ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ヴィラ=ロボス/ブラジル風バッハ

2013-05-20 23:08:29 | クラシック(管弦楽作品)
本日はサンバの国ブラジルが生んだ作曲家、エイトル・ヴィラ=ロボスをご紹介します。主に20世紀の前半に活躍した作曲家で、クラシックの世界では唯一名の通ったブラジル人と言っていいかもしれません。生前は交響曲からピアノ曲まで膨大な数の作品を残したようですが、今でも演奏機会の多いのはこの「ブラジル風バッハ」ですね。何でもヴィラ=ロボスは“音楽の父”バッハをことのほか敬愛していたらしく、彼の作風にブラジルの民俗音楽の要素を加えたのがこの作品だとか。ただ、正直言わしてもらうと、バッハとの共通点はあまり見つけられません。特にバロック的な要素も感じられないし、あくまで20世紀の音です。かと言ってブラジルっぽいかと言われると、それも違う。サンバやボサノバのような明るく爽やかなイメージからはほど遠く、どちらかと言えばやや重い曲です。「ブラジル」や「バッハ」という先入観は捨てて聴くのが正解でしょう。



曲は1番から9番まであり、全曲だとかなりのボリュームになるそうですが、私が買ったポール・カポロンゴ指揮パリ管弦楽団のCDはそのうち第2番、第5番、第6番、第9番が収録されています。それでも54分もありますが。聴き所はやはり2番と5番ですね。特に2番は重厚なオーケストラを伴った荘厳な名曲です。哀調漂う「カパドシオの歌」&「われらが大地の歌」、力強くワイルドな魅力に溢れた「奥地の思い出」「カイピラの小さな汽車」と耳に残る旋律のオンパレードです。続く第5番はガラッと雰囲気が変わり、ソプラノとチェロが大きくフィーチャーされています。メランコリックな「カンティレーナ」と小鳥がさえずるような「マルテロ」。どちらも不思議な余韻の残る曲です。第6番はこれまた曲調が激変し、オーケストラはなくフルートとバスーンの二重奏になります。僕的にはこの曲だけちょっと浮いてる感じ。最後の第9番「プレリュードとフーガ」は弦楽合奏のために書かれた曲で、あえて言うならこの曲が一番バロックっぽいかもしれません。後半ちょっとダレる感は否めませんが、第2番の4曲だけでも一聴に値する名曲です。
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