先日、亡くなったスシャント・シン・ラージプートの、
2013年のデビュー作である。
私が彼を認識したのは翌2014年のPKだった。
素敵なパキスタン人の青年を演じていたっけ。
何本か観ていた・・・2015年の探偵ビュームケシュ・バクシー、
その後は2016年のM.S.ドーニー、2018年のケダルナート、
2019年のチチョレー(邦題:きっとまた逢える)。
亡くなった報道を見て初めて彼が鬱病であった事を知った。
映画に編集されている部分では当然そんなところは解らないので、
すっごく驚いた。34歳、まだまだこれからだった。
御冥福をお祈りいたします。
インド映画界ではコネクションがない俳優は厳しいらしい。
スシャントもその一人で悩んでいたそうだ。
確かに誰それの血縁関係と言う俳優たちが大多数であり、
全くコネなしでバスの車掌からスターになったラジニカーントは、
そんな事もあって称賛されているのである。
日本でも二世タレントが多いし、仕方ないのかもしれないが。
タイトルの「カイ・ポー・チェ」はグジャラート語である。
舞台はグジャラート州のアーメダバード、
ここでは毎年凧揚げ祭りが行こなわれている。
凧の糸を絡めて相手の糸を切るのだが、
その時に「カイ・ポー・チェ」と叫ぶのである。
<ストーリー>
ゴヴィンド(ラージ・クマール・ラーオ)が
スポーツクラブのプレゼンテーションをしているシーンから始まる。
彼はその足で刑務所へ行き出所して来るオーム(アミット・サダ)を
迎える。途中でレストランに立ち寄った二人は、
10年前に死んでしまったイシャーン
(スシャント・シン・ラージプート)の事を回想し始める。
3人は共同でスポーツクラブを始めるにあたって、
それぞれの親戚からお金を借りようとする。
オームは政治家の叔父を頼り寺院の隣の建物とグランドを借りる。
そこでゴヴィンドは数学を教え、
イシャーンはクリケットを教える。
平行してイシャーンは妹の試験の為に、
ゴヴィンドは数学を教えるよう頼む。
最初は乗り気でなかったゴヴィンドだが、
妹のヴィディヤ(アムリタ・プリ)に誘惑され、
やがていい仲になってしまう。
ゴヴィンドは建設中のモールの中に店舗を見つけ、
オームは叔父からさらに50万ルピーを借りる。
イシャーンはクリケットの才能がある6歳のアリを見出し、
コーチを始める。
軌道に乗り始めたかにみえた2001年1月26日、
グジャラート州を大地震が襲い建築中のモールは崩壊してしまう。
イシャーンはアリの住むエリアの住人を
オームの叔父の避難所に避難させるが、
イスラム教徒であったために受け入れを拒否されてしまう。
そこからオームとイシャーンは険悪になってしまう。
オームは叔父の選挙の為に駆り出され店の方は、
イシャーンとゴヴィンドが切り盛りしていた。
インドVSオーストラリアのクリケットの試合でインドが勝った事で、
オームとイシャーンも仲直りをする。そしてイシャーンの
少年クリケットチームがアーメダバードの大会で勝利した。
ところが2002年の選挙でオームの叔父は敗北してしまう。
そしてアーメダバードからUP州のヒンドゥー教の聖地
アヨーディヤへ向かう巡礼者の列車が襲われた事から、
オームの叔父の支持者(ヒンドゥー教徒)は
イスラム教徒を皆殺しにするため、
武器を持ってイスラム地区を襲撃した。
イシャーンは翌日のクリケットの試合の為にアリの家を訪れ、
危険が迫っている事を知ってゴヴィンドを呼び出す。
ところが・・・ゴヴィンドの携帯電話に入った、
妹が妊娠してしまったメッセージを見てしまい激怒。
そこへ暴動で叔父を殺されたオームが叔父の拳銃を持って、
アリ少年と父親を追ってきた。イシャーンはアリをかばったため、
誤ってオームに撃たれて命を落としてしまった。
刑務所から出所したオームを迎えたゴヴィンドは、
オームをモールの店に連れて行く。
そのガラス張りの店内はクリケットグランドに面していた。
ゴヴィンドはオームに息子イシャーンを紹介する。
スシャントのデビュー作であるが、意外にも彼は、
激高しやすい熱血クリケット青年役だった。
これで2016年、クリケットのヒーロー選手を描いた、
M.S.ドーニーの主演に選ばれたのかも知れない。
ストーリーを知らずに観てしまったのだが、
誤って撃たれて死んでしまうなんで・・・・。
最後は思わず涙してしまった。
<グジャラート地震>
2001年1月26日午前8時46分、グジャラート州の
カッチ地方ブジが震源地、マグニチュード7.7、
死者2万人、負傷者16万6千人、全壊家屋37万戸、
半壊家屋72万戸という激甚な災害をもたらした。
<反ムスリム暴動>
2002年、ヒンドゥー教の聖地アヨーディアでの決起集会に
参加したメンバーが乗った列車がイスラム教の暴徒に放火され、
58人が死亡した。翌日から暴動が多発し死者は800人を超えた。
アヨーディアはウッタル・プラデシュ州にあるヒンドゥー教の、
7大聖地のひとつであるが、1992年にイスラム教のモスクが、
ヒンドゥー教徒によって爆破され、それ以降宗教対立が続いている。
ヒンドゥー教徒にすると、元々ヒンドゥー教寺院があった場所に、
寺院を破壊してモスクを建設した、と言う事であるが。
ラーマヤーナではヒンドゥー教のラーマ神の生誕地である。
インド各地を訪問している私であるが・・・・
この地は危ないので未だ訪問していないのである。