ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジェイムズ・ムーディ/ムーディ・アンド・ザ・ブラス・フィギュアズ

2013-05-11 22:08:07 | ジャズ(モード~新主流派)
キャリアも長く、実力もあるのになぜか正当に評価されないミュージシャンというのは多くいますが、モダンジャズの世界で代表格に挙げられるのが今日ご紹介するジェイムズ・ムーディではないでしょうか?早くも1940年代後半、黎明期のブルーノートにリーダー作を残し、その後もプレスティッジ、アーゴ等にコンスタントにリーダー作を発表していますが、なぜかそれらの作品がジャズジャーナリズムに取り上げられることはほとんどありません。CDの再発も少なく、私のライブラリーにも辛うじてアーゴ盤「ムーディ・ウィズ・ストリングス」があったぐらいです。スタイルはいたって正統派で、滑らかなトーンと流れるようなアドリブはまさにテナーの王道を行くものですが、逆にそのクセのなさがハードバップ黄金期に埋没してしまった原因かもしれません。ただ、ムーディは長生きしました。激動の60~70年代を生き延びたどころか、他のジャズメン達が次々とリタイアする中、2010年に85歳で亡くなる直前までリーダー作を発表し続けました。若い頃は過小評価に甘んじたムーディですが、最終的には幸せなキャリアを送ったと言えるかもしれませんね。



さて、本作は1966年にマイルストーンから発表された作品。長いムーディのキャリアでは中期にあたる作品ですね。全9曲、うち4曲がカルテット編成で、ケニー・バロン(ピアノ)、ボブ・クランショー(ベース)、メル・ルイス(ドラム)がリズムセクションを務めています。残りの5曲はトム・マッキントッシュがアレンジャーを務めた5名のブラスセクションが加わります。トランペットがジミー・オーウェンス、ジョー・ニューマン、スヌーキー・ヤング、トロンボーンがジミー・クリーヴランド、チューバのドン・バターフィールドという豪華メンバーですが、彼らがソロを取る機会はほぼなく、あくまでアンサンブル要員です。他ではピアノのバロンが時折ソロを取りますが、それ以外はあくまでムーディが主役。全編にわたって歌心あふれるテナーソロが堪能できます。演奏は全て水準以上ですが、昭和歌謡っぽいメロディが印象的な“The Moon Was Yellow”、ゴスペル風の自作曲“Never Again”が出色の出来です。1曲だけフルートを吹く“Cherokee”がまた素晴らしく、緩急自在のフルートソロが圧巻です。
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