何年か前、浅井リョウの小説が映画化された。
「桐島部活辞めるってよ」バレーボール部のキャプテンが部活を辞めるという噂から始まる。
今、朝ドラに出ている神木龍之介が、映画部として出てくる。眼鏡をはめていて初めは誰か分からなかった。
さて、映画の話しではなく、我が家での話。
耕運機が動かないと言って婆さんが勝手口から大声で私の名を呼んだ。
わたしは、高校へ週1回弓道を教えに行くため、弓道着に帯を締めて、袴をつけるところだったが、弓道着のままで下は袴の替わりにダボダボのズボンを穿いて外へ出た。
畑まで50m。耕運機は女性でも動かせる小型のものである。
10年前に買った。初めに私がエンジンをかけて耕していたが、すぐに癌になり畑へは全くいかず、婆さんが93歳になる今まで頑張って使っていた。
さて、何回引っ張っても、エンジンボタンや、チョークを引いても、かからない。汗だくになった。時間がないので、諦めて婆さんに明日JAに電話してみるわ。と、言いおいて出かけた。
夜、食事の時に、婆さんが、耕運機を直してまで畑をしないことにすると宣言した。
今の作物の収穫が終わったら辞めるというのだ。
周りの畑をしている人をみても、93歳で頑張っている人はいない。
最近、婆さんも台車がないと畑まで歩けない。なので、鍬を持つより耕運機につかまっているほうが畑を耕すにはいいのである。
この畑は我が家の土地ではなくて、婆さんの親の家の畑なので、辞めたらお返しするというだけのことで、わたしは何もしなくていいというのが婆さんの心遣いだ。
さて、娘達にLINEした「ばあちゃん畑辞めるってよ」
途端に、我らが家族LINEは炎上した。
そして、作物がもらえなくなる寂しさで娘達は残念がり、跡継ぎをすると言い出した。
それと、「桐島部活・・・」みたいな言葉というので、パロったのだというと、やはり・・と。
わたしは、畑仕事どころか家の庭の草もやっと抜いている状態だし。
時々、離れた土地の草刈りをするのがやっとなので、口が裂けても畑をするなどとは言えない。いや、口を裂くほどの話しではないが。
婆さんにとっては「畑命」なので、桐島が部活を辞める以上の人生の決断だ。
ついでに言うなら、映画には桐島は全く出てこないのだ。
やめるってよ・・と、みんなが言って、そのみんなの物語なのである。
高校の弓道部は、3年生が抜けたら、大会に出る選手が足らないのである。
辞めるってよ‥以前の問題ではある。