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- メイドは全員65歳超の「冥土喫茶」
「喪え喪えきゅん」でおいしく 65歳超の「冥土喫茶」が話題 群馬
団塊世代が「後期高齢者」になる2025年問題。800万人もの高齢者が75歳以上を迎える中、課題ばかりが語られがちだが、そこには新たな可能性も潜んでいる。健康寿命が延びる中で、生涯現役を掲げ、地域や社会のために挑戦し続ける高齢者は少なくない。群馬県両毛地域では、サービス業や農業、スポーツなどのさまざまな分野で活躍している。「年齢を重ねること」の価値を見直せば、新たな高齢化社会の在り方のヒントが見えてくる。
メイドたちは全員65歳以上
JR両毛線の桐生駅から徒歩10分。空き店舗をリノベーションしたビルの1階に、月に一度、朝の2時間だけオープンするカフェがある。ドアを開けると、出迎えてくれるのは白いフリルのエプロンをまとったメイドたち。クラシカルな制服は憧れの的となり「私もなりたい」と希望者が続々と集まってくる。ただしメイドになるには条件がある。65歳以上であることだ。
カフェの名前は「冥土喫茶しゃんぐりら」(桐生市本町5)。第1土曜日午前8〜10時にオープンする。客がコーヒーなどを注文すると、65歳以上のメイドたちが静々とお盆を運び、目の前で「おいしくなーれ、喪え喪えきゅん」と呪文を唱える。愛嬌(あいきょう)たっぷりのもてなしが売りだ。
コンセプトは「高齢者を元気にする居場所作り」。市内で子育て支援や地域活性化に取り組んできたNPO法人キッズバレイ(星野麻実代表理事)の事業として始まった。
市内の繁華街には数年前まで喫茶店やファミリーレストランがあり、年配の人がおしゃべりしたり、気ままに過ごしたりできた。しかし、人口減少や新型コロナウイルスの流行で閉店が相次ぎ、居場所も少なくなった。この危機感を元に、コピーライターの横倉佑樹店長が「メイド」と「冥土」をかけあわせるアイデアを発案した。
店内に「三途の川」 トイレは極楽浄土
カフェの入り口には青いビニールひもで「三途(さんず)の川」をしつらえ、トイレは「極楽浄土」と命名。帰りは「この世に疲れましたら、またお越しください」と言って見送り、接客に工夫を凝らす。年を重ねることについて気軽に話せる雰囲気を作りつつ、認知症予防の紙芝居や金沢市の葬祭用品メーカー「三和物産」の協力で棺桶に入る体験などのイベントを開いた。
勇気出して接客 今はやりがいも
だが、一番の目玉となっているのは、生き生きと働くメイドの姿だ。初代のメイドはNPOに関わってきた2人で、普段は学習塾講師も務めるデコちゃん(66)と孫のいるココちゃん(65)。「若い人がやるものと思っていた」との戸惑いもあったが、前橋市のメイドカフェを訪れ、接客を研究した。
勇気を出して店に出ると「かわいい」「癒やされる」と声をかけられ、やりがいを感じるように。知人に「きれいになった」と言われ、「また来たよ」というリピーターもいた。2人の姿にひかれ、昨年12月、新たに5人がメイドに加わった。
横倉店長は「高齢者の方がお客さんとして来るだけでなく、自らメイドとして接客するという新たな居場所ができた」と語る。2人は「私たちもお客さんにパワーをもらう」と次回の開催を楽しみにしている。【遠山和彦】
2025年問題とは
2025年問題は、戦後の第一次ベビーブーム(1947〜49年)に生まれた「団塊の世代」が75歳の後期高齢者になるとして、厚生労働省が2006年に提起。06年の推計では、25年の認知症患者数を320万人とし、医療費や介護費の増大について警鐘を鳴らした。後の再推計で472万人とされ、1.5倍の規模となった。
群馬・栃木は健康、就業とも上位
75歳以上は、90年には人口の5%だったが、25年には18%となり、5人に1人に迫る見通しだ。一方で、健康上の問題がなく日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は延伸傾向にある。厚労省の22年の推計値によると、男性72.57歳、女性75.45歳で、調査を始めた01年から男性は3.17歳、女性は2.8歳延びた。健康寿命と平均寿命との差である「日常生活に支障がある期間」が短いほど、健康に過ごせる期間が長いとされ、栃木・群馬両県は全国でも上位。都道府県別にみると、男性は群馬が2位(7.38年)、栃木が3位(7.43年)。女性は栃木・群馬とも5位(10.76年)だった。
また、65歳以上の就業者数は増加傾向にあり、13年に128万人だった75歳以上の就業者数は、23年は228万人と約1.8倍に増えた。22年10月時点の65歳以上の有業率は25.3%で、栃木と群馬は男女とも全国平均より高い傾向にある。
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