ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

チャイコフスキー/1812年、ロメオとジュリエット、テンペスト 他

2013-06-05 23:22:58 | クラシック(管弦楽作品)
前回のブログでストイックなブラームスを紹介しましたが、同時代の作曲家でありながらより大衆的なアプローチで人気作曲家となったのがチャイコフスキーです。彼の音楽を彩るのは強烈なまでのスラブ民族主義と過剰なまでのロマンチシズム。そのせいか、時に“ベタ”“下品”とも評されますが、クラシック初心者にもわかりやすい名曲の数々で特に日本では絶大な人気を誇っています。今日取り上げる管弦楽作品4曲はそんなチャイコフスキーの特徴を最も良く表した作品と言っていいでしょう。



まず、民族主義者チャイコフスキーの代表作が大序曲「1812年」とその名もずばり「スラブ行進曲」。トルコとの戦争に臨むロシア軍を勇気づけるために作曲された「スラブ行進曲」も強烈ですが、「1812年」はある意味もっとえげつない。ロシア軍がナポレオンを打ち破った1812年の戦争を題材にした曲で、途中でフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」やロシア国歌が引用されるわ、クライマックスでド派手に大砲がぶち鳴らされるわ、騒々しいことこの上ない。正直、芸術作品としての完成度はどうなのよ?と思いますが、有名なテーマの勇壮な旋律にはやはり抗いがたい魅力があります。

一方、シェイクスピア劇を題材にした「ロメオとジュリエット」「テンペスト」はチャイコフスキーの希代のロマンチストぶりが極限まで発揮された楽曲。どちらも20分強の作品で、重く荒々しいオーケストラが鳴り響いた後に満を持したように甘美な旋律が紡ぎ出されます。それが中間部分とクライマックスに2回繰り返されるという展開。映画やドラマで言うお約束のお涙頂戴シーンのようなものですが、それが憎らしいぐらい見事にハマっています。なお、この4曲が1枚に入っているCDですが、クラウディオ・アバドの2枚の録音が出回っています。それぞれ世界屈指のオーケストラであるシカゴ交響楽団とベルリン・フィルを指揮したもので、どちらを買っても良いと思いますが、私が持っているのは価格の安かった前者です。
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