポップに困って資料室を訪ねると、大きな見本を見せてくれた。

 前世期の70年代に流行った等身大のアイドルのポップだ。

 とうにパソコンで、その存在を知っていたが、現物を見ると新鮮だった。ただのボール紙のプリントだと思っていたら、なんと薄いプラスチック製で、ちゃんと体や顔に稚拙ではあるが凹凸がある。今は、こんなことをしなくてもデジタルでいくらも完璧な3Dのポップができるが、かかる経費の割にはありふれたものになっている。

「このアナログな立体感はイケる!」

 狙い通り、そのポップは当たった。

 印刷技術は、前世紀とは比較にならないほど進んでいる。それにちょっとした凹凸をつけるだけで、デジタルには無い存在感と温もりがあった。モデルには日本有数のアイドルグループの二線級の子たちを使った。ギャラが安くて済むし、彼女たちのPRにもなる。

 化粧品会社のポップだったけど、このポップを置いた店には男性客も増えた。中には夜間など店頭にオキッパにしているものが取られることもあった。二か月後にはポップ自体を景品に。

 すると、これにプレミアが付くようになり、あたしの会社では、急きょ、これを商品として売り出すことにした。

 来栖さんが注文をつけた。

「実物大だと持ち運びに大変だし、家族のいる男にはラブドールのように思われる。数を稼ぐためにも、ここはフィギュアのスタンダードの1/6とか1/8にしよう」

 税込み981円のポップ……というよりも簡易フィギュアは飛ぶように売れ、会社の今年度の前期売上を20%も伸ばした。

 昨日、その数字の発表があって、渋谷で大いに盛り上がった。Sさんも会社から、特別功労賞が出て面目躍如。推薦者は来栖さんだった。宴会中の落花狼藉は覚悟もしていたし、意外に来栖さんとしては大人しかったので安心した。そこへ、このメールだ。

 まあ、四十男の生態を観ておくのも勉強と、コンビニの特別お結び(なぜか、来栖さんの好物)をぶら下げて、新しいラブドールを拝見に向かった……。

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クレルモンの風・8『宿題からの展開』

2021-08-11 05:49:25 | 真夏ダイアリー

・8

『宿題からの展開』          

 




 早くも、日本文学概論の宿題の日がやってきた。

 フセイン君の「アラブと、日本の武士道に共通点が多い」というのはサンプルの羅列だった。名誉を重んずるということを、日本語の「名こそ惜しけれ」という古い慣用句を持ち出して熱烈にプレゼンテーションしたのは、中身はともかく、その熱意は高く評価されたようだ。

 すると、トルコのケマルって学生が、手を上げた。

『トルコと日本は、先祖が一緒なんです』

 みんなは唖然とし、コクトー先生はニヤニヤ。あたしは面食らった。

『その昔、アジアの真ん中に馬に乗る勇敢な民族がいました。それが、いつの時代か西と東に別れ、西へ行った者達がトルコ人になり、東に行った者達が日本人になったんです』
『根拠は? 熱意だけじゃフセインと同じ点数しか出ないよ』

 先生が意地悪く言う。

『言語が同じアルタイ語です、単語を置き換えるだけで、双方の文章は読めます。て・に・を・はに当たる助詞もトルコ語にはありあます。言語学用語では膠着語といいます。それになんと言っても、日本は、あのロシアをやっつけてくれました!』
『ロシア人の学生もいるから、表現には気を付けて』

 すると、ロシア人学生のアーニャが手を上げた。

『いいんです。歴史的な事実ですし、今のロシアとは体制が違います。それに、正確には、あの戦争はロシアの負けではありません。停戦です。その証拠に賠償金は1ルーブルも払ってません』
『しかし、領土を割譲したんじゃなかったっけ?』

 ケマル君が発言し、フセイン君たち数人が拍手した。

『あ、それ誤解です。居住地を原則にして国境をはっきりさせただけです』

「今がチャンスや、ユウコ!?」
「え、なにが?」

 あきれた顔をして、アグネスが発言した。

『つまり、正しい国境線にしたってことよね、アーニャ?』
『そうよ、だから露日戦争で、ロシアが負けたということじゃないの。あくまで停戦』
『じゃあ、今は、なぜ、その正しい国境線になっていないのでしょうか?』

 フランス語を喋っているアグネスは、別人のようにカッコイイ。

『それは……』
『それは、デリケートな問題だから、深入りはよそう。日本人自身からの発言も無いようだし』

 あたしのスイッチが入った。

『すみません。国後、択捉、歯舞、色丹は日本領です』

 この程度のフランス語は喋れるようになった。アグネスがガッツポーズをした。

『この講座は、文学と、それに伴う文化についてまでだ。ユウコにも宿題があったはずだが』
『あ、はい……』

 答はしたものの、気乗りがしない。調べてみたら、あまりいい答えが出てこなかったのだ。

「1942年に南洋庁という南太平洋の植民地を統括する役所が文部省に申し入れしました。それまでの日本語は、左書き、右書きが混在していました。日本の植民地になるまではドイツやオランダの植民地で、現地の人たちは、横書きの場合、左から読むクセがついていました。で、植民地の人たちが困らないように、左書きの要望を出しました。で、戦後内閣から1952年「公用文作成の要領」が出され、今に至っています」

 アグネスがフランス語に訳したあと、少し付け加えた。

『一部誤りがあります。当時南洋の島々は日本の植民地ではなく、多くは国際連盟からの委任統治領でした。だから、そこでの日本の施政権は正当なものだったのです。日本人は第二次大戦に過剰すぎる贖罪意識を持っています。そこのところを受け止めて理解してあげてください』
『でも、日本が日本の文化を強制したことには違いないわ』

 と、お隣の国の留学生が言った。

『当時は世界中がそうだったんです。現に旧フランス領から来た学生はフランス語に不自由しないでしょ』
『だけど、日本がやった事はね……!』
『あたしは昔の話しをしてるの。なんなら今でもやってるアジアの国について論じましょうか!?』
『アニエス、ここは文学の講座だからね』

 コクトー先生がたしなめる。

『残念、いつでもお相手したのにね』

 アグネスは、勝ち誇った笑顔で、あたしを連れて席に戻った。

「ユウコ、もっとディベートの勉強せんとあかんな……」

 アグネスは、放課後マルシェ(市場)の買い物にあたしを連れて行き、フルーツの見分け方や、値切り方を教えてくれた。

 で、気がついた。アグネスの買い物は、一人で持ち帰るのには量が多く、どうやら要領よく荷物運びの要員に使われた……ちょっと気の回しすぎだろうか?

 ま、いいや。持ちつ持たれつ。

 クレルモンを吹く風は今日も爽やかだしね(^▽^)/。

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