『快楽』
純白の縁取りのある着衣の少女が、その手で鳥を食いちぎっている。仲間の鳥たちは見るともなく観察している。長くとがったくちばしも王冠のような羽毛も何の役にも立たず、ただ傍観するのみである。
食物連鎖、実に恐ろしきは食物連鎖だと鳥たちは抗う力もなく背後で見ているだけである。
『快楽』の正体である。
弱肉強食、生命を犯し至上の喜びを得ることの正当性。少女の顔は無垢な瞳を消し、餓鬼を内在させているようにさえ思う絵の様相である。人智を尽くし富を得、人類は世界を我が物にして『快楽』を貪る。
食物連鎖、世界を支配する人類の『快楽』を肯定する非情の図である。
写真は『マグリット』展・図録より
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