簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
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海風の悪戯(四国遍路の旅・高野山編)

2015-08-24 | Weblog
 あれは、いつ頃のことであったのか?
恐らく「修行の道場・土佐路」で、長い長い札所間の行程に、難儀を強いられてい
たころ・・・だったと思う。



 土佐路に入ると遍路道の多くは、荒波の打ち寄せる海岸沿いの道を、次の札所
に向けて、ただひたすら黒潮を眺めながら進むことに成る。
車なら、刻々と移り変わる風景に、時に感動し、思わず感嘆の声を上げることもあ
ろうが、たかだか1時間に4キロ程度の移動は、こと海岸線の道ではその目に入る
景観はほとんど変わることが無い。



 いつ見ても遥か先に霞む岬の突端は、霞んだままでなかなか近づいてはこない。
目を足元に転じても、奇岩怪石の大小が散らばる磯は、打ち寄せる波に洗われる
だけで、一向に変わらず、「まだ、いくらも進んではいないぞ!」と、そんな風にも聞
こえる、変化に乏しい波音を返してくるばかりである。



 加えて海岸特有の風だ。
時に海風は砂煙を巻き上げ、行く手を妨げ、進路をふさぎ、疲れた身体をいたぶっ
てくる。簡単には行かせぬぞ、と思わず体を押し返してくる。
グイと体を横に揺るがされたりもする。
そんな意地悪な風も、時に優しく背中を押してくれることがある。
暑さを少し、和らげてくれたりもする。





 どうやら海風は気まぐれで、悪戯が好きなようだ。
そんな、ふく風と絡みながら、長い長い海岸線を歩いているころであった。
まだこの先どうなるか、まったく予測もつかないと言うのに、もうすでにその
先のことを考え始めていた。(続)








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