『古い時計だとか、椅子だとか、コーヒーカップとか、昔の服とか、
旅の土産とか・・あるモノを見て、普段忘れていた記憶がよみがえる
というのは、よくあることである。』
作家の五木寛之さんは、身近のガラクタを手にすると一瞬のうちに
過去の思い出が蘇ってくると言い、こうした回想の世界の逍遙はアル
ツハイマー病の予防にもなるので、思い出を磨くことは大切だと説い
ている。また『ゴミ屋敷になっても、私は古いモノを捨てないと決め
ている。断捨離はしない。』と言い切っている。
一頃「断捨離」という言葉を良く耳にした。
「不要なモノを断ち、捨てることで、モノへの執着から離れる・・・。
そして身軽で快適な人生を手に入れよう」と言う趣旨のことらしい。
テレビや雑誌、新聞等でも特集され、関連本まで出て、話題になったあ
げく流行語にまでなる騒ぎとなったが、最近では少し落ち着いたようだ。
ただ捨てるだけ、捨ててすっきりと片付ける等と捉えがちであるが、
その本質はあくまでも何を残し何を捨てるかをよくよく吟味して、物を
通して自身を縛る執着や観念を捨てることが大切という。
実践はあくまでも自分のモノで、夫婦や親子など家族間にまで及べばト
ラブルも起きると警鐘を鳴らしている。
しかし、モノには心の奥底に眠っているものを引っぱりだす、依代
に成り得るものも有る。
「使わなくなったモノ、将来使うはずのないモノ」でも、捨てられない
ものは有り、闇雲に捨てれば良いという話でもない。
目にし手にしたとき、回想のトリガーとなるかも知れないモノもあり、
やはりこれらは捨てられない。(続)
(写真:トヨタテクノミュージアム 本文とは無関係)
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