大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やさかい・224『8月6日 朝』

2021-08-06 08:26:26 | ノベル

・224

『8月6日 朝』さくら      

 

 

 うちと留美ちゃんは10キロ。

 詩(ことは)ちゃんは8・5キロ。

 

 おんなじ道を走って、サイクルコンピューターの数値が違う。

「もー、くそ兄ヽ(`Д´)ノ!」

 アブラムシの件もあるんで、詩ちゃんは、またもや激おこぷんぷん丸の兆候や。

 ちょうど本堂では朝のお勤めの最中で、おっちゃんとテイ兄ちゃんのお経の声がしてる。

「あ、ちょっと待って……」

 本堂を睨む詩ちゃんを留美ちゃんがなだめる。

「あの……詩さんの自転車、大きくないですか?」

「「え?」」

 言われて、まじまじと自転車を見比べる。

「あ、26インチですよ!」

 留美ちゃんが発見。

「え、26?」

「よく見てください、微妙にタイヤの直径ちがうし……あ、タイヤにも26って……」

「あ」

「ほんとだ」

「え?」

 うちひとり意味分かってへん(;'∀')

「これって、スポークに付けた磁石をセンサーが感知することで数値を出してるのよ。だから、タイヤが大きいと、それだけ数値が小さくなる」

「え、どういうこと?」

「わたしとさくらは24インチ、詩さんのは26インチだから、タイヤの外径は7インチちかく大きい……つまり、タイヤが一回転すると、26インチのほうは、20センチほど多く進んでるわけ」

「そうだよ、サイクルコンピューターの設定は、きっと三つとも24インチの設定になっていたんだ。だから、わたしのは数値が小さく出るんだ!」

「え、あ、ああ……よう分からへん(^_^;)」

 機械と数学には弱いんです。

 朝のお勤めが終わったテイ兄ちゃんが、正しく設定してくれて一件落着。

 

  明けて、今朝は令和3年8月6日

 

 昨日と同じように、朝ごはんのあと朝顔に水をやって、自転車で近所を周る。

 近ごろではめったに見かけへん旧型の郵便ポストを発見。

「やあ、珍しい」 

 ほら、円筒型で帽子を被ってるみたいなポスト。

「スマホがあったら写真撮ったのにね」

「せやねえ……」

 

 ウ~~~~~~~

 

 残念がってると、小さくサイレンが鳴る音がする。

 え?

 瞬間不思議に思てると、近所の家のテレビから聞こえてくるんやと気が付く。

「あ、広島の原爆の日だよ」

「あ、そうか、8月6日だ」

 数秒じっとしてると、留美ちゃんが静かに手を合わせてる。

 うちも詩ちゃんも、それに倣って小さく手を合わせる。

 

 パシャリ

 

 シャッターの音がしたんで、戸惑って振り返る。

「おはようございます」

 神妙な顔して立ってたんは、文芸部唯一の後輩、夏目銀之助。

「すみません、絵になるんで、つい撮ってしまいました」

 銀ちゃんは近所のコンビニに行く途中、自転車の美少女三人を見かけて、それがうちらやと気が付いてシャッターを押したらしい。

 その場で、うちのスマホにも送ってもらって、帰ってから見ると……。

 まるで赤い墓標に手を合わせてる女学生。

 偶然やったんやろけど、ちょっとシミジミした朝でした。

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ライトノベルベスト〔UFO〕

2021-08-06 06:17:24 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

UFO〕   




 UFOからなにを連想する?

 カップ焼きそば……ごく当たり前。
 ピンクレディーのヒット曲……まあ、普通。ただし、40歳以上かな?
 ピンクベイビーズのデビュー曲の一つ……かなりの情報通。先見の明ありということかも。
 大銀行……あれはUFJで、銀行の勘違い。
 空飛ぶ円盤……王道だけど、ちょっとオタクかな?

 UFO……(U)ウンコ(F)踏んじゃった(O)女の子……こんな連想はない。

 でも存在はしている。

 今のあたし!!

 三年生が引退して、クラブは二年と一年。で、あたし犬養花野(かの)はなりたての副部長で、部活のあと新部長の美知と打ち合わせやって、帰りが6時を回ってしまった。美和は自転車、あたしは学校裏の路地を歩いていた。短い夏はさっさと過ぎてしまい、朝晩は涼しげな秋の始まり。お腹が空いたのと、家に着くころには暗くなることを考えてのショートカット。

 一本向こうの街灯が切れかかってチラチラしていた。で、真下を通った時にショックが二つ。

 街灯が突然切れた。そして何かをグニュっと踏んづけて足が滑った。

 一瞬なにごとかと思ったが、数秒後の臭いで分かった。あたしは犬のウンコをまともに踏んづけていた!

 次の街灯の下で、足元を見ると、黒のローファーが半分ウンコで茶色になっている。

 17年の人生で初めてウンコを踏んづけたあたしは、うろたえた(;゚Д゚)。

 まず道にこすりつけた……これがよくなかった。取れたのはほんの二割ほどで、逆に靴の中ほどの高さまで広がった。
 仕方ないので、次の街灯の下までケンケンで行って、靴を脱いでティッシュ……で、拭き取れる量じゃなかった。拭いてる最中に手に付く恐れが大きい。そこで落ちてた新聞紙を揉んで心持柔らかくして、粗々にこそげ落とす。そしてなけなしのティッシュで残りを拭き取る。見かけはだいぶまし。だけど、靴底の縁と靴本体の隙間に入り込んだのが、なかなか取れない。

「よお、犬養。なにタソガレてんの?」

 憧れの軽音の先輩、岸田竜太。新入生歓迎会の演奏でビビッときて入部しようかと思ったんだけど、なんせ100人を超える大所帯。オーディションで落っこちた。で、今の演劇部にいるんだけど、心情的には今でも大ファン。演劇部が年々縮小にある中「いっそ舞台系の部活合同したら」と部長会議で提案。とりあえずコント部と演劇部が合同で文化祭をやることになっている。軽音の部長というだけじゃなくて、クラブ活動全体のリーダーとしても尊敬も期待もできる。その岸田先輩が、よりにもよって……。

「……犬養、おまえ、ひょっとしたら、ウンコ踏んだ?」

「え……あ、いや、その(^_^;)……」
「このあたり、ときどき見かけるんだ」
「いえ、その……」
「そのこそげ落としたあとと臭いでわかるよ」
「あ、大丈夫です。ティッシュでほとんど取れたし。もう平気です」
「俺んちこいよ、すぐそこだから。足23だろ。妹と同じサイズだから、それ履いて帰れよ」
「え、どうしてサイズ分かるんですか!?」
「俺、そういうのに強いの。なんならスリーサイズ当ててやろうか?」
「いえ、それは……」
「冗談だよ。靴底のサイズが見えてる」
「ア、アハハ、そうなんだ。でも、ほんといいです。帰るの遅くなるし……」
 ほんとは、この真っ赤な顔をもろに見られるのやだったから。
「そうか、そのためにショートカットしたんだもんな。しかしマナーの悪い飼い主もいるもんだな。お袋に町会で言っといてもらうよ。これ、効くかどうかわかんないけど、汗用の消臭剤……ちょっとはましか」
「あ、ありがとうございます(#*´ω`*#)」
「じゃ、文化祭がんばろうな(^▽^)」

 先輩は行ってしまった。

 だいぶ臭いはましになったと思うんだけど、すれ違った猫が睨んでいく。道筋の飼い犬が吠える……まだ臭うのかな。

 駅前に出て、迷った。

 狭い電車の中。それもラッシュ時間帯。きっとバレてしまう。ひょっとしたら、あたしが漏らしたんじゃないかと勘違いする人がいるかもしれない。

 あたしの足は、駅前をスルーしてしまった。けっきょく電車には乗らずに家まで歩いてしまった。

「花野、あんたウンコ踏んできたでしょ!?」

 お母さんには、すぐバレた。やっぱ電車に乗らなくて正解だった。

 その晩夢を見た。気が付いたらUFOの中。あたしは裸で、銀色の手術台みたいなとこに寝かされていた。宇宙人が二人いた。

「これに間違いないのか?」
「ああ、マーキングの入った餌を食べさせておいた。その反応がしている」
「しかし、これは人間だぞ」
「擬態かも……」
「犬が人間に?」
「その逆かもしれません。いずれにしても、地球のテクノロジーは予想以上のもののようだな」
「こんな星に入植しても、すぐにバレて行き詰ってしまう」
「しかたがない。地球は諦めるか……」

 気が付くと、自分のベッドで寝ていた。妙なことに、あたしはパジャマも着ずに裸で寝ていたことに気づいた。バスタオルが床に落ちていた。あたしってば、お風呂からあがって、そのまま寝てしまったんだろうか?

 とにかく、道を歩くときには気をつけよう……。

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クレルモンの風・3『あまくないぞ、クレルモン』

2021-08-06 06:00:36 | 真夏ダイアリー

・3

『あまくないぞ、クレルモン』   




 クレルモンの風は爽やかだ、しかし甘くはない……。

 アランが、その喜びを伝えにきたとき、思わずバンザイ。スカートが落ちて、アミダラ女王のおパンツが知られてしまった。アグネスが、一瞬でスカートを引き上げてくれたが、アランの顔つきで、アミダラ女王の頬笑みが伝わったことが分かった。

 オトコの感覚はインターナショナルであることを学習した。

 フランス語も、こういう具合に学習できるならいいんだけど(^_^;)

 希望通り、仏文には行けなかった。言葉の壁である。アグネスが日本文学なので、そっちに回された。条件の一つが、アグネスが面倒を見るという一項があったから。

『神に誓って』

 アグネスは、アランを神父さんに見立てて、本気で誓ってくれた(あとで、分かったけど、アグネスが本気らしいときはジョ-クであることが多い)
 それから、当分講義の半分近くは、付属の語学学校で、みっちり絞られること。週に一回の交流会では、必ず三分以上のスピーチをすること。それもフランス語で(カンペ可) 

 頭痛いよ~(+д+)!

 あとはアランの個人的な注意事項だった。

『留学生はいろんな国からきているので、相手の文化は尊重。とくにアラブの学生に日本人は無頓着だから、気を付けて。食べ物とかラマダンとか。人と話すときは、相手の顔を見て話すこと。いいかげんに頷かないこと。笑顔は大事だけど、イエス・ノーは、ハッキリ伝えること。それからハグと唇以外のキスは挨拶だから慣れて。こういうふうに』
 アランは、ハグして、ホッペにキスした。

 え( ̄□ ̄;)!?

「こういう具合に、オトコは近寄ってきよるから、気いつけなあ」
『なんて、言ったの?』
『あとは、あたしが言っとくという意味のことを言ったの』
『ああ、ルームメイトだからね。アニエスで分からないことがあったら、いつでもどうぞ。あ、晩ご飯の時、簡単に自己紹介して。今日は日本語でいいよ。アニエスが訳してくれるから』

 やっと、アランが出て行った。

 で、シャワーを浴びると、アグネスと打ち合わせの間もなく晩ご飯になった。まさか全員揃っているとは思わなかった……というのが、アグネスの感想だった。

 三十人近い学生が、てんでバラバラにしゃべり出す。

『まずは、新入生の話を聞くのが礼儀よ。まだ、フランス語に慣れてないんで、今夜は、あたしが訳します』

「えと……ユウコ・スノウチって言います。フランス語ではユコ・シュヌーシって発音になるそうです。日本の近代文化は、フランスとドイツが基礎になって、その上にアメリカ文化が乗っかっています。この百五十年ずっとメートル法使ってるし、そいで源流の一つになっているフランスで勉強することになりました。どうぞよろしく」

 アグネスが訳すと、暖かい拍手や口笛が、聞こえてきた。他の学生の簡単な自己紹介に入ろうとすると、突然日本語で抗議が入った。

「同学の者として歓迎します。ただ須之内さんの不足分を補足します。日本文化の最底辺にあるのは中国文化です。あなたのお名前。こう書きますよね」

 その、わたしが見てもチョー美人が、スケッチブックを広げた。鮮やかな書体で「須之内優子」と書かれていた。

「失礼、わたし中国の上海から来てる宋美麗。よろしく」

 美麗はすぐに、それを流ちょうなフランス語で訳すと、さっさと座り、一瞬場が凍り付いた。

『ぼく、イタリアから来てるアルベルト・モンタギュー。よろしくヨコ!』

 いかにもイタリア人らしいアルベルトが、雲間を押し分けて顔を覗かせた太陽のように言った。
 すると、たちまち雰囲気を変えて、みんなが次々に名乗っていった。みんな、とってもフレンドリーだった。美麗でさえ……。

 なんと、みんなが、わたしの食事が終わるのを待っていてくれた。
 
 そうして、あたしとアグネスが席を立つと、一斉にあたしに挨拶をしてダイニングを出て行った。

 挨拶といってもさまざま。美麗はニッコリ口だけ微笑んで。握手だけの人、ハグしてくる人、ホッペをすり寄せてくる人。アランのように軽くキスする人。イタリア人のアルベルトは、もっとも唇に近いホッペにキスされた!

 部屋に帰ると、お世話になったメグさんにFBでお礼と、今日の様子。そして素敵な大学の玄関のシャメを付けて送った。

 追伸 メグさんへ

 この大学の寮のトイレットペーパー、とても幅が狭いんです。使いにくいったらありゃしない!

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