『パリの空気50㏄』
レディ・メイド:ガラス製アンプル、高さ13.5㎝、円周20.5㎝
パリの空気?空気は無色透明・無臭の気体であり酸素1、窒素4を主体とする気体である。地球を取り巻く大気圏の最下層の気体であれば、地球上ほとんど同質である。(湿度には差がある)
このアンプルの中身を『パリの空気50㏄』と称している。ガラスの体積を考えると50㏄では足りない。では他の地域の空気との混合?(そんなことは出来ない)
つまり「パリの空気50㏄」と言えば、真偽ではなく確定なのである。見えていない対象に対する解釈は自由である。
見ることと見えること、見えていない物の存在を言葉に置換出来るだろうか。
見えていない物に対する証明、形をもたない物を封じ込め決定的な説明を付加することは簡易な設定においては困難である。
「この中にはパリの空気50㏄が入っているのか」という肯定(納得)には疑惑(否定)が浮上する。肯定と否定、不可視なものに対する決定は鑑賞者を不穏に陥れる。
「存在とは何か」であり、「見えているものが存在の総てではない」ということを再認識する。
物理的な条件は心理的な条件を限定する傾向にあるが、精神はその否定の上に自由に開かれているに違いない。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschen.com)より