わたしは、昨日(3月20日)、法政大学での「大原社会問題研究所100周年記念シンポジウム」に参加しました。
大原社会問題研究所は、1919年に大原孫三郎と高野岩三郎の強い志をもつ二人の個人からはじまった財団で、恐ろしいほどの業績を上げました。その研究や調査の内容は、統計学の日本のパイオニアである高野を頭にしたために、東大や京大を上回る圧倒的なものでしたが、大原の実業の危機で1937年に資金難となり、その後は紆余屈折でした。
労働者、庶民の生活の実際を正確に把握するために彼らの生活に入り、同じ人間としての愛情をもって研究した高野らの「統計学」は、生きて血の通ったもので、現代では失われてしまいましたが、大原社研の方法は原理上正解で、それ以外はあり得ないでしょう。
敗戦後には、徹底した民主主義者で労働者の味方であった彼らは、引っぱりだことなり(高野は改組された初代NHK会長、弟子の森戸辰男は文部大臣、やはり弟子の大内兵衛は吉田首相から頼りにされ・・・)また、彼らは、現日本国憲法の骨子となる憲法草案を作成したのでした(文章をまとめたのは高野に指名された鈴木安蔵)。
1937年以降は、偉大な大原社研はタイヘンな財政難でしたが、戦後に法政大学に移されたことで存続し、100周年を迎えることができたのです。ただし、個人の強い理念を貫ける財団ではなく、大学という大きな組織に組み込まれた(そうせざるをえなかった)ために、「偉大」や「感動」は消えました。
昨日の会は、高野岩三郎らのフィロソフィー(意味論と本質論)の探求が弱く、迫力に欠けましたが、今後、初心の志を活かして(戦前の政府さえ動かすパワーをもっていた)、大原社研の活動を支えた思想の探求(共和制と労働の哲学など)をぜひしてほしいと思います。ただの事実学ではなく本質学をはじめよう~~! 現研究者=教授連にエールを贈ります。現状を打開する豊かで深い探求、常識をうちやぶる思想と行為をぜひ!!
武田康弘