標高2455mの活火山・焼岳は粘性の強い溶岩によって盛り上げられた溶岩
ドームで、これを鐘状火山(トロイデ)と言うそうだ。
以前岐阜県の奥飛騨から眺めたときは、微かな煙を確認することが出来たが、
この日は抜けるような青い空なのにそれを認めることは出来なかった。
そんな山塊を背に、大正池からは河童橋に向け遊歩道が整備されている。
普通に歩けば1時間ほどのコースだと言う。歩き始めるとすぐに両側にクマ
ザサの茂る道となる。
緑の表面は霜でまだ白く光っている。丁度この丈が冬の積雪量の目安らしい。
しばらく行くと湿地帯を越える木道が整備されている。
今朝の冷え込みがまだ続いているのか、その床板には陽の当たらない手すり
部分だけが霜も解けず、絵に描いたように床板の上に残されていた。
標高で言えば1500mほどの地点だけに、地上では滅多に見られない珍しい光
景で、気分も高揚する。
前方を見れば亜高山地帯の樹林の間から、相変わらず穂高連峰がほとんど
その姿を変えることもなく居座っている。振り返ればそれと対峙するような
焼岳の姿だ。落葉松が倒木となり朽ちた物なのか、緑のコケに覆われ、或い
は引っ掻いたような木目を晒した姿で何本も横たわっている。
そんな遊歩道に突然猿の鳴き声が響いた。
人の接近を仲間に伝えでもしたのか、数十メートルほど先の木立にその姿が
認められる。タクシーのドライバーから、野生の猿がいるが、日光より大人
しいと聞かされていたが、まさか間近に見られるとはラッキーである。(続)
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