ポップスの世界では1曲だけヒットを飛ばして消える“一発屋"と呼ばれる人たちがいますが、クラシックの世界でも似た境遇の人はいます。「惑星」のホルスト、「カルミナ・ブラーナ」のオルフ、「カヴァレリア・ルスティカーナ」のマスカーニ等がそうですね。今日ご紹介するポール・デュカスも一般的には「魔法使いの弟子」1曲のみで知られているのではないでしょうか?ディズニー映画「ファンタジア」でも使われたこの曲はクラシック初心者でもどこかで聴いたことがあるはずです。ただ、本当は彼のことを“一発屋”扱いするのは失礼な話かもしれません。デュカスにはたった1曲ながら素晴らしい内容の交響曲がありますし、「ラ・ペリ」という優れたバレエ音楽を残しているからです。本日はその全てが収録された貴重な録音として、ジャン・フルネ指揮オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団のCDをピックアップします。
まず、交響曲ですが、演奏される機会も少なくディスクもほとんどありませんが、同時代のフランクの交響曲と比較しても遜色ない内容だと思います。3楽章しかありませんが、それぞれが10分以上のボリュームで聴き応えもたっぷり。ややブラームス的な重厚な第1楽章、フランス的繊細さを感じさせる幻想的な第2楽章、壮麗なフィナーレを迎える第3楽章と構成も見事です。意外と言っては失礼ですが、新古典主義の王道を行く正統派のシンフォニーですね。バレエ音楽「ラ・ペリ」も素晴らしい。華やかなファンファーレに引き続き、ゆったりとしたテンポで幻想的なメロディが奏でられます。オーケストレーションも実に華やか。こちらは交響曲より15年ほど後の1910年の作品ですので、同時代のドビュッシーやラヴェルに通ずる印象派的要素が感じられます。最後にご存じ「魔法使いの弟子」ですが、こちらは聴いていて楽しくなるエンターテイメント性あふれる曲。魔法使いの弟子がいたずらで魔法をかけたが失敗して右往左往する様がユーモラスに表現されています。以上、決して多作ではありませんが、デュカスが卓越したメロディメーカーだったことがよくわかる1枚。お薦めです。