通天閣取り込み、キタに対抗 相乗効果狙い、ミナミの開発加速させる南海電鉄の戦略
南海電気鉄道が4日、通天閣観光(大阪市浪速区)の子会社化決定を発表し、大阪・ミナミの街づくりが加速する見通しとなった。沿線人口の減少が見込まれる中、本社がある難波周辺を開発戦略の軸に据える南海にとって、集客力を持つ観光名所「通天閣」は魅力的だ。通天閣観光も設備の老朽化に対応しながら今後も発展を続ける上で、資金力やノウハウを有する南海からのアプローチは「渡りに船」だった。
沿線人口が減少
「通天閣は大阪を代表するにぎわいのシンボル。大阪に根差してきた両社が相乗効果を最大化し、企業グループとして大きく成長する」
南海電鉄の岡嶋信行社長は4日、通天閣真下の屋外で行われた合同記者会見で強調した。会見には両社のマスコットキャラクターらが登場し、通天閣の南海グループ加入を祝う雰囲気に。
南海にとって通天閣のグループ入りは重要な意義を持つ。大阪府南部や和歌山県の同社沿線は今後、人口減少が予想される。2031年に関西国際空港方面とJR大阪駅を結ぶ新線「なにわ筋線」が開通すれば、南海がターミナル駅を持つ難波は訪日客が素通りしかねない。
そのような中、南海は今年10月、不動産開発を担う親会社を設ける分社化を発表。同社は難波周辺を軸とする沿線開発計画「グレーターなんば」構想を掲げており、エリア内にある通天閣と既存の事業を連携させることで、その構想を加速できると判断した。
不動産事業を強化
昭和31年に現在の建物が完成した通天閣観光にとっても、南海の資金力や経営ノウハウは魅力だった。新型コロナウイルス禍から経営は急回復しているものの、入場までに長時間並ばなければならないなどインフラ面での整備遅れが目立つ。通天閣の集客力を足元の新世界全体の発展につなげる上でも、地域に鉄道路線を保有し、不動産事業の強化を図る南海との連携は意義が大きい。
ただ大阪では、繁華街キタにあるJR大阪駅周辺でも開発が加速し、人の流れがさらに集中すると予想される。通天閣を取り込んだ南海がどこまで対抗できるか注目される。(黒川信雄)
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