大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・237『修学旅行中止のプリントと保険証』

2021-08-22 16:59:00 | ノベル

・237

『修学旅行中止のプリントと保険証』さくら     

 

 

 昨日は虹が出て感動した。

 

 グズグズ続いた雨が、ようやっと明けて晴れ間がのぞいて、朝顔もいっぱい咲いて。

 なんか、ワンクール続いた高視聴率ドラマの最終回いう感じやった。

 そして、今日も、昼のちょっとの間ぁを除いて晴れ!

 ウキウキしてもええはず……やねんけど暑い(;'∀')。

 

 せやさかい、外に出るのはやんぺ。

 

 朝顔に水やりにいったら、境内の地べたから、モワ~~っちゅう感じで湿気が湧き上がってくる。

 新聞とりに山門の郵便受けまで行ったら、表の道は、境内以上にモワ~~。

 詩(ことは)ちゃんは、大学の用事で朝から出かけるし、留美ちゃんは、ちょっと体調が悪い。

 せやさかい、朝の散歩も、今朝は無し。

 あ、昨日も行ってへんし、もう、夏休み中の散歩は無しになるかもしれへん。

 

「病院、付いていこか?」

 

 留美ちゃんは、朝ごはんも喉に通らへんので、大人たちの強い勧めでお医者さんに行くことになった。

「いいよ、たぶん夏バテだし、お医者さんとかも、よく分かってるから」

 というので、留美ちゃんは一人でお医者さんとこへ。

 まさかコロナ……思てても、言いません。

 シャレにならへんもんね。

「さくらは、保険証とかは、ちゃんと置いてんねんやろな?」

 テイ兄ちゃんがジト目。

 留美ちゃんが、さっさと保険証とか診察券とか用意したんで、うちの顔を見る。

 これは―― さくらはドンクサイからなあ ――という疑念が色濃く出てる。

「大丈夫やよ! あたしを誰や思てんのんよ!」

 ドン!(と、胸を叩く)

 

 で、心配になって、部屋に戻って健康保険証を探す(^_^;)。

 

 元々はおばちゃんに預けたったんやけどね、うちにいっしょに住むと決まった時に、留美ちゃんが「自分のものは自分で管理します」と、大人の宣言をした。

「ほんなら、うちも!」

 というわけですわ。

 さくらのこっちゃから、きっと、どこに直したか忘れてしもて大慌て!

 と、思てるでしょ!? 疑ってるでしょ!? バカにしてるでしょ!? 

 

 ガハハハハハハハハ(ò 口 ó)!

 

 ちゃんと出てきましたのですよ、きみぃ~!

 で、気が付いた。ブツは出て来たけど、いらんもんが一杯あるのにも気が付いてしもたんや。

 昔やってたカードゲーム、小学校の成績表、ポケティッシュいろいろ、クチャクチャのテスト、ジョーカーの無くなったトランプ、 アメチャンの包み紙、 一回だけ使ったテレホンカード、 文庫の帯、 線香花火、 牛丼の割引券、 ピザ屋のチラシ……等々

 で、ちょっと整理することにする。

 

 これは?

 

 学校のプリントが出て来たんで、読み返す。

 プリントは、四月に配られた『修学旅行延期のお知らせ』ちゅうA4のプリントや。

 どこでも、そうやと思うねんけど、うちの学校は五月に予定してた修学旅行を延期した。

 理由は、むろんコロナ。

 プリント配られる前から噂はあったし、よその中学校もせやさかい『ああ、やっぱりなあ』という感じやった。

 おばちゃんに言うたら「そらそやろねえ」という返事で、ろくにプリントも見せてなかったんや。

 いまさら見せても……ねえ、シワクチャになってしもてるし。

 丸めてゴミ箱に……投げたら入れへんかった。

 ノソノソ四つん這いで拾いにいって、改めて捨てる。

 

 ほんま、うちらの修学旅行はどないなんねんやろ……。

 せや、保険証出てきたん言いにいかなら!

 

「出てきたでえ、保険証!」

 

 テイ兄ちゃんの鼻先に付きつける。

「そんなドヤ顔で言うことかあ」

「せやかて、ちゃんと持ってたもん!」

「ああ、えらいえらい」

「ちょ、子どもやないねんさかい、頭なでんといてくれる!」

「ああ、すまんすまん」

「ほな、返して」

「ああ……ちょっと待て」

「なんやのん?」

「さくら、これ、去年の保険証やで……」

「うそ!?」

 

 ガーーーーン

 

 もっかい、部屋に戻って、今年の保険証を探すアホのさくらでした(^_^;)。

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魔法少女マヂカ・228『天城の願い』

2021-08-22 13:09:14 | 小説

魔法少女マヂカ・228

『天城の願い語り手:マヂカ   

 

 

 

 ズドドーーン!

 

 アレクサンドル三世の30サンチ砲が火を噴く。

 同時に身を沈めて四発の砲弾を躱す。

 ジュ!

 追随し遅れた髪の毛が焦げる。

 躱すにしても前方に出るべきだった。髪は後方に流れて焼かれることは無かっただろう。

 大正時代に馴染み過ぎて、瞬発力が甘くなったか?

 以前の戦いで敵の学習が進んだか?

 グィーーーン

 空中で大回りして、敵を観察する。

 横須賀の街と軍港と背後の山がグルリと回る。

 遠くに駆逐艦や水雷艇の艦娘たち、半ば以上は擱座したり煙を吐いていたり。得物は構えてはいるが、足並み揃えて吶喊するほどの力は残っていない。

 大型艦はアレクサンドル三世のみ。

 ……やはりな。

 日露戦争から20年、正確には19年か。

 艦娘として具現化するには年月が浅すぎるんだ。

 海底に沈んで艦娘として復活するには、百年余りの年月が必要なんだ。

 横須賀上空に顕現した艦娘どもは、わたし達同様に、令和の未来からジャンプしてきたに違いない。

 それも、同時にジャンプできるのは、小型艦艇を除けば戦艦一隻に限られる。

 

 ズドドーーン!

 セイッ!

 

 アレクサンドル三世の第二斉射と、わたしが見切るのが同時だった。

 今度は身を沈めると同時に突進!

 

 ガシガシッ!

 

 すれ違いざまに風切丸を一閃させる。

 アレクサンドル三世の踵に手応え。

 500メートルほど飛んだところで振り返ると、二つのスクリューが夕陽に煌めきながら落ちていく。

 #$&‘=**%$#####*(ꐦ°᷄д°᷅)!!!

 ズドドーーン!

 なにか喚きながら、第三斉射を放つが、距離をとっているので、悠々と躱せる。

「やめろ! お前の相手なら、令和の時代に戻った時にやってやる」

 #$&‘=**%$#####*(ꐦ°᷄д°᷅)!!!

「これ以上やったら、そのまま墜ちて、戦艦とあろう者が横須賀の山の中で赤さびだらけになって朽ち果てることになるぞ」

 クソーーーーー!!

 いきり立つが、スクリューを失っては身動きが取れない。

 Это так раздражает! Это так раздражает!(ꐦ°᷄д°᷅)!!!

 魔法少女語に変換もせずにロシア語で喚きだすと、駆逐艦の艦娘が寄ってたかって主を移動させ、たぶん、そこが時空の狭間であったのだろう、残りの水雷艇と共に上空の一点で掻き消えた。

 

「あそこに妹が居ます」

 

 天城が指差したのは、横須賀海軍工廠の二号船台だ。

 最大戦速30ノットを約束された船体は流麗で、幅広の船台の両脇を道路一本分残るほどに絞り込まれ、艦首は令和の時代の新幹線を偲ばせるように鋭く、演技を控えた新体操選手の顎(あぎと)のように研ぎ澄まされている。

「その向こう側に居るのがわたしです」

 建屋を回り込むようにして進むと、一号船台に赤城よりも進捗して、上部構造物の工事に入っている天城の姿があった。

「天城の方が進捗んでいる……」

「竜骨にヒビが入っています」

「折れてはいないのね?」

「はい……だから、工廠の技師さんたちは悩んでいるんです」

「だろうね」

「二隻とも助けられないの?」

「みんな霧子と同じ気持ちよ」

「だったら……」

「震災前から海軍は苦渋の決断を迫られていたんです」

「ワシントン軍縮会議ね」

「ええ、わたしも妹も損傷を受けています。でも、わたしの方が進捗しているし、技師さんたちは一番艦のわたしを可愛く思ってくれています」

「同程度の損傷なら一番艦を残したい……」

「キールのヒビくらいなら直せるもんね」

「残された方は、おそらく航空母艦に改造されます」

 ああ、運命を知っているんだ。

「それには、工事が進捗していない方が都合がいいんです……」

「それだけが理由?」

「赤城の方が縁起がいいです、国定忠治が決起した山です『赤城の山も今宵が限り、可愛い子分のてめえ達とも別れ別れになる門出だ……』」

「『雁が鳴いて西の空に飛んで行かあ……』って、やつね?」

「ええ、日本人なら誰でも知っている。思いのこもった山です。赤城なら、将来起こるかもしれない戦いで、十分の働きをしてくれるでしょう。国民の人たちにも愛されます、まだ、船体ができたばかりの子ですけど、あんなに可愛いです。あの子なら、妹なら、きっと日本に吉を呼び込んでくれます(^#▽#^)」

 わたしは知っている、ミッドウェーで赤城がどんな死に方をするのか。

 三発の爆弾を受け、出撃間近の艦攻の魚雷や艦爆の爆弾が誘爆して手の付けられない大火災になって、最後は味方の魚雷で海没処分されてしまう。

 でも、そんなことを言って何になる。霧子も天城も、そんな先のことは知らないぞ。

「だから、赤城を、妹を助けてやってください」

「でも、どうやって?」

「わたしの竜骨を折ってください、そうすれば、技師さんたちも妹を選ばざるを得なくなります」

「そんな……」

「霧子、すまないが、先に帰っていてもらえるか。この先は天城と二人で話しがしたい」

「マヂカさん……」

「……うん、分かった」

「ありがとう、霧子さん」

 

 霧子を地上に下ろし、電車で帰すと、わたしは天城と日の暮れるまで話した。

 

 あくる日、海軍省から発表があった。

―― 横須賀海軍工廠において建造中であった戦艦天城の竜骨が震災の傷によって完全に破断したことを確認。艦政本部は天城を破棄、解体処分とし、二番艦赤城を航空母艦に改造せしめんことに決す ――

 

 わたしが、どんな風にやったかって?

 先に原宿の屋敷に帰った霧子は、思っていても聞かなかったわよ。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

 

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ライトノベルベスト『ちょっとした躓き・6』

2021-08-22 06:41:41 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『ちょっとした躓き・6』 




 上戸彩婦警が不機嫌な顔で、空気の抜けた人形のようなものを担いで帰ってきた……。

「またですよ、今度で三回目……」

 上戸彩婦警は、その抜け殻人形をソファーに投げ出した。

「困ったものね、矢頭萌にも」

 その名前にピンときて、人形の顔を見た。

「これ、AKRのモエチン?」
「そうよ、あの窪みに引っかかってから、妙なこと覚えちゃって、時々脱皮しては遊んでるの」
「脱皮……!?」
「一度もとの世界に戻ったんだけどね。今度は、わざと躓いて、こっちに来るの。で、こんなテクニック覚えて」
「脱皮が?」
「うん。脱皮しては、自分と体型が似た子に取り憑いて、あっちの世界で遊んでんの。あんまりやると元に戻れなくなるって、注意したんだけどね」
「こりゃ、あと二回が限度だね。抜け殻が薄くなってる。なんとか止めさせなきゃ……」

 天海祐希婦警が、爪楊枝を使いながら言った。

「でも、取り憑かれた相手も、どこへ行ったかも分からないし、あっちの世界じゃ手が出せないしな」
「やっぱ、戻ってきたところを掴まえて説諭ですかね……」
「もう、三回やった。聞くタマじゃないよあれは」

 三人の婦警さんがそろってため息をついた。

「あ、清水さん。あなた、わたしのこと婦警って思ったでしょ。わたしは女性警官なんだからね!」

 上戸彩さんが、マジで怒った。

「まあ、とんがるなって。今は矢頭萌のこと」
「でも、婦警なんて言われると、天海さんや宮沢さんになったような気になってやなんです……って、お二人のことがイヤってわけじゃ……」

 二人の婦警さんに迫られて、上戸彩婦……女性警官はタジタジだった。

「上戸……!」
「は、はい?」
「それ、良いアイデアかもよ。ねえ宮沢婦警?」
「ああ……」
 
 二人の婦警さんと一人の女性警官さんに見つめられ、あたしはアセアセ……。

「ちょ、や、やめてくださいよ!」

 あたしの叫びは虚しかった。逮捕術などで鍛えてるんだろう、あたしは天海祐希と宮沢りえの二人の婦警さんに身ぐるみ剥がされている。

 その横では、上戸彩女性警官さんが、抜け殻を裸にしていた。

「ようし、準備OK!」
「被疑者、いや適任者確保!」

 完全に素っ裸にされて、あたしは前を隠すのがやっとだった。

「ていねいにやらないと傷が残るからね」

 天海祐希婦警さんは、息も乱さずに上戸彩女性警官さんに注意した。

「分かってます。天津甘栗の要領なんですよね……」

 上戸彩女性警官さんは、モエチンの裸の背中に、器用に爪をあて、パカっと首からお尻の上まで開けてしまった。

「じゃ、清水さん、これ着て」

 と、抜け殻を渡された。

 まるで、ユルキャラの着ぐるみを着るようだった。でもダブダブ感はなく、背中の割れ目を閉じられると、自分の体のようにピッタリした。

 鏡の前に立つと、モエチンそのものが写っていた。ちゃんとスキンケアしてんだ。それが第一印象だった。

「見とれてないで、服……バカ、矢頭萌の方だよ!」
「着たら、これ飲んで」

 宮沢婦警さんが、飲み薬をくれた。

「なんですか、これは?」
「定着液。これで完全な矢頭萌になれるから」

 栄養ドリンクに似たそれを、あたしは一気飲みした。一瞬視界が二重になり、揺らめきながら、一つになると、モエチンの意識が浮かび上がってきた。例えて言うと、間違えて二重にコピーした紙のようなもので、片方に意識を集中すると、すっかりその人格になれる。あたしはモエチンに意識を集中した。

「あなた、お名前は?」
「矢頭萌、AKR48チームAのモエチンで~す♪」
「じゃ、しっかり、がんばってね!」

 あたしは、二人の婦人警官さんと一人の女性警官さんに見送られて、交番を後にした……。 

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