続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

若林奮『1-1-6〔無題〕』

2019-09-03 06:57:39 | 美術ノート

   『1-1-6〔無題〕』

 蝉だろうか、羽がついている。
 飛ぶというより地上を這っているような感じである、しかし見ると、八本の足は宙に浮いている。
 腹部、下半身が飛行を困難にしている。飛行の経由である空間が塊になって蝉の後部を引っぱっている。否、押しているというべきだろうか。

 飛翔におけるエネルギーが束になって蝉の後部に残存している。
 蝉は見た目ほどの重量はなく骸などは風に吹き飛ばされるほどに軽い飛行物体である。

 空を飛ぶことへの憧憬。観察者は空に浮き、しかも飛ぶこと(翅の振動)の可能な蝉の自由な通路について考えるが、悲しいかなあの構造を以て長く飛ぶことはできず(上限一分くらいと言われている)直進あるのみらしい。

 蝉の猛進、留まることで永らえる生命体への共感。
 蝉が地上に落ちているときは、すでに死期を悟り(?)幾ばくも無いエネルギーを温存している状態である。
 作品の蝉は足を挙げている、まさしく生きようともがいている。
 この哀れ、この情感! 詩であり、哀惜の念である。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展より・神奈川県立近代美術館


『セロ弾きのゴーシュ』93.

2019-09-03 06:48:20 | 宮沢賢治

楽長はポケットへ手をつっ込んで拍手なんかどうでもいゝといふやうにのそのそみんなの間を歩きまはってゐましたが、じつはどうして嬉しさでいっぱいなのでした。みんなはたばこをくはへてマッチをすったり楽器をケースへ入れたりしました。


☆絡(つながり)を重ねていく趣(考え)である。
 個(一つ一つ)に迫(せまる)趣(考え)がある。
 換(入れ替えて)部(区分けする)記である。
 絡(つながる)記は新しい。


『城』3257。

2019-09-03 06:22:35 | カフカ覚書

 エルランガーは、別れの挨拶がわりにKにうなずいてみせ、従僕から渡された帽子をかぶると、いそいで、と言っても、すこしびっこを引きながら、廊下を遠ざかっていった。従僕はそのあとからついていった。


☆彼はKに肯きながら別れた。差し出された帽子をかぶり早くも、しかしながら、うまくいかない経過に従って行った。