峠への上り道はいよいよ厳しくなり、この先には西海子(さいかち)坂、橿木
(かしのき)坂、猿滑り坂などの難所が続く。
所々には当時のものらしい石畳の道も残されているようだ。
しかし多くは新道の開通により失われたらしく、大きなヘアピンカーブで高度を
稼ぐ新道を、串刺しにするようにのぼる古道の多くは、階段で結ばれている。
息をあげながら急坂を行き、比較的緩やかな追込坂(ふっこみさか)を上り切ると、
笈ノ平と呼ばれる平坦な地に出る。二子山と文庫山に挟まれた地で、ここには箱根旧
街道資料館と甘酒茶屋が立っている。
街道一の名物と言われるほど旅人の評判を呼んだ甘酒を提供する茶店で、当時は
この付近には4軒ほどが、箱根八里の間には13軒ほどあったと言う。
しかし明治に入り国道1号線の開通などの影響で、街道を行き来する人が減少し、
閉める店が増え、たった一軒残ったこの店は江戸時代初期から今日まで、13代の店
主が伝統を守り通してきた。しかし、昭和48年に、通りかかったハイカーのタバコ
の火の不始末で全焼し、近年復旧されたのが今の店だと言う。
評判の甘酒は地場産のうるち米を使い、米麹だけで仕込んだ無添加と言うだけに、
さっぱりとした麹の甘さが特徴でそれが特段に美味しい。
食欲の落ちる夏場でも、水分が多く咀嚼の必要がなく、胃に負担の少ない甘酒は旅人
に持て囃されたと言う。
毎朝杵でつきあげると言う名物の力餅も、いそべ、うぐいす、ゴマ味などが揃って
いるが、甘酒と一緒に食べるなら、いそべがお勧めだと言われ食べてみた。
腰の強い餅に巻かれた海苔と、香ばしい醤油の香りに食欲がそそられ、これも本当に
美味しかった。(続)
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