多大な功績を遺したやなせたかしさんが亡くなったことは残念だ。やなせさんには特別の思いがある。もちろん片思いではあるが。
若いころ、「詩とメルヘン」という本がでていた。やなせたかしさんが編集責任者で、詩を投稿し、採用されると5千円貰えるうえに、活躍中のイラストレーターに絵を描いてもらえて本に載るのである。もう30年も前の話である。詩などは感性も寂れ、年齢と共に恥ずかしさも加えて浮かんでこなくなったが、あの頃、内気な私は書いていたんである。そして、何回か採用され、あわや吉永小百合に似た女流詩人になるのではないかと勘違いしていた。
ついでに、ファンレターのようなものも届いたりして、多感な若者たちがいたのだ。また、井上直久さん(イラストレーター)が、加賀の市役所の屋上のことを書いた詩に絵をつけてくれたときに、あまりに同じに見えて驚いた。発売日を待って井上さんから手紙が届いて、実際に大聖寺駅で電車を降りて市役所に寄ってくださったとのこと。後に、宮崎駿さんのアニメ「耳を澄ませば」の映画に、イラストを提供している。もちろんアニメは映画館へ観に行った。
そんな楽しい、わくわくする本の編集長であるやなせさんが、批評をかいてくれた「びんぼう柿」という詩は特に思い入れがある。
あんぱんまんも生き続けるし、わたしたちの思いも生きている限りは続くと思う。しかし、「詩とメルヘン」のような詩集の月刊誌というのは、もうないのだろうか。