以下に、医療者の大塚晃志郎さんの文章をご紹介しますが、ここで語られている「ヒポクラテス」を「ソクラテス」に、「医療・医学」を「恋知・哲学」に置き換えてもほとんどそのまま通用する話です(ただし、ソクラテス全集はないので、『ヒポクラテス全集』は、『プラトン全集』に置き換える)。
ヒポクラテス医学大賞の受賞と21世紀の医療
ホリスティック医学研究所 所長・ヒポクラテス・コス財団名誉会長
大塚晃志郎
現代では、ヒポクラテスの医の倫理と規範についての評価は、大学医学部や医療機関などで、お題目として存在しても、ヒポクラテス医学の根本の発想や本質についての評価はなされておらず、ヒポクラテスは、ただ骨董品のように銅像として飾られるばかりになってしまっている。
ところが、『ヒポクラテス全集』をひも解き、その本質を洞察していくと、驚くべき発見があった。というのは、実はヒポクラテスの医学が、西洋医学のルーツであり、西洋医学を象徴するものでありながら、実は、現代西洋医学とは根本的に異なった発想に基づくものであり、むしろ東洋医学を含めたアジアのさまざまな伝統医学の発想に数々の共通性がある、という驚くべき事実であった。すなわち、医の原点の発想において東西の医学と医療は、もともと同根であったことを発見し、驚愕させられたのである。
また、医の原点の発想を理解することにより、そこから、これからの21世紀の新しい医学と医療についての大きなヒントとビジョンをかいま見ることができ、まさに「古きをたずねて、新しきを知る」ということを痛感したものであった。