ボォーッ ボォーッ
島田と金谷を結ぶ大井川橋を渡り終える頃、どこからともなく聞こえて
くる汽笛が、24番目の宿場入りを歓迎するかのように鳴っていた。
その吹鳴は秋葉神社の先で渡った踏切で最大となる。
踏切から左を見ると、大井川鐵道の新金谷駅があり、ホームには白い
煙を勢いよく噴き上げる蒸気機関車(SL)が停車していた。
先ほどから何度も歓迎の汽笛を鳴らしているのは、この大井川鐵道の機
関車らしい。
同鐵道は大井川上流の森林資源の輸送と電源開発の目的で、大正末期
に設立されている。今では東海道本線の金谷駅に接続し、そこから千頭
(39.5㎞)を結ぶ大井川本線と、千頭と井川(25.5㎞)を結ぶ井川線を
運行している。
同鐵道にはC10、C11、C12、C56や9600形等の蒸気機関車が動態保存
され年間300日以上の定期運行をしているのは日本ではここだけである。
また近頃では「きかんしゃトーマス号」「きかんしゃジェームス号」も
人気だそうだ。この日もこれからSLに乗車するのであろうか、大勢の客
が駅前に群れていた。
大井川本線で運行している電車は、全てがかつて他社で活躍した車輌
である。元近鉄名古屋本線の特急電車、元京阪本線の特急車、元南海電
鉄高野線の急勾配を上った流線型ズームカー、元東急電鉄の電車などだ。
ここでは懐かしい、多彩な車輌が元気に走っている姿が見られると有
って、鉄道ファンの間では「動く電車博物館」として良く知られている。
沿線は、春は桜と新茶の香り、夏は緑と清流の涼しさ、秋は錦絵のよ
うな紅葉、冬は秘境の枯れた山野が楽しめ、野趣溢れる温泉も幾つか点
在している。(続)
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