元気いっぱいの婆様だが、最近はベッドが高くて寝起きに不便だという。
いつでもいいので、ベッドを買いに連れて行って欲しいというが、いつでもいいと言っていたら、そのベッドで寝る期間が少なくなるだろう94歳だ。
慌ててニトリへ行ってたくさんのベッドの中を、あちこち見て回っていると、店員が「ベッドをお探しですか?」という。
ベッド売り場にいる人に「ベッドをお探しですか?」と言われて一瞬回答に困った。そこで「ダイニングテーブルを探しています」という人はいないだろう。
「どのようなベッドをお探しですか?」と言ってほしかったが、「シングルで高さが低いもの」と、心の中で突っ込みながら答えた。
最近は歳のせいか、妙に言葉のやりとりがひっかかることがある。
きっと、心が狭くなってきているのだ。
例えばウエイトレスが「ハンバーグになります」と、言う。
何かがハンバーグになったのか?と、問いたくなる。
しかし、Cocosへ友達とランチに行ったとき、ロボットが運んできたので、そういうやりとりはなかった。
黙々と運ぶ姿が可愛くて、つい「ありがと」と、ロボットに言ってしまいそうになる。
さて、ベッドは配送料と、今のベッドの処分料で9900円追加料金を入力した書類を渡され、支払機で支払うよう促された。
さて、何をどうするのか?渡された書類のバーコードを読ませて、機械に現金を入れるのだそうだ。
やってくれるのかと思ったら、何もかも自分でやるんだね。
さすがに婆様も「あら~、わたしら買うことできんわ」と、言ってガハハと笑っていた。
念願のべッドが届いた。しかし、前のベッドと変わらない高さに見える。
低いのを買いに行ったはずなのに。
婆様の尻感覚だけで買ったので、念のためスケールで測ったら、どちらも高さ40㎝。
しまった。測ってから行けばよかった。
連れて行って、自分で腰かけて確かめたので、この展開を予想していなかった。
確かに展示してある中で、一番低かったのである。
そこで、座ってみて気に入ったのだが。
婆様は、違うものが運ばれてきたというので、品番が違っていないか、店にあるのと違うのが来たのでは?とまで思った。
請求書の品番と、組み立て用の取説の品番が違うので、問い合わせたら取説は共有の品番だという。
確かに店にあったものが納入されたのである。
いかに感覚が曖昧か反省だ。
「測っていかなかったので、こちらの落ち度です。申し訳ありません。交換することできますか?」と、言うと、電話口で
「腰かけた時、靴を履いておられましたか?」と、聞かれた。
「はい。靴は脱ぎませんでした。」
「多少、感覚が違うかもしれませんね」と、優しい。
「良いのがあれば交換します」とのことだが、また配送費用がかかるので、
結局、婆様が交換をあきらめて、足のところに9㎝の高さの座椅子を置くことにした。
大物を出し入れし、布団を入れ替えてという作業も、耳が遠くて、わたしが筆談でいろいろ聞くことも疲れるのだろう。
ベッド自体は前のよりいいと気にいってくれたが、起きてまず足を下すと床につかないので、ころんでしまうのだそうだ。
台を置いたら、しっくりいったようで、ほっとした。
ただ、その段差も気になるところではある。
高いと腰かけた時、浅くなるので落ちそうなのだという。
歳をとると、今まで気にならなかったことが気になり、出来なくなることが多くなるのだと思う。
大きなものを買うときは、感覚だけではいけない。
メジャーを持っていかなくてはと反省。
メジャーなものを買ってしまった。