続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

D『折れた腕の前に』

2021-08-11 06:38:42 | 美術ノート

   『折れた腕の前に』

 雪かきシャベル:レディメイド(木、鉄に亜鉛メッキ)
 折れた腕の前に《雪かきシャベル》、使用目的がある物の前に目的を成就できない者がいる。
 使用目的のあるものは、そのまま使用目的のあるものとして存在するが、前に立った者の腕が折れていたのではそれを使用することはできない。

 意味の破綻、供給があって需要がある。しかし、供給があって需要に不具合がある場合、需要供給の一致は無に帰してしまう。
 この不一致に望みはなく、沈黙が潜むだけである。

 関係性の破綻、意味を失くしたものの処遇。不要であることの哀しみ、存在の意義を追及する作品である。
 存在者の権利・義務を高らかに歌えず、欠損の怒りが静かに渦巻いている。正義も悪もない平等であるはずの存在における《圧》は世界中どこでも発見可能である。
 動かしがたい暗黙の亀裂、関係性を問う空間には答えのない悲哀が其処彼処に順列を乱しているが、黙認、無視は問題を浮上させない。


 写真は『DUCHAMP』 www.taschen.comより


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