孫たちの両親が不在の日、夕飯を食べさせながら、kenに「ばぁばの机あげるから、持っていかん?」と、言った。前から机を買うか、うちにある机を持っていくかと尋ねていたのだが、本人は机が与えられるとそこで勉強をしなくてはならないので「別にいらん・・」と、いたって消極的である。兄には机があるのに、弟にはまだ買っていない様子なので提案した。まずは、机を見せて「おかあさんが大事に使っていたからいいやろ。立派な机やよ。椅子は壊れたので、じぃじが高級椅子を買ったんや」兄のkouがその椅子に座ると「すげー、座り心地いいー!!」
「今日こっそり3人で持ち運んだら、おとうさんとおかあさん、驚くやろねー」この一言で、心が動いた。「持っていくわ」。引き出しを抜いて、電気スタンドも椅子も運ぶ。一番の難関は、廊下のカーブと階段の昇降。3人で汗だくになり一段一段下りる。「手を離したら、ばぁばがつぶれるから慌てず、ゆっくりね」この緊張感が面白い。
タントには、机も椅子もすっぽり入って、kouは助手席、kenは「ここがいい!」と、机と運転席の後ろの間に乗った。ゆっくり走っても3分も経たずに到着。
今度は持ち上げるのが大変だった。それでも、外側だけなので、それほど重くないが、一段上げるたびに、膝に机の下を載せて平行にするのは山登りより大変だった。ようやく上がり終えて息を整える。やったね!と、喜ぶのは早かった。最後に2階のドアに入らない。兄の部屋と弟の部屋のドアがLの字になって出会うので、一旦兄の部屋に入れるが動かない。廊下のスペースが狭くて曲がらないのだ。
「終わったな・・」と、kouが言う。汗だくの中一と5年とばぁばはため息をついた。二つの入り口を塞いだ机を見て、kenは「また下ろす?」と訊く。後15センチほどがひっかかる。せっかく上げたのにここでまた下ろさなくてはならないのか??
「待て待て、頭を使って」「そうだ!!起こしてみよう」「こっちのほうが短いよ」机を起こしてみたら、難なく入った。やった!柱にぶつけないで!
この作業が楽しかったようで、kenは座ってみて、足の所に移動式の板があってちょうど両足がついてご満悦。「かあちゃんのやね」と、言うので「そうやよ」と、言いつつ不安がよぎった。双子の娘のどちらの机か断定はできないのだ。しかし、そこは言い切らねばならない。子供は母ちゃんが好きだ。
kenに言った。「この引き出しにkenの未来が入るからね。自分で入れていくんやぞ」と、いうと、何を思ったか床にあったカニのぬいぐるみを引き出しに入れた。「あんたの未来はカニかい?」kenはぐふふ・・・と、笑う。そして、「かあちゃんに、おれの部屋にばぁばの机を置くんやけど、どこがいいか見てって言って2階に来てもらうんや」と、かあちゃんを驚かすシュチュエーションを想定していた。
子供は、特に男の子は母ちゃんが大好きなんだなと思った。驚く顔が見たい。ほめてもらいたい。 そして、未来は何だかわからないけど、とりあえずカニだ。
わたしは机の中の物を処分した。殆どどうでもいいようなものばかりだった。とりあえず引き出しに入れておくというようなもので、これは一掃すべきだ。
仕事は殆どキッチンのテーブルでパソコンに向かうことでこと足りる。kenの未来はわたしの未来でもあった。カニから始まる。
出来るだけ自分で減らしていかなくてはならない。少しずつ減らしていって最小限にしていき、最後はゼロになるんだなあ。