中国問題専門家の評論家、石平氏の講演会
画・江嵜 健一郎
中国問題専門家の評論家、石平氏の講演会が26日(土)午後6時45分から大阪府社会福祉会館であり楽しみにして出かけた。33兆円の債務が明るみに出た中国不動産大手の恒大集団の話から始まると思ったら違った。
「本日は時事問題からです」と口火を切り「今、菅総理は日本、米国、豪州、インドのクアッド首脳と会談中と思はれます。クアッド(Quad)は去年2020年に中国に対抗する目的で出来た。インド太平洋を4国が共同で守るためです。中国包囲網の始まりです。」と話し始めた。
「今年2021年3月、日米2プラス2、両国の外務と国防の大臣が会談、中国の行動を名指しで反対する共同声明を出した。50年前、日米はソ連の脅威を念頭に日米同盟を締結した。89年にベルリンの壁が崩壊した。ロシアの脅威が事実上なくなった。日米同盟の存在意義が失われた。対ソの日米同盟が今回対中国の日米同盟に変わった。それが日米の2プラ2で確認されたのです。4月、菅総理がアメリカを訪問の際、台湾を守る日米同盟が確認された」と話を進めた。
「今年6月、本来中国の脅威がなかったNATOが矛先を中国に向けた共同声明を出した。英仏は4月に自衛隊と共同演習をした。離島を中国が占領すれば日本と欧州は共同で戦うことを示した。7月、8月、9月とイギリスの空母、クイーンエリザベスが南シナ海で自衛隊と共同訓練をおこなった。イギリスは中国の友好国だった。その英国が変わった。9月、米、英、豪の安全保障の枠組みオーカス(AUKUS)が作られた。これで中国包囲網が完結した。ドイツまでが人権問題では39か国を代表して中国を非難した。16年間、中国を18回訪問したメルケ首相は退任する。何が言いたいのかというと、世界が中国をめぐって変わったことです。新しい冷戦時代が始まったということです。」と一気に話した。
「一方、中国はどうか。」と講演の半ばを過ぎて初めて中国の話に移った。「中国は9月に突然、TPP加盟を申請すると言い出した。TPPはそもそも中国を排除するためにつくられた貿易枠組みだから中国が加盟できるはずがない。あとを追うように台湾がTPP加盟を発表した。習さんのやることが無茶苦茶になってきた。」と話したあと、ここで恒大問題に話が移った。
「恒大は1996年に数人で始めた。それが中国で1,2の巨大会社になった。その会社が33兆円の負債をだした。不動産バブルの象徴の会社です。お金を借りてはビルを建て最近はサッカー競技場まで始めた。中国のGDPは100兆元です。その内不動産産業1つで14.14兆元まで占めるまで拡大した。巨大なビル、建物は夜になるとまっ暗になります。人が住んでいないからです。」と説明した。
「恒大だけで済まないでしょう。次はどこかが分からない。バブルは次々はじける。資金がない。値下げして売るからさらに下がる。今そんな不動産バブルがはじけている状態なんです」と話を置いた後、正面の黒板に李光満(リー・コアンマン)という人物の名前を大きく書いた。
「中国政府は芸能界のスターを批判し、そのファンに対する管理まで始めた。「共同富裕」というスローガンを発表した。もうけ過ぎだとアリババは気の毒に税金を上乗せして納めた。ゲームはアヘンだと警告した。学習塾に時間制限を課した等々。次々出てくる一連の中国の行動をSNSに投稿して賛美する」男が突然出て来た。その男が李光満という人物です」と紹介した。
1時間半の講演を書ききれない。講演のあと4人が質問した。最初の一人は「CO2削減ではまだ中国は必要ではないか」と聞いた。石平氏は「商売ではそうでしょう。中国の危険性への認識はまだできていない。ほどなく選択を迫られるだろう。」と答えた。次に「中国の軍事力の脅威はないか」と聞いた。石平氏は「西側がようやく中国の脅威がわかりはじめた。その答えが中国包囲網だ。」と答えた。3人目は「中国の洪水被害は」と聞いた。石平氏は「今年はそれほどでないようだ」と答えた。最後に「中国の中東政策は」と聞いた。石平氏は「プーチンがどう出るかだ。プーチンはロシアの脅威は中国と認識している。」と答えた。(了)