簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

朝の音

2015-08-21 | Weblog
 網戸の前のカーテンを、三分の二ほど開け放っているので寝室は、夜明けととも
に明るさが増してくる。すると、不思議なものでその明るさで自然に目が覚める。
と言っても、こんなに早くから起き出す気など毛頭ない。
 まだ眠気で朦朧と混濁した意識の中で、ぐだぐだと惰眠をむさぼっている。



 バイクの音が近付いてくる。
玄関前で一際弾んだエンジン音は、一気に吹かされて遠のいて行った。
どうやら朝刊が届いたようだ。



 どこかで犬が吠えている。
何かに怯えて吠えたてていると言う風ではなく、何かを訴えるように鳴き続けている。
夜が明けたことを飼い主に告げているのか、空腹を訴えているのか、そんな鳴き声
である。



 東からラジオが近付いてきた。
割れたスピーカーの音が一段と高くなり、そのまま止むことも無く玄関前を離れ、西
の方に遠ざかっていく。

 話し声が聞こえてくる。
二人連れであろうか、歩きながら何を話しているのか良く聞き取れない声が、通り
過ぎて行った。
どうやら、朝の涼しい内に散歩をしようとする人たちも動き出したようだ。



 いつしか犬の鳴き声は止んでいる。
飼い主が起き出したのか、朝食が届いたのであろうか。

 団地から出た車が、乾いたタイヤの摩擦音を残し通り過ぎて行った。
雨は降っていないようだ。
気が付けば、何時しか蝉も鳴き始めている。



 まだ眠気で朦朧と混濁した意識の中で、ぐだぐだと惰眠をむさぼりながら、朝のこ
んな音を聞くともなく聞いている。
何とも至福なひと時である。どうやら今日も暑い日になりそうだ。(完)


(写真:和歌山県・熊野古道 本文とは無関係)





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