熊谷達也のマタギ三部作の第三弾。
「相剋の森」「邂逅の森」「氷結の森」と続いた完結編。
「相剋の森」と「邂逅の森」はそれとなく関係があるのであるが、
「氷結の森」はちょっと違う。
主人公の柴田矢一郎は出征の直前に結婚した妻を残し、
戦争へ行き1年後に故郷が秋田県阿仁へ戻った。
しかし、妻は出産したばかりの赤子を抱いていた。
自分の留守中に妻が自分の親友と恋仲になり、
生まれた子供であると知った矢一郎は阿仁を離れる。
矢一郎は樺太に渡りニシン漁に加わったり、
いろんな事をしながら流れ者として暮らしていく。
矢一郎のキャラクターは、一本気で曲がった事が大嫌い、
義理人情に厚く、人助けのためなら私財も投げ出す。
損得勘定より意志を貫くと言う、不器用な無頼漢である。
そんな性格が災いし、時代にも翻弄されながら、
樺太からロシアに渡り、事件に巻き込まれてしまう。
元がマタギ出身なので戦争でも事件でも狙撃手として、
たぐいまれな射撃の腕を見せる。
日本人、先住民族やロシア人、中国人など人種で差別せず、
相手を見抜いて信頼するところは信頼し、
自分を貫き通すブレない気持ちの強さと相まって、
命をつないでいく。
唯一、前作との関連性を感じるのは、
富山の薬売りである。この男、優男でありながら、
商売にかけては貪欲で、今作品でも樺太からロシアまで、
金になる物を求めて行ってしまうと言う、
若干、強引なストーリーではある。
全二作とは異なるストーリー展開ではあるが、
マタギ三部作の最終編である。
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