繭から糸を取る作業を繰糸(そうし)と言い、その作業が行われた
場所が繰糸工場である。置繭所を更に一回り大きくしたような建物で、
木骨の瓦葺き煉瓦造り、長さは140m、幅12.3m、高さ12.1mもあり、
明治5(1872)年に作られた建造物は国宝に指定されている。
屋根には蒸気を抜くための越屋根が設けられている。
建物には大きな明かり取りのガラス窓が二段に嵌められているので、
一見すると二階建てに見えるが平屋造りである。
建物内部は従来日本には無かった「トラス構造」と言う工法で組上げ
ている為、工場らしい柱の無い広い空間を確保している。
室内に入ると十分に明るいことが感じられる。
作業の性格上、大きなガラス窓が多用されているが、当時日本には平板
で大きな板ガラスを作る技術が無かったため、フランスから輸入したも
のが使われているという。
その明るさは、窓のせいもあるが、白く塗られた組木も助けている。
東京銀座に日本初のアーク灯が灯ったのが明治15(1882)年と言うから、
当然当時の工場には電灯は無かったのであろうが、晴れた日であればこ
れで十分な明るさだ。
因みに工場が電化されるのは大正9(1920)年の事だそうだ。
工場内には自動繰糸機が保存されている。
この機械は煮た繭から目的の太さの糸を繰り出す工程を自動化したも
ので、これにより人の作業は全体の監視調整や、トラブル時などに限
られ相当な省力がはかれたという。
今ここには、長さが32m、幅が2.1m、高さが1.8mと言う巨大なもの
が10セット残されている。
それは昭和41(1966)年頃から順次導入され、操業停止まで使われた
ものだという。(続)
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