うちの姑は、81歳。かくしゃくとしているが、若い頃から耳が遠く、年とともに、更に聞こえにくくなっている。
近所に、姑の同級生がいる。姑は自ら、自分の友達を「ばばだち」と、呼んでいる。
近所のNさんは、穏やかで、いつも笑顔のお婆さんだ。
「しっちゃん。(年をとっても、同級生は、ちゃん付けで呼び合う)たまねぎ、ようけ吊ったぜ」と、その返事が、「ねんねらが飛び出すといかんし、若いもんがこうてきたんやわれ」と、耳が聞こえないので、勝手に相手の言葉にあたりをつけて答えるのだ。
友達であるNさんは、慣れたもので、自分の質問を強要せず、話を続ける。素晴らしき友情である。婆さんの強烈な田舎言葉は、都会からきたわたしにとっては、衝撃だったが、今では耳慣れてしまった。そして、婆さんがいう若いもんというのは、わたし達のことである。
小屋の軒下には、ぶらぶらにたまねぎが下がっている。小さくて吊れない物は下に置いてあり、先日、「ツバメの悲劇」で、悪者にされた愛猫が、そんなとんちんかんな会話にお構いなく、どんな獲物も捕る気がないふりをしている。