大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・236『朝顔としゃれこうべ』

2021-08-21 09:04:08 | ノベル

・236

『朝顔としゃれこうべ』さくら     

 

 

 朝顔が満開になった!

 

 きのう、午前中だけやけど、晴れたんが幸いしたんやと思う。

 青だけやと思てたら、赤やらピンクやらも咲いて、数えたら12個も!

 

「よし、みんなで写真撮るぞ!」

 

 お寺の朝は早い。

 早いところにもってきて、お盆も過ぎたんで、テイ兄ちゃんが家族全員を庫裏の前に集めた。

 ちゃんと、三脚の上に御自慢のデジカメが載ってる。

「よいしょっと……」

「そろっとねえ……」

 フラワーポットを台の上に置く。鉢植えのころとちごて、支柱が立ててあるので気ぃつかう。

「あ!」

「冷た!」

 支柱が揺れて、朝顔の露が顔にかかるのも嬉しい。

「ほんなら、娘三人は前でしゃがんで、お祖父ちゃん右、お父さんお母さんは左に……はい、ピース!」

 パタパタとサンダル鳴らして、テイ兄ちゃんはお祖父ちゃんの横に。

 

 ジイイイイイイイイ……カチャ!

 

「もう一枚」

 再びテイ兄ちゃんが走る。

 

 ジイイイイイ……

 

「しゃれこうべ」

 

 唐突に禁断のワードが浮かんできて、思わず口にしてしまう。

 プ(灬º 艸º灬)  プハハハハハ(#^w^#)  アハハハハハ(#^口^#)

 

「もう、さくら!」

 

 テイ兄ちゃんに怒られる。

「いくでえ!」

 ジイイイイイ……

 プ(灬º 艸º灬)  プッ(#^w^#)

 爆笑にはなれへんけど噴いてしまう。

「さくら!」

「ごめん!」

「いくぞ!」

「「「はい!」」」

 ジイイイイイ……

 プ(灬º 艸º灬)

「あかん、ハナ出てきた!」

「もう、さくら一人で笑てこい!」

「うん、ごめん!」

 笑いながら山門まで逃げる。

 アハハハ ハハ……ああ、おっかしい( ;∀;)……。

 

 こんな風に笑えるのは今のうちやと思う。

 で、しゃれこうべは、うちのオリジナルやない。

『けいおん!』いうアニメで、リツがポツリと言うんや。

 修学旅行の晩、仲間四人で寝てる時にカマしたのがツボにはまって、みんなで爆笑する。

 あれを半年前やったのを、つい思い出して。

 

 こんどやる時はオリジナルでカマしたろ。

 そう思て戻ると、おばちゃんがコップに入れた水をくれる。

 それを飲んで、自分の場所に戻ると、ブタネコのダミアが座ってる。

 ダミアを抱っこして――こいつ、また重なった(;'∀')―― そう思たら、笑わんと撮れました。

 

 夕方に見たら、すっかり朝顔はしぼんでしもて、西の空には切れ端やけど、久々の虹がかかっておりました。

 

 

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ライトノベルベスト『ちょっとした躓き・5』

2021-08-21 06:39:43 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『ちょっとした躓き(つまずき)・5』 




 交番に戻ると宮沢りえがいた。むろん女……婦人警官の姿だった。

 なんで、自分の家さえ満足に見えなかったあたしが、制服の違いにすぐに気づいたかというと、昔の制服の天海祐希婦警が、まだいっしょにいたからだ。

「あら、お帰り。どうだった、あんたの家は?」
「見えなかったでしょう?」

 宮沢りえが当然のように言った。

 宮沢りえ婦警は小さな不幸に見舞われた。

 ゲホゲホゲホ……

 食べかけたいなり寿司を喉に詰まらせてむせかえった。

「いいえ、見えました」

 あたしが予想に反した答をしたから。

「な、なんで見えたの、んなわけないんだけど!?」

 天海祐希婦警が、いなり寿司を箸で挟んだまま、身を乗り出した。

 あたしは、大伯父さんとのいきさつを話した。

 そして、その後、もう一度自分の家を見に行ったことも。

 二回目は見えた……ただし大伯父さんの時代の我が家が。三十坪は変わらなかったけど、木造の二階建てだった。むろん玄関は一つだった。

 走馬燈のようにって、ラノベで覚えた美しい言葉が浮かんだ。

 あれは、多分ひいひい祖父ちゃん。それが真ん中になり、その右隣にひい祖父ちゃんとひい婆ちゃん。左隣がひいひい婆ちゃん。五十代と三十代というところだろ。

 ひいひい婆ちゃんの隣にはハチ公によく似た秋田犬が座っていた。

 後ろには学生服。顔つきから観て太郎大伯父さん。その横のセーラー服が、わたしと同じ名前の大伯母さん。抱かれている赤ん坊は、多分二郎祖父ちゃん。

 なんかの記念日なんだろう。玄関に日の丸が立っていた。

「皇太子殿下と同じ月の生まれだなんて、幸せなやつだ」

 ひいひい祖父ちゃんが、そういうと二郎祖父ちゃんは、お母さんの手に戻され、ズボっとフラッシュがして写真が撮られた。だれもふざけたりピースなんかしないけど、みんなカチンコチンの銅像みたいだった。

 だったけど、そこには確実に家族がいた。

 次は、獅子舞が出ている。

 ひいひい婆ちゃんを筆頭に女子はみんな着飾って、男子は着物。ひいひい祖父ちゃんは、羽織に袴、頭にソフト帽を被っているのがおかしかった。

 そのあとは葬式だった。

 下の八畳間と六畳間をぶち抜いて、白黒の幕……近所のひとの話から「クジラ幕」というらしいことが分かった。棺の向こうには、最初に見たひいひい祖父ちゃんが写真に収まっていた。

 ビックリするほど沢山の人が参列していた。

 あたしも思わず手を合わせたら、写真はひいひい婆ちゃんに変わっていた。太郎大伯父さんが、紺色の制服……胸に翼のマークの徽章が付いている。多分海軍の飛行学校にいる時期だろう。

「これで、明治ヒトケタは、あたしだけになっちまった……」
「なに言ってんです。明治でくくりゃ、あたしたちだって。ねえ、お父さん」

 ひい婆ちゃんが言うとみんながうなずいた。

「なんか、大正生まれは肩身が狭いな」

 大伯父さんが頭を掻く。

「その大正生まれが、もう予科練卒業だ。時代だね!」

 近所のおじさんが、感極まったように言って、暖かい笑いが満ちた。

 それから、今にいたるまでの清水家の歴史が、大河ドラマの総集編みたいに流れていって、最後は味気ない二世帯住宅の、見慣れた我が家になった。

 祖父ちゃんが、黒服で昔の写真と、今の我が家を寂しそうに見比べている。

「祖父ちゃん、いくよ!」

 あたしの声がした。

 祖父ちゃんは、瞬間怒ったような顔になったけど、すぐに優しい顔になり答えた。

「すまん美恵ちゃん、いま行くよ……」

 そうだ、これは去年お祖母ちゃんの家族葬に葬儀会館に行くところだ。あたし、お祖父ちゃんが、あんな顔してるの、ぜんぜん気が付かなかった。

 我が家の数十年を数分で見てしまった。

 そして、今までなにも見ていなかったことに気がついた。

「そう、得難い経験をしたのね」

 天海祐希婦警が、ちょっと見なおしたというような顔で、あたしを見た。

「でも、大伯父さんに会えたなんてね……あの時代から、あの窪みはあったんですね」

 宮沢りえ婦警もしみじみした。

「あんた。清水さんだったわね。あんた、ひょっとしたら、案外見込みがあるかも……」

「あたし?」

「うん、大伯父さんの時代と、今とじゃ窪みの意味が違うの。それが偶然だとしても、会えたというのは、ロトシックスに当たるようなもん」

 そのとき、上戸婦警が空気の抜けた人形のようなものを担いで帰ってきた……。

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