PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
ライフ | 『100年骨』
#健康 #骨 #書籍抜粋
2024/11/28 9:00
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がんでも脳卒中でも心筋梗塞でもない…75歳以上の8割が5年以内に死亡する「寝たきりを招く病気」の名前
認知症や動脈硬化を併発するリスクが高い
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斎藤 充
斎藤 充
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授
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「歯が抜け落ちる」意外なリスクも
骨粗しょう症は、歯を支えているあごの骨(顎骨がくこつ)の劣化も招きます。
顎骨も骨ですから、骨粗しょう症であれば、他の部位と同じように骨量が減っていきます。
今、歯科では、上下の歯全体を広い範囲で撮影できる「パノラマレントゲン」を用いて骨粗しょう症を診断するAIソフトの開発が進んでいます。
骨が弱るときは、どこか一部の骨だけが弱るのではなく、全身の骨が弱くなります。
顎骨は特に薄い骨ですが、上に歯が乗り、日々、何千回、何万回と強い力がかかるこの顎骨は、他の骨よりもダメージを直接的に受けやすいと言えます。
歯茎を支えているのは顎骨ですから、顎骨が弱くなると歯茎がグラグラし、歯が弱くなることにつながります。
顎骨が弱くなり、歯が抜けるようなことがあれば、食事が不自由になります。咀嚼そしゃくの力が低下し、栄養がうまく摂れなくなります。栄養が摂れないと、さらに全身の骨もやせてしまい、萎縮してしまうというように、結局は全身が弱る方向へと、すべてつながってしまうのです。
男性の食事を手伝う介護者写真=iStock.com/koumaru
※写真はイメージです
私たちのチームの調査でも、「骨質劣化型」の骨粗しょう症になった高齢女性では、残存する歯の数が、他の人に比べて非常に少ないことがわかっています。
身長が3cm以上縮んだ女性の悲劇
骨質が劣化しているということは、体内に「AGEs(エイジーイーズ)終末糖化産物(Advanced glycation end products)」という物質が溜まり全身の酸化・糖化が進行している証でもあります。単に虫歯になりやすいとか残存する歯が少ない、といった話では済みません。
骨、血管、筋肉、軟骨、歯、そして神経と、からだはすべて連関しているので、歯が弱いという自覚がある方は骨粗しょう症を疑い、検査を受けてほしいと思っています。
骨粗しょう症は健康寿命に大きくかかわってくると書きましたが、それを示している典型的な患者さんの例をご紹介しましょう。私の患者さんではありませんが、東北地方で実際に起きた症例です。
90歳をまもなく迎えるキョウコさん(仮名)は数年前まで元気に働いていました。仕事は化粧品の販売会社の経営と訪問販売。活動的な彼女は40代で運転免許を取得し、80歳を過ぎても愛車を駆って忙しく動き回っていました。
健康には自信があり、「毎日ヘトヘトになるくらい働いているんだから、たくさん運動しているのと同じ。ご飯だってモリモリ食べているから元気よ」と自信満々でしたが、高血圧の持病を抱え、薬とサプリメントが手放せない。加齢とともに背中が丸くなり、153cmだった身長は140cm台にまで縮んだ半面、体重は60kg以上。
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