原作は1966年に刊行された寺山修司の長編小説。
2107年に原作映画がノベライズされた。
寺山修司と言えば・・・
私は三上博史のデビュー作「草迷宮」を上げる。
それと八千草薫の「田園に死す」、独特な世界である。
原作では1960年代が舞台であるが、
2017年に映画化されるにあたって
舞台は2021年の東京オリンピック後に設定された。
主人公は、傷害事件を起こし少年院から出所した新次と
言語障害を持つ床屋の健二。
父親が自殺した事で母親に捨てられ孤児院で育ち、
悪い事に手を染め少年院に3年いた21歳の新次。
韓国人の母親と韓国で暮らしていたが、
母親が死んでしまい日本人の父親に日本に連れて来られ、
虐待されながらも床屋で働く31歳の健二が、
潰れかけたボクシングジムに住み込んでプロになる。
全く異なったバックグラウンドで性格も正反対の2人が、
お互いにひかれあいながら兄弟のように生活して行く。
新次の母親、彼女、彼女の母親、健二の父親、
ボクシングジムのオーナー、トレーナー、オーナーの愛人、
登場人物がどこかで繋がっており、
複雑に絡み合う人間関係。
かみあう気持ち、すれ違う気持ち。
寺山修司作品独特のドロドロしたものが、
ボクシングに絡みついてきて、
この作品の前に読んだ沢木耕太郎作品の爽やかさとは両極の物語。
ボクシングをする動機がチャンピオンになりたいという事ではなく、
新次は殺したいほど憎んでいる男がボクサーになっていたので、
その男と戦い殺すためであり、ずっと孤独であった健二は、
誰かとつながるためにボクシングを続ける。
最後は二人がその目的を達成するために戦うのだ。
「感動のラストシーン」とあったけど・・・
なんか感動と言うより・・・なんだかなぁ。
寺山ワールド、ボクシングでなくても良かったかもしれないなぁ。
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