最初の写真は、染谷裕太君が、2018年7月に撮影したデルフォイの俯瞰とソクラテス教室のマスコット人形のソクラテス。
これは、裕太君が4か月以上をかけた「エーゲ海、古代哲学の旅」での貴重な一枚です。クルレンツィス+ムジカエテルナ(クルレンツィスが30代の時に組織したスーパーオーケストラ)と彼の同伴者たちが、このデルフォイでベートーヴェン交響曲7番を演奏したちょうど3年前の写真です。
その後の写真は、プロモーションビデオ(クリックしてください。9分間です)からです。
なぜ、クルレンツィスらは、ソクラテスが神託を受けたデルフォイ(デルポイとも表記されるが、現代ではDelphiは、デルフィー・アクセントは最後のphi)で、ベートーヴェンを演奏したのでしょうか?
そもそも、ソクラテスがデルフォイで受けた神託とは何か? ご存知でない方も多いと思いますので、以下に記します。
ソクラテスがデルフォイの神殿で神託を受けてから、有名な【ソクラテスの対話】が始まるのですが、それは弟子のプラトンにより「対話編」として残されています。もっとも多く読まれてきたのが「ソクラテスの弁明」で、そこには以下のように記されています。
「私は、デルポイに出かけていって神託を受けることをあえてしたのです。
それはつまり、私よりだれか知恵のある者がいるどうかということを、たずねたのです。すると巫女は、より知恵のある者は誰もいないよ答えたのです。・・・いったい神は何を言おうとしているのだろうか。いったい何の謎かけをしているのだろうか。なぜなら私は、自分が大にも小にも、知恵のある者なんかではないのだと自覚しているからだ。・・・
私は長いあいだ思い迷って、やっとのことでその意味を、次のような仕方でたずねてみることにしたのです。それはだれか知恵のあるとおもわれている者を訪ねることだったのです。
ところがその人物を相手にしながら子細に観察しているうちに、私は、次のような経験をしたのです。この人は、皆に知恵のある人物だとみなされていて、自分でもそう思い込んでるらしいけれども、実はそうではないのだと思われるようになったのです。
そしてそうなったとき、私は、彼に、君は知恵があると思っているけれども、そうではないのだと、はっきり分からせてやろうと努めたのです。するとその結果、わたしは、その男にも、その場にいた多くの者にも憎まれることになったのです。・・・・・
アテナイ人諸君、誓っていいますが、私としてはこういう経験をしたのです。つまり、名前のいちばんよく聞こえている人の方が、神命によって調べてみると、思慮の点では9分9厘まで、かえって最も多く欠けていると私には思えたのです。これに反して、つまらない身分の人の方が、その点、むしろ立派に思えたのです。」 (中央公論「世界の名著」・田中美知太郎訳。抜粋は武田)
クルレンツィスは、繰り返し、以下のように発言しています。以下は、2019年2月の初来日時のパンフレットより。
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2016年3月号の「レコード芸術」のインタビューでは以下のように述べています。
「私は理想の世界を追い求めています。そこでは人種や国の差はなく、武器もない。肉体的なものと精神的なものが結びつき、芸術によって『永遠』に触れることができる道を求めているのです」
「私の旅は、真実を求める旅です。普通の音楽大学に入って、制度化された道をたどるのは退屈だと思いました、そこでムーシン(ソ連・ロシア)に会い、【俗世にまみれてはいけない】という考えをもつようになったのです」
「私には、華麗なオペラのディーヴァが人を泣かせることはできるとは思いません。農村の老人が一本弦の楽器を弾いた方が、ずっと心を打つのです。この純粋なつつましやかなサウンドこそが、われわれの本来の血です。音楽大学でピカピカに磨き上げられたアカデミックなサウンドは、ジュースにすぎません」
「音楽ビジネスの制度に従った、もの分かりのいい指揮者の普通の受け答えはしない」というクルレンツィスは、世界的な巨大資本のソニーレコードとの専属契約では、かつてない非常識なものとなりました。ソニーは、クルレンツィスの要望をすべて受け入れるという途方もない契約なのです。それが、今回の文明転回の烽火をあげるデルフィーでのベートーヴェン交響曲7番の舞踏付き演奏を可能にしたのでしょう。舞踏付きの7番はかつて存在しませんでした。
また、クルレンツィスは、他の惑星の住人から地球の文明について聞かれたら、パルテノン神殿(自由・平等の民主主義を現わす水平な建造物の傑作)と、ベートーヴェン交響曲9番をよりよく演奏することだ。と述べています。わたしも全く同意見でなんとも嬉しくなります。第九をパルテノンでやるのかな?
※7番のCDは、4月に発売されていますので、わたしの4月9日のBlogをぜひご覧下さい。(クリックで飛びます)
参考・古代エーゲ海哲学の旅(トルコ~ギリシャ)は、わたしの長年の教え子(中1から大学卒業まで)の染谷裕太君が、徒歩と自転車で4か月以上かけて行い、美しい写真を撮り、優れた日記を書いています。それらは、白樺教育館のホームページで見ることができます(アップの労は古林治さん)。
fbコメント
染谷 裕太(8月4日)
世界の中心デルフォイ!(古代ギリシャではそう思われていた) でベートーヴェンを演奏。しかも踊り付き。
武田康弘