人物は多少前のめりであるが、傘があるので違和感がない。要するに笠があっての人物である。
故に人物は(立っている人物)として認識される。
しかし、立ち位置の水平面(床もしくは地面)が描かれていない。
立っているように見えるだけであり、浮いているかもしれない。しかし、人が浮くわけがないという物理法則による信念があるので、決して浮いているとは思わないだけである。
しかも、下には「座った人物」という文字がある。違和感というより断固とした否定が過る。
しかし、相反する状態の表記によって、鑑賞者の中に《立つ→座る、座る→立つ》という回転運動が生じる。軸における力学的線分の転換は確かに内在するものである。
したがって全くの否定ではなく、肯定を含んだ否定ということになり、作品は総合的な解答を示した『模範例』という意を潜ませている。
傘は連作において地球に置換されている。傘(地球)に支えられているが、傘(地球)を持ってもいる。
つまり、地球の中のわたくし(人物)であり、わたくし(人物)の中の地球である。
(写真は国立新美術館『マグリッㇳ』展/図録より)
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