明日予定されていた井上尚哉選手の世界4団体統一タイトルマッチが、
挑戦者の怪我によって1か月延期となってしまったのは残念だ。
それ以外には東洋エリアと日本のタイトルマッチなど、
日本人同士の4試合の試合が組まれているので楽しみではあるが。
ここのところボクシング小説を読んでいる。
飯島和一の「汝ふたたび故郷へ帰れず」も良かったが、
この角田光代「拳の先」も良いらしい。と、
村田諒太が薦めていたので読んでみる事にした。
2015年に発行された「空の拳」の続編で2016年発行。
知らなかったので順番に読まずに「拳の先」から読んでしまったが、
まぁそれでも良いかと。
ボクサーの自伝や伝記的な小説ではなく、
出版社に勤務する平凡な男性編集者:那波田空也の目を通して、
弱小ボクシングジムのボクサーと小学生の男子を中心にした小説だ。
何のためにボクシングをするのか。
その拳の先には何があるのか、を描いているので、
単なるボクシング小説ではない。
読み始めて女性が書いているので、戦いの描写はあっても、
荒々しい感じは受けなかったのだが、
筆者自身も学生時代からボクシングをやっていたと後から知り、
意外な感じがした。それを知って、運動音痴で友人が少なく、
ボクシングは好きでない主人公の空也は作者自身だったのかなと思った。
空也が行きがかり上、ボクシングを始めるのだが、
好きでもなくやる気もないのだから、上達するわけもない。
結局投げ出してしまうのだが、ジムの主力選手であるタイガーを
応援していくうちにタイガーの性格や取り組み方に惹かれ、
ボクシングに深入りしてしまう。
またジムで練習している運動音痴の小学生ノンちゃんが
いじめに遭っている事に気づき助けようとする。
タイガーとノンちゃんとの関係でボクシングは辞めたけれど、
ボクシングとの関係は深く続いてしまうのだった。
私も20年くらい前に角海老宝石ジムの小堀祐介選手を応援し、
そこからボクシングにのめり込み後楽園ホールには随分通った。
自身でボクシングをやることはなかったけど、
未だにボクシング観戦は続いている。簡単に言えば好きなのだ。
小説中には、それと判るジムなどが出て来るし、
後楽園ホールや近辺の町なども知ったところでもあり、
読みやすかったし、読むのは楽しかった。
単なる選手を中心に描いたボクシング小説ではなく、
ボクシングを通して何かを得る。人生に通じるものがある。
強くなるだけの為にボクシングをやるのではない、
(いろんな目的の人がいる。)
ボクシングでなくても良いのかもしれないけど、
なんかいい感じがする小説だった。
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