関西老舗電鉄株主総会風景
江嵜企画代表・Ken
阪神なんば線が開通して多少元気が出ていると思った某在阪大手電鉄会社の
株主総会を覗いた。ところが暗い話がほとんどだった。10時半過ぎからはじまった
質疑応答が何と午後1時20分までかかった。
まず株価が安いといきなり株主が噛みついた。ある株主は1000円以上で買った
株価が今は250円だと言った。今期、不祥事が4件も発覚した。関連会社の社長
は全て親会社からの天下りだから完全になめられている。全て親会社の経営者の
責任だとまくしたてた。
社長さんは、おそらく意識的だろう、手を挙げた株主全員に質問の機会を与えた
ことが大幅な時間延長の原因である。2時間近く株主の質問を聞いているとなぜ
株価が低位に放置されていたかよく分る。500キロ以上の路線は日本一の長さ
を誇るが、沿線の駅の7割がほとんど客の乗り降りがないということを初めて知った。
学生割引率は80%と大きいが、少子高齢化で特に通学生徒の絶対数が大幅に
減った。団塊世代の退職が始まり通勤客も大幅減で、しかも、長期景気低迷が
追い打ちをかけた。
特急がカラで走っている。昼間時間をもてあましている年寄りに優待券を出して
電車に乗せたらどうかと提案する株主もいた。遷都1300年などイベントを
やった。お伊勢さん参りにひっかけて「回らんやんせ」など特別企画の切符を
売り出したが決定的起爆剤になっていないという。
百貨店の採算悪化は特に厳しいと素直に認めていた。不動産、レジャ―部門の
不振が響き、巨額の有利子負債が大きな負担になっている。少しでも有利子負債
を減らしなんとか自己資本比率を上げて行きたいと宣言した。今後は大口投資は
増えない。これからはその回収期に入る。今少し長い目で見てやって欲しいと
社長さんは株主にひたすら理解を求めて、なんとか株主総会は閉会した。
日本は65歳以上の人口が3000万いる。その多くが元気である。昼間時間を
もてあましている。お金も持っている。特に65歳以上のご婦人を昼間電車に
乗せることを真剣に考えろと発言した株主がいた。全く同感である。
「昼得」切符制度が関西では かなり普及している。当社はライバル電鉄が並行して走って
いない。そのあたりの「感度」が鈍いかもしれない。ご婦人は必ず友達と出かける。
電車にただ乗って帰るようなことはしないとある株主は力説した。
貴重なご意見賜りました。検討させていただきますと担当役員さんが応じた。
一年後の株主総会で果たしてどうなっているだろうか。要はスピード感覚を
持っていかに具体的に行動するかであろう。これは電鉄会社経営にとどまらない。
この先10年、日本の企業全てが正面から取り組まねばならない課題であろう。
関電から節電要請は来ているのかとある株主が質した。社長さんは
10%の節電要請を受けている。電力消費のピーク時が乗降客の少ない
昼間なので出来るだけ協力したいと考えていると社長さんは答えた。
電鉄会社の株主総会だったが、まるで日本の縮図だと実感して会場を
後にした次第である。(了)