ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ケニー・ドーハム/ジャズ・コンテンポラリー

2024-11-05 21:19:15 | ジャズ(ハードバップ)

本日は久々にケニー・ドーハムをご紹介します。ドーハムと言えばブルーノートやリヴァーサイドに多くの作品を残していますが、タイム・レコードと言うマイナーレーベルにも2枚の作品を残しており、コアなジャズファンの間では人気です。そのうち1枚はジェローム・カーンのミュージカル曲を集めた「ショウボート」でジミー・ヒースやケニー・ドリューの参加もあり、非常にオーソドックスで聴きやすい作品です。もう1作が今日ご紹介する「ジャズ・コンテンポラリー」です。

メンバーはチャールズ・デイヴィス(バリトン)、スティーヴ・キューン(ピアノ)、バディ・エンロウ(ドラム)。ベースは曲によってジミー・ギャリソンとブッチ・ウォーレンが交代で担当しています。何と言っても注目すべきはスティーヴ・キューンですよね。ハーヴァード大卒のインテリ白人ピアニストで、70年代にソロで大活躍する彼の最も初期の演奏が収められています。本作録音が1960年6月ですので、まだ22歳になったばかりです。実はこの頃キューンはジョン・コルトレーン・カルテットにも短期間在籍していたそうです。その後マッコイ・タイナーが起用され、キューン入りカルテットの演奏はレコードに残っていませんが、新進気鋭の若手ピアニストとして注目を集めていた存在だということがわかります。

さて、新世代のキューンを起用し、タイトルも”現代のジャズ”と銘打った作品ですが、内容は意外と普通です。確かに前年に発表した典型的なハードバップ作品「静かなるケニー」や「ブルー・スプリング」と比べると、かなりフレッシュな感じはしますが、キューンのピアノもまだそこまでトンがっていませんし、何よりドーハムがいつもと同じように暖かみのあるトランペットを響かせています。ドーハムが相棒に起用したチャールズ・デイヴィスのバリトンも良いですね。ちょっとペッパー・アダムスを思わせる感じです。

アルバムはドーハムのオリジナル曲"A Waltz"で始まります。曲名通りワルツ調の曲で、ドーハムも参加したマックス・ローチ「ジャズ・イン・3/4タイム」の”The Most Beautiful Girl In The World"に似ています。2曲目のセロニアス・モンク”Monk's Mood"は一風変わった曲が多いモンク・ナンバーの中では珍しくクセのないバラードで、ドーハム→デイヴィス→キューンと叙情的なソロをリリーします。3曲目はデイヴ・ブルーベックの”In Your Own Sweet Way"。マイルスの演奏が有名ですが、ミディアムテンポでまとめたドーハムのバージョンも悪くないです。

4曲目”Horn Salute"と続く”Tonica"はどちらもポストバップ的な空気を感じさせるドーハムのオリジナル。特に前者がドーハムらしいマイナーキーの佳曲で、キューンの清新なプレイも大きくフィーチャーされます。後者はバラードで3分弱の小品です。ラストの”This Love Of Mine"は、フランク・シナトラがトミー・ドーシー楽団在籍時に作詞を手掛け、その後も持ち曲として歌ったポップナンバー。ドーハムの歌心溢れるトランペットはさすがですが、キューンも意外とメロディアスなソロを聴かせます。

 


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