どれが昔 2013-12-21 23:58:21 | 文学 その中の一人は、思い出したように、遠く都会のかなたの空をながめました。たくさんの煙突から、黒い煙が上がっていて、どれが昔、自分たちの飴チョコが製造された工場であったかよくわかりませんでした。ただ、美しい燈が、あちらこちらに、もやの中からかすんでいました。 青黒い空は、だんだん上がるにつれて明るくなりました。そして、行く手には、美しい星が光っていました。 ――小川未明「飴チョコの天使」